年の瀬も押し詰まってきました。この連載ものんびり書いていましたら、どんどん時間が過ぎて行き、記述が現実の今現在に追いつかなくなって行くようです。いつまで経っても亀に追いつけない兎の気分です。そういえばあと数日で新年「卯年」です。明日からは帰省や何のと、また時間が消えて行きます。取りあえず、本日は「延坪島砲撃」翌日、11月24日の記録を記してみます。虎は千里を駆け、兔は百米を疾走でしょうか。世界も東アジアも、いい年を迎えたいものです。
11月24日<日本>朝。米韓合同軍事演習のため、米海軍横須賀基地から米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が黄海の公海に向けて出港した。この演習は以前から計画されていた。韓国哨戒艦沈没事件を受けた措置の一環。28日から12月1日まで実施が予定されていた。今回は砲撃事件を加味している。ラウスマン空母艦長は「同盟国と連携することで、緊張や不確実性を小さくすることが与えられた任務だ」
9:18 閣議。
10:25 前原外相が韓国の金星煥外交通産相と電話会談。
11:02 政府は菅首相を本部長とする「北朝鮮による砲撃事件対策本部」を設置。メンバーは全閣僚。官邸で初会合を開いた。首相の指示は
①米韓の連携を土台にして、北朝鮮に影響力がある中国への働きかけ方を検討する。
②各府省でどういう制裁が可能か検討する。
12:08 管首相は韓国の李大統領と電話で協議した。日米韓で緊密に連携していくことを確認した。
15:30 前原外相は程永華駐日中国大使と外務省で会談。前原は北朝鮮を非難。中国が6者協議の議長国であることや、北朝鮮に経済的な支援をしていることにも言及し、「中国の果たす役割は大きい」と、北朝鮮に強く働きかけるよう暗にプレッシャーをかけた。これに対して程大使は慎重に言葉を選び、「あの海域における今までの取り決めと、砲撃に至る経緯について精査したい」と述べ、イエスと返答することを避けた。
首相は北朝鮮への追加制裁の検討も指示したが、日本人拉致事件や、核実験を受け、輸出入全面禁止などの対北制裁は実施済みで、仙谷官房長官は記者会見で「ほとんどやり尽くしている」。外務省幹部は「びっくりした。どう考えても(制裁は)そういう状況にはない」、韓国や米国が追加制裁を打ち出していないのに、日本だけ制裁に乗り出すのは「外交の常識から言っても考えにくい」
16:00 菅首相はじめ与野党党首会談が順次、国会内で開かれた。
高木文部科学相は閣議後の会見で、朝鮮学校への高校無償化適用について、当面見送る考えを示した。仙谷官房長官は「こういう緊急状態の中で、現時点では手続きを停止することが望ましい」。これが仙谷式制裁か?
21時前、関係閣僚会合を開き、陸海空自衛隊の制服組トップも入る安全保障会議を見送った。周辺事態法が定める「我が国の平和および安全に重要な影響を与える事態」が認定されれば同法は発動され、自衛隊による米軍への後方地域支援などが可能になる。野党側の指摘は、今回生じた状況は「周辺事態」に準じたものではないかとの問いかけだ。ただ、双方の砲撃は広がらず、韓国側も冷静な対応を取ったため、政府も23日夕には「これ以上、事態は悪化しない」(外務省幹部)と判断。仙谷官房長官も同日夕の会見で「現時点では国民生活の安全を脅かす事態に至っているとの情報、認識は持っていない」と語った。
○朝8時から70分間、民主党は外務部門会議を開催したが、出席者はわずか20人ほど。砲撃については、松本剛外務副大臣からの報告と質疑応答の約15分のみ。意見を述べたのはわずかひとりで「管首相への報告は遅れたのではないか」。松本は「遅いとは思わない」と応じた。
○夕方に民主党は防衛部門会議を開催。出席した議員は同じく20人ほど。「どの部門会議でもふつう、50~60人は集まるのに、あんなことがあった後なのに、防衛は票にならないということでしょう。来年度予算に関する話しがほとんどで、北朝鮮の砲撃に関しては、ひとりが『北朝鮮の被害は把握しているのか?』と質問したくらいで、安住淳防衛副大臣が『相当な被害ではないか』と答えましたが、報道以上の情報はありませんでした」と、民主党議員は話した。
○民主党の外交安保調査会総会は、出席者55名と盛況だったが、「防衛計画の大綱」案についての議論に時間が割かれ、砲撃についての議論は空疎だった。
○森本敏拓殖大教授(安全保障政策)は「北朝鮮は韓国海軍哨戒艦沈没以降、6カ国協議の再開を渋る韓国や米国を交渉の場に、引きずり出したい思惑があるのではないか。ウラン濃縮の成果をアピールしたり、米国のボズワース北朝鮮担当特別代表が日中韓の3カ国を訪問したりするタイミングを狙って挑発したとも考えられる」
○浅田正彦京都大教授(国際法・元国連の北朝鮮制裁パネルのメンバー)は「若い正恩氏が軍を掌握できることを特に国内に示すひとつの手段ではないか。北朝鮮は6カ国会議に戻ると言っているが、米国がそれに応じようとしないので、何らかの形で打開しようという意図も考えられる」
○冷泉彰彦は「ニューズウィーク」ウェブ版で、今年3月の韓国哨戒艦・天安の雷撃沈没事件のときもそうだったが、潘基文国連事務総長は、今回も紛争当事国・韓国の元外相である。彼が調停のイニシアティブを取るのは、まず不可能である。さてこれからの方策として、6カ国協議のメンバー国、日米韓とロシア、そして中国の5カ国が協調し、<体制維持+改革開放+核放棄+挑発停止>という条件を示す。それでも北が蹴ってきたら、今度という今度は、ソフトランディングでの体制崩壊へ。その際には、中国も文句を言えないはずだ。
○JTBや近畿日本ツーリストは、ツアー客向けに用意していた国境の川をはさんで対岸の北朝鮮がみえる「統一展望台」や、板門店を訪れるオプショナルツアーを中止した。
<韓国>延坪島で民間人ふたりの遺体が見つかった。兵士の死亡は2人、重傷5人、軽傷10人。民間人は死亡2人、軽傷4人。死亡した民間人ふたりは、島外から来ていた男性作業員で61歳と60歳。海兵隊の新しい官舎の建築工事に従事していた。
朝鮮日報は金正日総書記の三男、金正恩が後継者に決まったことに触れ、北朝鮮が韓国との軍事危機をつくり出し「3代世襲に対する国内の不満を外に向けようとする意図がある」
金泰栄国防相がゲーツ米国防長官と電話協議。
李明博大統領がオバマ大統領と電話協議。オバマは「空母ジョージ・ワシントンを黄海に派遣する」とあらためて述べ、「今後も必要があれば合同軍事演習を一緒にやろう」と約束した。
李大統領が日英独の各首脳と電話会談。国連安保理議長国である英国のキャメロン首相は中国の役割の重要性を指摘するとともに「北朝鮮の行動は国際社会から指弾されなければならない」とし、安保理で扱う考えを示唆した。しかし李は哨戒艦沈没事件で、中ロが慎重な姿勢をみせ、制裁決議を得られなかった例から、安保理での協議を要請しても「得る利益は少ない」。扱いを英国など安保理メンバーに任せる方針を決めた。
金泰栄国防相は国会答弁で、北朝鮮が砲撃戦をさらに続けた場合、空軍機による爆撃を考えていたことを明らかにした。韓国軍は通常、反撃する場合は「比例原則」に従い、似た兵器でほぼ等しい規模で行ってきた。従来の「交戦規則」では、北朝鮮軍の攻勢に耐えられなくなりつつある実情をうかがわせた。
韓国の金泰栄国防相は11月24日の国会答弁で、北朝鮮は「後継者の金正恩の指導力を誇示し、後継体制を強化結束させようとしている」「ウラン濃縮公開や砲撃で、韓米を挑発し、住民の離脱や不満を防ぎ、局面を転換しようとする強硬策だ」。また砲撃戦には北朝鮮の金英哲人民武力部偵察総局長や、金格植第4軍団長(前総参謀長)が関与しているとの見方を示した。金格植と金英哲は、2009年11月に黄海で起きた南北艦艇の銃撃戦や、2010年3月の韓国哨戒艦沈没にかかわったとみられている。
金国防相は、米韓連合軍が北朝鮮に対する情報監視体制のレベルを5段階の「3」から「2」へ引き上げたことを明らかにした。また砲撃した北朝鮮軍の陣地のそばに、射程100キロほどの地対艦ミサイル「シルクワーム」を配備した基地があり、追加挑発に備える必要があるとした。
金星煥外交通産相は国会答弁で、冷静な対応を求めた中国外務省の声明について「満足がいく結果ではない」。中韓外相会談を利用して、説得を試みる考えを示した。
中国による北朝鮮説得が世界主要国の趨勢。しかし中国の駐韓大使は韓国外交通産相高官に会い、改めて従来の中国側の立場を説明した。
韓国統一省報道官は、韓国政府が大韓赤十字社を通じ行っている北朝鮮に対する水害救援を中断すると発表。翌25日に開催予定だった南北赤十字会談は無期延期になった。水害救援のため、食糧支援を話し合う予定であった。
○北朝鮮南部の開城ケソン工業団地では、進出した韓国企業がいまも操業を続けている。しかし韓国政府は24日から開城への民間人の入境を禁止した。緊張が激化している。開城はソウルから約60キロだが、進出企業の経営者や従業員は毎日、南北の軍事境界線を越えて行き来してきた。だが開城にいまも滞在している韓国人従業員は多く、進出企業の韓国側経営者は、取りあえず「通常通りに生産できている」。開城工業団地は金剛山観光などと並ぶ南北経済協力事業として、2004年末に生産が始まった。衣料品などを生産する120社が進出。約4万5千人の労働者が働き、北朝鮮にとっても貴重な外貨獲得源になっている。いまや南北間の「唯一の接点」である。
○砲撃現場に近い仁川市の大型スーパーで薬局を営む経営者は「今日はいつもより客が少なかった。店に来た客はみな、なかば冗談で『戦争になるのでは』と話したが、常備薬を買いそろえるような人はいなかった」
○黒田勝弘は、韓国の「多くの国民は『前線での局地的事件』との受け止め方で、『戦争』を意識する雰囲気ではない」<産経新聞11月25日付>
○北朝鮮専門家は今回の砲撃は米国を対話に応じさせ、6カ国協議で譲歩を引き出すための脅迫である。大統領府の地下壕にある国家危機管理センターにこの日に集まった韓国首脳たちも同様に理解している。日本の外務省のある高官は「彼らが考えていることは誰にもはっきりと分からない。だが6カ国協議復帰が関係している可能性はある。<「ニューズウィーク」ウェブ版>
○民間調査機関が24日に実施した世論調査では、北朝鮮が追加攻撃をした場合の対応として、47.3%が「戦争を辞さないすみやかな対応」を望む。42.4%が「戦闘拡大を避ける防衛的対応」を望んでいる。意見は二分された。
○民間調査会社・リアルメーターの緊急調査によると、大統領の対応が「適切でなかった」とする回答率は 49%で、「適切」の 29%を大幅に上回った。また北朝鮮の軍事的挑発に対する出方では、45%が「戦線を拡大しても強力に軍事対応すべきだ」と答えた。拡大を避けるべしとする声は 33.5%。外交や経済制裁を軸とする主張は16%にとどまった。
○東亜日報は「民間人居住区への無差別砲撃は戦争犯罪に該当する。金正日政権が綿密な計画の基に挑発を強行したとしか考えられない」
○冷戦時代さながらのやり方への逆戻りは、北朝鮮軍上層部の強硬派が復活したことを意味している。彼らは若い正恩に対する影響力をますます強めている。この2年間、穏健派の外務官僚のかわりに、国防委員会や朝鮮人民軍といった軍事部門が好戦的な声明を繰り返し発表してきた。お得意の欧米や韓国非難を外交官ではなく軍人がするのは、これまでほとんどなかったことだ。中長期を見据えた戦略的な北朝鮮の視点は、2012年に米国と韓国、ロシアで大統領選挙があり、中国の胡錦濤国家主席が交代する。つまり6カ国協議に参加する日本以外(日本も)すべての国でトップが変わる可能性がある。北朝鮮にすれば、この状況で交渉をしても無駄と判断するであろう。さらには2012年は、北朝鮮にとって金日成生誕100周年という、非常に大切な年である。<「ニューズウィーク」>
<北朝鮮>北朝鮮の国民の声としてデイリーNKが伝えるところによると、「南朝鮮がわが共和国を狙い挑発を行ったが、将軍様(金正日総書記)の軍隊はこれを許さず、数倍にして報復した。敵の対決策動にも青年大将(金正恩・朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長)が<領導>する革命的武装力で対抗するわれわれにあるのは、勝利だけだ。情勢が複雑になるほど金総書記と正恩氏に仕えてこそ、勝利が保障される」
北朝鮮の外務省報道官は談話で、今回の砲撃は「韓国軍の軍事演習に対抗した自衛的措置だ」。朝鮮戦争休戦後に「国連軍が一方的に設定」した黄海の南北境界水域の北方境界線NLLの存在が「今回の危険な事態を招いた」と指摘。NLLは認めないとの主張をあらためて強調した。また韓国を「敵」としたが、これまで「逆賊集団」「傀儡一味」などと表現してきた。「敵」と規定したのは今回がはじめてである。
北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長は24日、平壌で中国の陳竺衛生相を団長とする衛生省代表団と会談し、「両国代表団の頻繁な往来は、朝中友好の強い生命力を示している」と述べた。
中国中央テレビの連続ドラマ「毛岸英」の上映式が平壌で開かれた。中国の故毛沢東主席の長男で朝鮮戦争に参加して戦死した毛岸英の人生を描いたドラマである。中国代表団は、北朝鮮の金総書記に贈るDVDを康能洙副首相に渡した。康副首相は「朝鮮戦争で毛岸英氏をはじめ、中国の多くの若者が勇敢に戦い、貴重な命をささげたことを、朝鮮人民は決して忘れない」と強調した。
聯合ニュースによると、李明博大統領が「北南関係改善の雰囲気を踏みにじり、情勢を戦争の状態に追い込んだ」。反民族的、反統一的犯罪を絶対に許すことはできないと非難。「人道事業さえ破綻させ、民族の頭上に災害を浴びせた傀儡逆賊の輩は、より大きな民族の懲罰を免れないだろう」と威嚇した。
韓国政府が南北赤十字会談を無期延期したことに対し、北朝鮮は「北南対話の扉が閉ざされ、北南関係は破局に直面することになった」と強く非難。<聯合ニュース>
大韓赤十字社が会談の無期延期を宣布したことを受け、北朝鮮は「これ以上人道主義問題の解決にこだわる積りはない」と主張した。南北離散家族の再会行事定例化をはじめとする人道事業の破綻に、韓国側赤十字が全面的に責任を負わなければならないと強調した。
延坪島砲撃に関しては、韓国側が北朝鮮領海に数10発の砲射撃行ったことに物理的打撃で対応する軍事的措置を取ったものだとの主張を繰り返した。<聯合ニュース>
北朝鮮が24日に米軍側に送った通知文で、「事件の発生は米国側にも責任がある」。「軍事挑発を強行すれば躊躇なく、第2次3次の強力な物理的報復打撃を加える」
在韓国連軍司令部が24日に提案した将官級会談開催を事実上拒否するとともに、28日からの米ジョージ・ワシントンも投入される黄海での米韓合同軍事演習へも警告したとみられる。在韓国連軍司令部に送付された通知文では、3月の韓国哨戒艦沈没のような、北朝鮮に責任を押し付ける「でっち上げ、謀略劇をつくり上げようと、追加的な挑発を企てている」。「米国は南朝鮮の傀儡・李明博政権をかばうのではなく、冒険的な軍事的挑発行為を韓国がこれ以上起こさないよう徹底して統制すべきだ」と主張。
祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は、韓国政府が国連の対北朝鮮人権決議案に共同提案国として賛成したことを強く非難した。
北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ムスダン」、射程3千キロの発射実験を数カ月以内に実施しようと準備を進めていることが24日に分かった。北朝鮮は10月10日の軍事パレードで、ムスダンとみられる新型ミサイル8基を登場させたが、これまで発射実験は行っていない。実験によって実戦可能であることを「宣言」すると見られる。ムスダンの射程は、北はカムチャッカ半島の南部から、日本列島のすべて、南はフィリピンの北部まで届く。グアムは圏外である。米軍は岩国基地から全戦闘機を沖縄嘉手納基地に移動させたが、核搭載ムスダンを恐れての退避であろうという見方もある。北朝鮮で核弾頭を搭載するミサイルは、ムスダンが最初になるとみられている。北朝鮮は核・ミサイル開発で、イランと協力関係にあるが、実験結果に関する情報は、両国で共有される。10月10日の軍事パレードには、イランからの代表団が招待され、VIP席で観覧していた。代表団はイランのミサイル開発に携わるSHIG社の幹部ら。SHIGは北朝鮮とのミサイル協力に深くかかわってきた。ムスダンは旧ソ連製の潜水艦発射弾道ミサイル「SSN6」の技術を利用し、陸上発射型として北朝鮮が開発した中距離弾道ミサイル。ミサイル施設がある北朝鮮北東部「舞水端里ムスダンリ」にちなんでの通称。正式な北朝鮮名は不明である。
<米国>この日発行のワシントン・ポスト紙は、カーター元大統領の寄稿を掲載。「8月に北朝鮮を訪れたとき、核放棄と引き換えに、米国と永久的な平和条約を結ぶ用意がある」と聞いた。
国防相会談などで北朝鮮の行動が「綿密に計画された武力挑発」との見解で一致した。北は米専門家に軽水炉建設現場やウラン濃縮施設を公開したが、それでも米政府が対話に応じない場合の対抗策として、砲爆を準備していた可能性が大きい。
国務省と国防総省は、北朝鮮の延坪島砲撃に言及し、中国の北朝鮮に対する積極的な影響力行使を迫った。
クローリー国務次官補(広報担当)は「戦争ではない。これは一回限りの行動だ」「中国がわれわれとともに、現状と危機の責任がどこにあるのかを明示するよう期待する」「中国の説得に全力で当たる」。中国は「北朝鮮を根本的に違う方向に動かすために、非常に重要」な国家。「北朝鮮が変わらなければならないという明確かつ直接的で、(米中などが)一致したメッセージを送らなくてはならない」。中国の影響力の行使を強調した。国連安全保障会議の場で協議するかどうかについては、最近のウラン濃縮施設公開の事実関係を精査する必要があるとして、「じっくり取り組む」と述べるにとどめた。また数日中に、米中高官協議を行うことを明らかにした。
マレン米統合参謀本部議長も「北朝鮮に影響力を持つ中国指導部のリーダーシップが絶対に重要だ」。「中国の指導力は極めて重要だ」と、中国の積極的な協力を求めた。また金総書記について、「非常に予測が難しく、危険な男だ」と述べた。
クリントン米国務長官は、前原誠司外相、韓国の金星煥外交通産相と電話会談。12月上旬にワシントンで日米韓3カ国の外相会談を開くことを打診。
クリントン国務長官は楊潔箎外相との電話会見を予定していると、ニューヨークタイムズE版が報じた。中国政府に、砲撃事件に対する北朝鮮の責任を認めるように求め、影響力を行使するよう促す方針。
国防総省は、黄海での米韓合同軍事演習実施を中国に通知したことを明らかにした。
オバマ大統領が砲撃事件で協力を求めるために、中国の胡錦濤国家主席との電話対談の準備を進めていると、ニューヨークタイムズE版が報じた。
国防総省のラパン副報道官は、米韓合同軍事演習に加わるため、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」を黄海に派遣したことを中国側に伝達。
ボズワース米北朝鮮担当特別代表は、滞在中の北京で、北による砲撃について「扇動的で無責任な行動を中止し、朝鮮戦争休戦協定と国際的な規範を順守するよう北朝鮮に求める」とする声明を発表。「国際社会のすべてのメンバーが北朝鮮の行動を非難し、非核化に取り組ませるよう求めたい」
<中国>ロシア訪問中の温家宝首相は、モスクワ近郊でメドベージェフ大統領と会談し、朝鮮半島情勢を巡って、「中国はいかなる軍事的な挑発にも反対する」「関係各国は最大限、自制的であるべきだ」「6者協議の再開は朝鮮半島の安定を維持する根本的な道筋だ」。また28日からの黄海での米韓合同軍事演習について「武力によるいかなる挑発にも反対する」と警戒感を露わにした。
楊外相が、訪韓延期を韓国に通告。26日、27日の訪韓予定であった。
中国の朝鮮問題専門家は、北の砲撃について「寝耳に水」。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議議長国の中国は、協議再開に向けて調整を進めてきた。しかし「中国は猛獣使いではない」と中国紙が掲載。北朝鮮を追い詰めて、体制が不安定化すれば、大量の難民が国境を接する中国東北部に流入する。中国国内の混乱、さらには便乗しての反乱を中国は最大に警戒している。
外務省の洪磊副報道官は、砲撃戦に「遺憾」を表明するとともに、「朝鮮半島の平和と安定を損なういかなる行為にも反対する」。南北朝鮮双方が「冷静さと自制を保ち、できるだけ早く、対話によって同様の事件の再発を防ぐことを強く呼び掛ける」。前日よりも強い調子だが、慎重な姿勢を崩していない。
米ボズワース特別代表は、武大偉朝鮮半島問題特別代表と会談。また崔天凱外務次官とも会談。中国外務省は「6カ国協議再開に向け努力することで一致した」と明らかにした。
中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は、北朝鮮による韓国・延坪島砲撃事件について北「朝鮮と韓国が互いに砲撃し、双方ともに相手側が先に手を出したと主張した」と1面トップで報じ、北朝鮮の砲撃を暗に擁護した。また北「朝鮮と韓国は23日、双方が領有権争いのある島付近で計300発の砲弾を撃ち合った」と説明。北朝鮮による砲撃が先で、それを受けて韓国が反撃したとの記事はあいまいである。最初に韓国が砲撃し着弾した海上は、北朝鮮の主張する北の領海であるという見解であろう。米韓政府の見解も載せながら、「韓国軍は度重なる警告を無視し(北)朝鮮の領海に向けて数10発の砲弾を発射したため、朝鮮人民軍が反撃した」。韓国は「米国との軍事同盟に過度に依存しており、中国との協調が足りなかった」と韓国を批判した。砲撃事件の原因は、米韓の高圧的な対北政策にあると分析し、朝鮮半島の平和を守るためには「北東アジアに残されている冷戦体制を徹底的に排除し、(北)朝鮮の体制維持に対する不安感を取り除くことが何よりも大事だ」と論じた。24日付の中国他紙はほとんどが同じ論調だが、中国メディアを管轄する共産党中央宣伝部による指示があった。インターネット上では、「韓国が先に攻撃したとは考えられない」との書き込みがあふれている。この問題に関心のある市民は、ネットや香港紙の電子版などを通じて、真実を知ったようである。
<国連>在韓国連軍司令部は砲撃をめぐり、北朝鮮軍に将官級会議の開催を呼びかけた。
今月の国連安保理議長国・英国のライアルグラント国連大使が、5常任理事国や日韓などと非公式に意見交換。ただ、安保理全体で実質的協議に入る見通しはまだたっていない。
午前、韓国の朴仁国国連大使が国連本部を訪問。安保理議場脇の別室で、英国の次席大使らと砲撃事件について意見交換したが、韓国側から安保理の正式議題にするよう求める依頼はなかった。韓国政府内で慎重に対応を検討しているものとみられる。安保理内での大きな焦点のひとつは、拒否権を持つ中国の対応だ。
<ロシア>安全保障会議のナザロフ副書記は「朝鮮半島の国を分ける境界の近くで演習を行うことは、極めて挑発的だ」と、28日からの米韓合同軍事演習に懸念を表明。
訪ロ中の温家宝中国首相は、メドベージェフ・ロシア大統領とモスクワ近郊で会談。
北朝鮮と国境を接するロシア沿岸地方の国境警備隊報道官はイタル・タス通信に対して、露朝「国境は平穏で、任務は通常の計画通りに行われている」と話した。ロシアと北朝鮮の国境線は長さ18キロである。
<2010年12月30日>
11月24日<日本>朝。米韓合同軍事演習のため、米海軍横須賀基地から米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が黄海の公海に向けて出港した。この演習は以前から計画されていた。韓国哨戒艦沈没事件を受けた措置の一環。28日から12月1日まで実施が予定されていた。今回は砲撃事件を加味している。ラウスマン空母艦長は「同盟国と連携することで、緊張や不確実性を小さくすることが与えられた任務だ」
9:18 閣議。
10:25 前原外相が韓国の金星煥外交通産相と電話会談。
11:02 政府は菅首相を本部長とする「北朝鮮による砲撃事件対策本部」を設置。メンバーは全閣僚。官邸で初会合を開いた。首相の指示は
①米韓の連携を土台にして、北朝鮮に影響力がある中国への働きかけ方を検討する。
②各府省でどういう制裁が可能か検討する。
12:08 管首相は韓国の李大統領と電話で協議した。日米韓で緊密に連携していくことを確認した。
15:30 前原外相は程永華駐日中国大使と外務省で会談。前原は北朝鮮を非難。中国が6者協議の議長国であることや、北朝鮮に経済的な支援をしていることにも言及し、「中国の果たす役割は大きい」と、北朝鮮に強く働きかけるよう暗にプレッシャーをかけた。これに対して程大使は慎重に言葉を選び、「あの海域における今までの取り決めと、砲撃に至る経緯について精査したい」と述べ、イエスと返答することを避けた。
首相は北朝鮮への追加制裁の検討も指示したが、日本人拉致事件や、核実験を受け、輸出入全面禁止などの対北制裁は実施済みで、仙谷官房長官は記者会見で「ほとんどやり尽くしている」。外務省幹部は「びっくりした。どう考えても(制裁は)そういう状況にはない」、韓国や米国が追加制裁を打ち出していないのに、日本だけ制裁に乗り出すのは「外交の常識から言っても考えにくい」
16:00 菅首相はじめ与野党党首会談が順次、国会内で開かれた。
高木文部科学相は閣議後の会見で、朝鮮学校への高校無償化適用について、当面見送る考えを示した。仙谷官房長官は「こういう緊急状態の中で、現時点では手続きを停止することが望ましい」。これが仙谷式制裁か?
21時前、関係閣僚会合を開き、陸海空自衛隊の制服組トップも入る安全保障会議を見送った。周辺事態法が定める「我が国の平和および安全に重要な影響を与える事態」が認定されれば同法は発動され、自衛隊による米軍への後方地域支援などが可能になる。野党側の指摘は、今回生じた状況は「周辺事態」に準じたものではないかとの問いかけだ。ただ、双方の砲撃は広がらず、韓国側も冷静な対応を取ったため、政府も23日夕には「これ以上、事態は悪化しない」(外務省幹部)と判断。仙谷官房長官も同日夕の会見で「現時点では国民生活の安全を脅かす事態に至っているとの情報、認識は持っていない」と語った。
○朝8時から70分間、民主党は外務部門会議を開催したが、出席者はわずか20人ほど。砲撃については、松本剛外務副大臣からの報告と質疑応答の約15分のみ。意見を述べたのはわずかひとりで「管首相への報告は遅れたのではないか」。松本は「遅いとは思わない」と応じた。
○夕方に民主党は防衛部門会議を開催。出席した議員は同じく20人ほど。「どの部門会議でもふつう、50~60人は集まるのに、あんなことがあった後なのに、防衛は票にならないということでしょう。来年度予算に関する話しがほとんどで、北朝鮮の砲撃に関しては、ひとりが『北朝鮮の被害は把握しているのか?』と質問したくらいで、安住淳防衛副大臣が『相当な被害ではないか』と答えましたが、報道以上の情報はありませんでした」と、民主党議員は話した。
○民主党の外交安保調査会総会は、出席者55名と盛況だったが、「防衛計画の大綱」案についての議論に時間が割かれ、砲撃についての議論は空疎だった。
○森本敏拓殖大教授(安全保障政策)は「北朝鮮は韓国海軍哨戒艦沈没以降、6カ国協議の再開を渋る韓国や米国を交渉の場に、引きずり出したい思惑があるのではないか。ウラン濃縮の成果をアピールしたり、米国のボズワース北朝鮮担当特別代表が日中韓の3カ国を訪問したりするタイミングを狙って挑発したとも考えられる」
○浅田正彦京都大教授(国際法・元国連の北朝鮮制裁パネルのメンバー)は「若い正恩氏が軍を掌握できることを特に国内に示すひとつの手段ではないか。北朝鮮は6カ国会議に戻ると言っているが、米国がそれに応じようとしないので、何らかの形で打開しようという意図も考えられる」
○冷泉彰彦は「ニューズウィーク」ウェブ版で、今年3月の韓国哨戒艦・天安の雷撃沈没事件のときもそうだったが、潘基文国連事務総長は、今回も紛争当事国・韓国の元外相である。彼が調停のイニシアティブを取るのは、まず不可能である。さてこれからの方策として、6カ国協議のメンバー国、日米韓とロシア、そして中国の5カ国が協調し、<体制維持+改革開放+核放棄+挑発停止>という条件を示す。それでも北が蹴ってきたら、今度という今度は、ソフトランディングでの体制崩壊へ。その際には、中国も文句を言えないはずだ。
○JTBや近畿日本ツーリストは、ツアー客向けに用意していた国境の川をはさんで対岸の北朝鮮がみえる「統一展望台」や、板門店を訪れるオプショナルツアーを中止した。
<韓国>延坪島で民間人ふたりの遺体が見つかった。兵士の死亡は2人、重傷5人、軽傷10人。民間人は死亡2人、軽傷4人。死亡した民間人ふたりは、島外から来ていた男性作業員で61歳と60歳。海兵隊の新しい官舎の建築工事に従事していた。
朝鮮日報は金正日総書記の三男、金正恩が後継者に決まったことに触れ、北朝鮮が韓国との軍事危機をつくり出し「3代世襲に対する国内の不満を外に向けようとする意図がある」
金泰栄国防相がゲーツ米国防長官と電話協議。
李明博大統領がオバマ大統領と電話協議。オバマは「空母ジョージ・ワシントンを黄海に派遣する」とあらためて述べ、「今後も必要があれば合同軍事演習を一緒にやろう」と約束した。
李大統領が日英独の各首脳と電話会談。国連安保理議長国である英国のキャメロン首相は中国の役割の重要性を指摘するとともに「北朝鮮の行動は国際社会から指弾されなければならない」とし、安保理で扱う考えを示唆した。しかし李は哨戒艦沈没事件で、中ロが慎重な姿勢をみせ、制裁決議を得られなかった例から、安保理での協議を要請しても「得る利益は少ない」。扱いを英国など安保理メンバーに任せる方針を決めた。
金泰栄国防相は国会答弁で、北朝鮮が砲撃戦をさらに続けた場合、空軍機による爆撃を考えていたことを明らかにした。韓国軍は通常、反撃する場合は「比例原則」に従い、似た兵器でほぼ等しい規模で行ってきた。従来の「交戦規則」では、北朝鮮軍の攻勢に耐えられなくなりつつある実情をうかがわせた。
韓国の金泰栄国防相は11月24日の国会答弁で、北朝鮮は「後継者の金正恩の指導力を誇示し、後継体制を強化結束させようとしている」「ウラン濃縮公開や砲撃で、韓米を挑発し、住民の離脱や不満を防ぎ、局面を転換しようとする強硬策だ」。また砲撃戦には北朝鮮の金英哲人民武力部偵察総局長や、金格植第4軍団長(前総参謀長)が関与しているとの見方を示した。金格植と金英哲は、2009年11月に黄海で起きた南北艦艇の銃撃戦や、2010年3月の韓国哨戒艦沈没にかかわったとみられている。
金国防相は、米韓連合軍が北朝鮮に対する情報監視体制のレベルを5段階の「3」から「2」へ引き上げたことを明らかにした。また砲撃した北朝鮮軍の陣地のそばに、射程100キロほどの地対艦ミサイル「シルクワーム」を配備した基地があり、追加挑発に備える必要があるとした。
金星煥外交通産相は国会答弁で、冷静な対応を求めた中国外務省の声明について「満足がいく結果ではない」。中韓外相会談を利用して、説得を試みる考えを示した。
中国による北朝鮮説得が世界主要国の趨勢。しかし中国の駐韓大使は韓国外交通産相高官に会い、改めて従来の中国側の立場を説明した。
韓国統一省報道官は、韓国政府が大韓赤十字社を通じ行っている北朝鮮に対する水害救援を中断すると発表。翌25日に開催予定だった南北赤十字会談は無期延期になった。水害救援のため、食糧支援を話し合う予定であった。
○北朝鮮南部の開城ケソン工業団地では、進出した韓国企業がいまも操業を続けている。しかし韓国政府は24日から開城への民間人の入境を禁止した。緊張が激化している。開城はソウルから約60キロだが、進出企業の経営者や従業員は毎日、南北の軍事境界線を越えて行き来してきた。だが開城にいまも滞在している韓国人従業員は多く、進出企業の韓国側経営者は、取りあえず「通常通りに生産できている」。開城工業団地は金剛山観光などと並ぶ南北経済協力事業として、2004年末に生産が始まった。衣料品などを生産する120社が進出。約4万5千人の労働者が働き、北朝鮮にとっても貴重な外貨獲得源になっている。いまや南北間の「唯一の接点」である。
○砲撃現場に近い仁川市の大型スーパーで薬局を営む経営者は「今日はいつもより客が少なかった。店に来た客はみな、なかば冗談で『戦争になるのでは』と話したが、常備薬を買いそろえるような人はいなかった」
○黒田勝弘は、韓国の「多くの国民は『前線での局地的事件』との受け止め方で、『戦争』を意識する雰囲気ではない」<産経新聞11月25日付>
○北朝鮮専門家は今回の砲撃は米国を対話に応じさせ、6カ国協議で譲歩を引き出すための脅迫である。大統領府の地下壕にある国家危機管理センターにこの日に集まった韓国首脳たちも同様に理解している。日本の外務省のある高官は「彼らが考えていることは誰にもはっきりと分からない。だが6カ国協議復帰が関係している可能性はある。<「ニューズウィーク」ウェブ版>
○民間調査機関が24日に実施した世論調査では、北朝鮮が追加攻撃をした場合の対応として、47.3%が「戦争を辞さないすみやかな対応」を望む。42.4%が「戦闘拡大を避ける防衛的対応」を望んでいる。意見は二分された。
○民間調査会社・リアルメーターの緊急調査によると、大統領の対応が「適切でなかった」とする回答率は 49%で、「適切」の 29%を大幅に上回った。また北朝鮮の軍事的挑発に対する出方では、45%が「戦線を拡大しても強力に軍事対応すべきだ」と答えた。拡大を避けるべしとする声は 33.5%。外交や経済制裁を軸とする主張は16%にとどまった。
○東亜日報は「民間人居住区への無差別砲撃は戦争犯罪に該当する。金正日政権が綿密な計画の基に挑発を強行したとしか考えられない」
○冷戦時代さながらのやり方への逆戻りは、北朝鮮軍上層部の強硬派が復活したことを意味している。彼らは若い正恩に対する影響力をますます強めている。この2年間、穏健派の外務官僚のかわりに、国防委員会や朝鮮人民軍といった軍事部門が好戦的な声明を繰り返し発表してきた。お得意の欧米や韓国非難を外交官ではなく軍人がするのは、これまでほとんどなかったことだ。中長期を見据えた戦略的な北朝鮮の視点は、2012年に米国と韓国、ロシアで大統領選挙があり、中国の胡錦濤国家主席が交代する。つまり6カ国協議に参加する日本以外(日本も)すべての国でトップが変わる可能性がある。北朝鮮にすれば、この状況で交渉をしても無駄と判断するであろう。さらには2012年は、北朝鮮にとって金日成生誕100周年という、非常に大切な年である。<「ニューズウィーク」>
<北朝鮮>北朝鮮の国民の声としてデイリーNKが伝えるところによると、「南朝鮮がわが共和国を狙い挑発を行ったが、将軍様(金正日総書記)の軍隊はこれを許さず、数倍にして報復した。敵の対決策動にも青年大将(金正恩・朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長)が<領導>する革命的武装力で対抗するわれわれにあるのは、勝利だけだ。情勢が複雑になるほど金総書記と正恩氏に仕えてこそ、勝利が保障される」
北朝鮮の外務省報道官は談話で、今回の砲撃は「韓国軍の軍事演習に対抗した自衛的措置だ」。朝鮮戦争休戦後に「国連軍が一方的に設定」した黄海の南北境界水域の北方境界線NLLの存在が「今回の危険な事態を招いた」と指摘。NLLは認めないとの主張をあらためて強調した。また韓国を「敵」としたが、これまで「逆賊集団」「傀儡一味」などと表現してきた。「敵」と規定したのは今回がはじめてである。
北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長は24日、平壌で中国の陳竺衛生相を団長とする衛生省代表団と会談し、「両国代表団の頻繁な往来は、朝中友好の強い生命力を示している」と述べた。
中国中央テレビの連続ドラマ「毛岸英」の上映式が平壌で開かれた。中国の故毛沢東主席の長男で朝鮮戦争に参加して戦死した毛岸英の人生を描いたドラマである。中国代表団は、北朝鮮の金総書記に贈るDVDを康能洙副首相に渡した。康副首相は「朝鮮戦争で毛岸英氏をはじめ、中国の多くの若者が勇敢に戦い、貴重な命をささげたことを、朝鮮人民は決して忘れない」と強調した。
聯合ニュースによると、李明博大統領が「北南関係改善の雰囲気を踏みにじり、情勢を戦争の状態に追い込んだ」。反民族的、反統一的犯罪を絶対に許すことはできないと非難。「人道事業さえ破綻させ、民族の頭上に災害を浴びせた傀儡逆賊の輩は、より大きな民族の懲罰を免れないだろう」と威嚇した。
韓国政府が南北赤十字会談を無期延期したことに対し、北朝鮮は「北南対話の扉が閉ざされ、北南関係は破局に直面することになった」と強く非難。<聯合ニュース>
大韓赤十字社が会談の無期延期を宣布したことを受け、北朝鮮は「これ以上人道主義問題の解決にこだわる積りはない」と主張した。南北離散家族の再会行事定例化をはじめとする人道事業の破綻に、韓国側赤十字が全面的に責任を負わなければならないと強調した。
延坪島砲撃に関しては、韓国側が北朝鮮領海に数10発の砲射撃行ったことに物理的打撃で対応する軍事的措置を取ったものだとの主張を繰り返した。<聯合ニュース>
北朝鮮が24日に米軍側に送った通知文で、「事件の発生は米国側にも責任がある」。「軍事挑発を強行すれば躊躇なく、第2次3次の強力な物理的報復打撃を加える」
在韓国連軍司令部が24日に提案した将官級会談開催を事実上拒否するとともに、28日からの米ジョージ・ワシントンも投入される黄海での米韓合同軍事演習へも警告したとみられる。在韓国連軍司令部に送付された通知文では、3月の韓国哨戒艦沈没のような、北朝鮮に責任を押し付ける「でっち上げ、謀略劇をつくり上げようと、追加的な挑発を企てている」。「米国は南朝鮮の傀儡・李明博政権をかばうのではなく、冒険的な軍事的挑発行為を韓国がこれ以上起こさないよう徹底して統制すべきだ」と主張。
祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は、韓国政府が国連の対北朝鮮人権決議案に共同提案国として賛成したことを強く非難した。
北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ムスダン」、射程3千キロの発射実験を数カ月以内に実施しようと準備を進めていることが24日に分かった。北朝鮮は10月10日の軍事パレードで、ムスダンとみられる新型ミサイル8基を登場させたが、これまで発射実験は行っていない。実験によって実戦可能であることを「宣言」すると見られる。ムスダンの射程は、北はカムチャッカ半島の南部から、日本列島のすべて、南はフィリピンの北部まで届く。グアムは圏外である。米軍は岩国基地から全戦闘機を沖縄嘉手納基地に移動させたが、核搭載ムスダンを恐れての退避であろうという見方もある。北朝鮮で核弾頭を搭載するミサイルは、ムスダンが最初になるとみられている。北朝鮮は核・ミサイル開発で、イランと協力関係にあるが、実験結果に関する情報は、両国で共有される。10月10日の軍事パレードには、イランからの代表団が招待され、VIP席で観覧していた。代表団はイランのミサイル開発に携わるSHIG社の幹部ら。SHIGは北朝鮮とのミサイル協力に深くかかわってきた。ムスダンは旧ソ連製の潜水艦発射弾道ミサイル「SSN6」の技術を利用し、陸上発射型として北朝鮮が開発した中距離弾道ミサイル。ミサイル施設がある北朝鮮北東部「舞水端里ムスダンリ」にちなんでの通称。正式な北朝鮮名は不明である。
<米国>この日発行のワシントン・ポスト紙は、カーター元大統領の寄稿を掲載。「8月に北朝鮮を訪れたとき、核放棄と引き換えに、米国と永久的な平和条約を結ぶ用意がある」と聞いた。
国防相会談などで北朝鮮の行動が「綿密に計画された武力挑発」との見解で一致した。北は米専門家に軽水炉建設現場やウラン濃縮施設を公開したが、それでも米政府が対話に応じない場合の対抗策として、砲爆を準備していた可能性が大きい。
国務省と国防総省は、北朝鮮の延坪島砲撃に言及し、中国の北朝鮮に対する積極的な影響力行使を迫った。
クローリー国務次官補(広報担当)は「戦争ではない。これは一回限りの行動だ」「中国がわれわれとともに、現状と危機の責任がどこにあるのかを明示するよう期待する」「中国の説得に全力で当たる」。中国は「北朝鮮を根本的に違う方向に動かすために、非常に重要」な国家。「北朝鮮が変わらなければならないという明確かつ直接的で、(米中などが)一致したメッセージを送らなくてはならない」。中国の影響力の行使を強調した。国連安全保障会議の場で協議するかどうかについては、最近のウラン濃縮施設公開の事実関係を精査する必要があるとして、「じっくり取り組む」と述べるにとどめた。また数日中に、米中高官協議を行うことを明らかにした。
マレン米統合参謀本部議長も「北朝鮮に影響力を持つ中国指導部のリーダーシップが絶対に重要だ」。「中国の指導力は極めて重要だ」と、中国の積極的な協力を求めた。また金総書記について、「非常に予測が難しく、危険な男だ」と述べた。
クリントン米国務長官は、前原誠司外相、韓国の金星煥外交通産相と電話会談。12月上旬にワシントンで日米韓3カ国の外相会談を開くことを打診。
クリントン国務長官は楊潔箎外相との電話会見を予定していると、ニューヨークタイムズE版が報じた。中国政府に、砲撃事件に対する北朝鮮の責任を認めるように求め、影響力を行使するよう促す方針。
国防総省は、黄海での米韓合同軍事演習実施を中国に通知したことを明らかにした。
オバマ大統領が砲撃事件で協力を求めるために、中国の胡錦濤国家主席との電話対談の準備を進めていると、ニューヨークタイムズE版が報じた。
国防総省のラパン副報道官は、米韓合同軍事演習に加わるため、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」を黄海に派遣したことを中国側に伝達。
ボズワース米北朝鮮担当特別代表は、滞在中の北京で、北による砲撃について「扇動的で無責任な行動を中止し、朝鮮戦争休戦協定と国際的な規範を順守するよう北朝鮮に求める」とする声明を発表。「国際社会のすべてのメンバーが北朝鮮の行動を非難し、非核化に取り組ませるよう求めたい」
<中国>ロシア訪問中の温家宝首相は、モスクワ近郊でメドベージェフ大統領と会談し、朝鮮半島情勢を巡って、「中国はいかなる軍事的な挑発にも反対する」「関係各国は最大限、自制的であるべきだ」「6者協議の再開は朝鮮半島の安定を維持する根本的な道筋だ」。また28日からの黄海での米韓合同軍事演習について「武力によるいかなる挑発にも反対する」と警戒感を露わにした。
楊外相が、訪韓延期を韓国に通告。26日、27日の訪韓予定であった。
中国の朝鮮問題専門家は、北の砲撃について「寝耳に水」。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議議長国の中国は、協議再開に向けて調整を進めてきた。しかし「中国は猛獣使いではない」と中国紙が掲載。北朝鮮を追い詰めて、体制が不安定化すれば、大量の難民が国境を接する中国東北部に流入する。中国国内の混乱、さらには便乗しての反乱を中国は最大に警戒している。
外務省の洪磊副報道官は、砲撃戦に「遺憾」を表明するとともに、「朝鮮半島の平和と安定を損なういかなる行為にも反対する」。南北朝鮮双方が「冷静さと自制を保ち、できるだけ早く、対話によって同様の事件の再発を防ぐことを強く呼び掛ける」。前日よりも強い調子だが、慎重な姿勢を崩していない。
米ボズワース特別代表は、武大偉朝鮮半島問題特別代表と会談。また崔天凱外務次官とも会談。中国外務省は「6カ国協議再開に向け努力することで一致した」と明らかにした。
中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は、北朝鮮による韓国・延坪島砲撃事件について北「朝鮮と韓国が互いに砲撃し、双方ともに相手側が先に手を出したと主張した」と1面トップで報じ、北朝鮮の砲撃を暗に擁護した。また北「朝鮮と韓国は23日、双方が領有権争いのある島付近で計300発の砲弾を撃ち合った」と説明。北朝鮮による砲撃が先で、それを受けて韓国が反撃したとの記事はあいまいである。最初に韓国が砲撃し着弾した海上は、北朝鮮の主張する北の領海であるという見解であろう。米韓政府の見解も載せながら、「韓国軍は度重なる警告を無視し(北)朝鮮の領海に向けて数10発の砲弾を発射したため、朝鮮人民軍が反撃した」。韓国は「米国との軍事同盟に過度に依存しており、中国との協調が足りなかった」と韓国を批判した。砲撃事件の原因は、米韓の高圧的な対北政策にあると分析し、朝鮮半島の平和を守るためには「北東アジアに残されている冷戦体制を徹底的に排除し、(北)朝鮮の体制維持に対する不安感を取り除くことが何よりも大事だ」と論じた。24日付の中国他紙はほとんどが同じ論調だが、中国メディアを管轄する共産党中央宣伝部による指示があった。インターネット上では、「韓国が先に攻撃したとは考えられない」との書き込みがあふれている。この問題に関心のある市民は、ネットや香港紙の電子版などを通じて、真実を知ったようである。
<国連>在韓国連軍司令部は砲撃をめぐり、北朝鮮軍に将官級会議の開催を呼びかけた。
今月の国連安保理議長国・英国のライアルグラント国連大使が、5常任理事国や日韓などと非公式に意見交換。ただ、安保理全体で実質的協議に入る見通しはまだたっていない。
午前、韓国の朴仁国国連大使が国連本部を訪問。安保理議場脇の別室で、英国の次席大使らと砲撃事件について意見交換したが、韓国側から安保理の正式議題にするよう求める依頼はなかった。韓国政府内で慎重に対応を検討しているものとみられる。安保理内での大きな焦点のひとつは、拒否権を持つ中国の対応だ。
<ロシア>安全保障会議のナザロフ副書記は「朝鮮半島の国を分ける境界の近くで演習を行うことは、極めて挑発的だ」と、28日からの米韓合同軍事演習に懸念を表明。
訪ロ中の温家宝中国首相は、メドベージェフ・ロシア大統領とモスクワ近郊で会談。
北朝鮮と国境を接するロシア沿岸地方の国境警備隊報道官はイタル・タス通信に対して、露朝「国境は平穏で、任務は通常の計画通りに行われている」と話した。ロシアと北朝鮮の国境線は長さ18キロである。
<2010年12月30日>