ふろむ播州山麓

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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №6 <砲撃事件翌日11月24日>

2010-12-30 | Weblog
 年の瀬も押し詰まってきました。この連載ものんびり書いていましたら、どんどん時間が過ぎて行き、記述が現実の今現在に追いつかなくなって行くようです。いつまで経っても亀に追いつけない兎の気分です。そういえばあと数日で新年「卯年」です。明日からは帰省や何のと、また時間が消えて行きます。取りあえず、本日は「延坪島砲撃」翌日、11月24日の記録を記してみます。虎は千里を駆け、兔は百米を疾走でしょうか。世界も東アジアも、いい年を迎えたいものです。


11月24日<日本>朝。米韓合同軍事演習のため、米海軍横須賀基地から米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が黄海の公海に向けて出港した。この演習は以前から計画されていた。韓国哨戒艦沈没事件を受けた措置の一環。28日から12月1日まで実施が予定されていた。今回は砲撃事件を加味している。ラウスマン空母艦長は「同盟国と連携することで、緊張や不確実性を小さくすることが与えられた任務だ」
9:18 閣議。
10:25 前原外相が韓国の金星煥外交通産相と電話会談。
11:02 政府は菅首相を本部長とする「北朝鮮による砲撃事件対策本部」を設置。メンバーは全閣僚。官邸で初会合を開いた。首相の指示は
 ①米韓の連携を土台にして、北朝鮮に影響力がある中国への働きかけ方を検討する。
 ②各府省でどういう制裁が可能か検討する。
12:08 管首相は韓国の李大統領と電話で協議した。日米韓で緊密に連携していくことを確認した。
15:30 前原外相は程永華駐日中国大使と外務省で会談。前原は北朝鮮を非難。中国が6者協議の議長国であることや、北朝鮮に経済的な支援をしていることにも言及し、「中国の果たす役割は大きい」と、北朝鮮に強く働きかけるよう暗にプレッシャーをかけた。これに対して程大使は慎重に言葉を選び、「あの海域における今までの取り決めと、砲撃に至る経緯について精査したい」と述べ、イエスと返答することを避けた。
 首相は北朝鮮への追加制裁の検討も指示したが、日本人拉致事件や、核実験を受け、輸出入全面禁止などの対北制裁は実施済みで、仙谷官房長官は記者会見で「ほとんどやり尽くしている」。外務省幹部は「びっくりした。どう考えても(制裁は)そういう状況にはない」、韓国や米国が追加制裁を打ち出していないのに、日本だけ制裁に乗り出すのは「外交の常識から言っても考えにくい」
16:00 菅首相はじめ与野党党首会談が順次、国会内で開かれた。

 高木文部科学相は閣議後の会見で、朝鮮学校への高校無償化適用について、当面見送る考えを示した。仙谷官房長官は「こういう緊急状態の中で、現時点では手続きを停止することが望ましい」。これが仙谷式制裁か?
21時前、関係閣僚会合を開き、陸海空自衛隊の制服組トップも入る安全保障会議を見送った。周辺事態法が定める「我が国の平和および安全に重要な影響を与える事態」が認定されれば同法は発動され、自衛隊による米軍への後方地域支援などが可能になる。野党側の指摘は、今回生じた状況は「周辺事態」に準じたものではないかとの問いかけだ。ただ、双方の砲撃は広がらず、韓国側も冷静な対応を取ったため、政府も23日夕には「これ以上、事態は悪化しない」(外務省幹部)と判断。仙谷官房長官も同日夕の会見で「現時点では国民生活の安全を脅かす事態に至っているとの情報、認識は持っていない」と語った。

○朝8時から70分間、民主党は外務部門会議を開催したが、出席者はわずか20人ほど。砲撃については、松本剛外務副大臣からの報告と質疑応答の約15分のみ。意見を述べたのはわずかひとりで「管首相への報告は遅れたのではないか」。松本は「遅いとは思わない」と応じた。
○夕方に民主党は防衛部門会議を開催。出席した議員は同じく20人ほど。「どの部門会議でもふつう、50~60人は集まるのに、あんなことがあった後なのに、防衛は票にならないということでしょう。来年度予算に関する話しがほとんどで、北朝鮮の砲撃に関しては、ひとりが『北朝鮮の被害は把握しているのか?』と質問したくらいで、安住淳防衛副大臣が『相当な被害ではないか』と答えましたが、報道以上の情報はありませんでした」と、民主党議員は話した。
○民主党の外交安保調査会総会は、出席者55名と盛況だったが、「防衛計画の大綱」案についての議論に時間が割かれ、砲撃についての議論は空疎だった。

○森本敏拓殖大教授(安全保障政策)は「北朝鮮は韓国海軍哨戒艦沈没以降、6カ国協議の再開を渋る韓国や米国を交渉の場に、引きずり出したい思惑があるのではないか。ウラン濃縮の成果をアピールしたり、米国のボズワース北朝鮮担当特別代表が日中韓の3カ国を訪問したりするタイミングを狙って挑発したとも考えられる」
○浅田正彦京都大教授(国際法・元国連の北朝鮮制裁パネルのメンバー)は「若い正恩氏が軍を掌握できることを特に国内に示すひとつの手段ではないか。北朝鮮は6カ国会議に戻ると言っているが、米国がそれに応じようとしないので、何らかの形で打開しようという意図も考えられる」
○冷泉彰彦は「ニューズウィーク」ウェブ版で、今年3月の韓国哨戒艦・天安の雷撃沈没事件のときもそうだったが、潘基文国連事務総長は、今回も紛争当事国・韓国の元外相である。彼が調停のイニシアティブを取るのは、まず不可能である。さてこれからの方策として、6カ国協議のメンバー国、日米韓とロシア、そして中国の5カ国が協調し、<体制維持+改革開放+核放棄+挑発停止>という条件を示す。それでも北が蹴ってきたら、今度という今度は、ソフトランディングでの体制崩壊へ。その際には、中国も文句を言えないはずだ。
○JTBや近畿日本ツーリストは、ツアー客向けに用意していた国境の川をはさんで対岸の北朝鮮がみえる「統一展望台」や、板門店を訪れるオプショナルツアーを中止した。

<韓国>延坪島で民間人ふたりの遺体が見つかった。兵士の死亡は2人、重傷5人、軽傷10人。民間人は死亡2人、軽傷4人。死亡した民間人ふたりは、島外から来ていた男性作業員で61歳と60歳。海兵隊の新しい官舎の建築工事に従事していた。
 朝鮮日報は金正日総書記の三男、金正恩が後継者に決まったことに触れ、北朝鮮が韓国との軍事危機をつくり出し「3代世襲に対する国内の不満を外に向けようとする意図がある」
 金泰栄国防相がゲーツ米国防長官と電話協議。
 李明博大統領がオバマ大統領と電話協議。オバマは「空母ジョージ・ワシントンを黄海に派遣する」とあらためて述べ、「今後も必要があれば合同軍事演習を一緒にやろう」と約束した。
 李大統領が日英独の各首脳と電話会談。国連安保理議長国である英国のキャメロン首相は中国の役割の重要性を指摘するとともに「北朝鮮の行動は国際社会から指弾されなければならない」とし、安保理で扱う考えを示唆した。しかし李は哨戒艦沈没事件で、中ロが慎重な姿勢をみせ、制裁決議を得られなかった例から、安保理での協議を要請しても「得る利益は少ない」。扱いを英国など安保理メンバーに任せる方針を決めた。
金泰栄国防相は国会答弁で、北朝鮮が砲撃戦をさらに続けた場合、空軍機による爆撃を考えていたことを明らかにした。韓国軍は通常、反撃する場合は「比例原則」に従い、似た兵器でほぼ等しい規模で行ってきた。従来の「交戦規則」では、北朝鮮軍の攻勢に耐えられなくなりつつある実情をうかがわせた。
 韓国の金泰栄国防相は11月24日の国会答弁で、北朝鮮は「後継者の金正恩の指導力を誇示し、後継体制を強化結束させようとしている」「ウラン濃縮公開や砲撃で、韓米を挑発し、住民の離脱や不満を防ぎ、局面を転換しようとする強硬策だ」。また砲撃戦には北朝鮮の金英哲人民武力部偵察総局長や、金格植第4軍団長(前総参謀長)が関与しているとの見方を示した。金格植と金英哲は、2009年11月に黄海で起きた南北艦艇の銃撃戦や、2010年3月の韓国哨戒艦沈没にかかわったとみられている。
 金国防相は、米韓連合軍が北朝鮮に対する情報監視体制のレベルを5段階の「3」から「2」へ引き上げたことを明らかにした。また砲撃した北朝鮮軍の陣地のそばに、射程100キロほどの地対艦ミサイル「シルクワーム」を配備した基地があり、追加挑発に備える必要があるとした。

 金星煥外交通産相は国会答弁で、冷静な対応を求めた中国外務省の声明について「満足がいく結果ではない」。中韓外相会談を利用して、説得を試みる考えを示した。
 中国による北朝鮮説得が世界主要国の趨勢。しかし中国の駐韓大使は韓国外交通産相高官に会い、改めて従来の中国側の立場を説明した。
 韓国統一省報道官は、韓国政府が大韓赤十字社を通じ行っている北朝鮮に対する水害救援を中断すると発表。翌25日に開催予定だった南北赤十字会談は無期延期になった。水害救援のため、食糧支援を話し合う予定であった。

○北朝鮮南部の開城ケソン工業団地では、進出した韓国企業がいまも操業を続けている。しかし韓国政府は24日から開城への民間人の入境を禁止した。緊張が激化している。開城はソウルから約60キロだが、進出企業の経営者や従業員は毎日、南北の軍事境界線を越えて行き来してきた。だが開城にいまも滞在している韓国人従業員は多く、進出企業の韓国側経営者は、取りあえず「通常通りに生産できている」。開城工業団地は金剛山観光などと並ぶ南北経済協力事業として、2004年末に生産が始まった。衣料品などを生産する120社が進出。約4万5千人の労働者が働き、北朝鮮にとっても貴重な外貨獲得源になっている。いまや南北間の「唯一の接点」である。
○砲撃現場に近い仁川市の大型スーパーで薬局を営む経営者は「今日はいつもより客が少なかった。店に来た客はみな、なかば冗談で『戦争になるのでは』と話したが、常備薬を買いそろえるような人はいなかった」
○黒田勝弘は、韓国の「多くの国民は『前線での局地的事件』との受け止め方で、『戦争』を意識する雰囲気ではない」<産経新聞11月25日付>
○北朝鮮専門家は今回の砲撃は米国を対話に応じさせ、6カ国協議で譲歩を引き出すための脅迫である。大統領府の地下壕にある国家危機管理センターにこの日に集まった韓国首脳たちも同様に理解している。日本の外務省のある高官は「彼らが考えていることは誰にもはっきりと分からない。だが6カ国協議復帰が関係している可能性はある。<「ニューズウィーク」ウェブ版>
○民間調査機関が24日に実施した世論調査では、北朝鮮が追加攻撃をした場合の対応として、47.3%が「戦争を辞さないすみやかな対応」を望む。42.4%が「戦闘拡大を避ける防衛的対応」を望んでいる。意見は二分された。
○民間調査会社・リアルメーターの緊急調査によると、大統領の対応が「適切でなかった」とする回答率は 49%で、「適切」の 29%を大幅に上回った。また北朝鮮の軍事的挑発に対する出方では、45%が「戦線を拡大しても強力に軍事対応すべきだ」と答えた。拡大を避けるべしとする声は 33.5%。外交や経済制裁を軸とする主張は16%にとどまった。
○東亜日報は「民間人居住区への無差別砲撃は戦争犯罪に該当する。金正日政権が綿密な計画の基に挑発を強行したとしか考えられない」

○冷戦時代さながらのやり方への逆戻りは、北朝鮮軍上層部の強硬派が復活したことを意味している。彼らは若い正恩に対する影響力をますます強めている。この2年間、穏健派の外務官僚のかわりに、国防委員会や朝鮮人民軍といった軍事部門が好戦的な声明を繰り返し発表してきた。お得意の欧米や韓国非難を外交官ではなく軍人がするのは、これまでほとんどなかったことだ。中長期を見据えた戦略的な北朝鮮の視点は、2012年に米国と韓国、ロシアで大統領選挙があり、中国の胡錦濤国家主席が交代する。つまり6カ国協議に参加する日本以外(日本も)すべての国でトップが変わる可能性がある。北朝鮮にすれば、この状況で交渉をしても無駄と判断するであろう。さらには2012年は、北朝鮮にとって金日成生誕100周年という、非常に大切な年である。<「ニューズウィーク」>

<北朝鮮>北朝鮮の国民の声としてデイリーNKが伝えるところによると、「南朝鮮がわが共和国を狙い挑発を行ったが、将軍様(金正日総書記)の軍隊はこれを許さず、数倍にして報復した。敵の対決策動にも青年大将(金正恩・朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長)が<領導>する革命的武装力で対抗するわれわれにあるのは、勝利だけだ。情勢が複雑になるほど金総書記と正恩氏に仕えてこそ、勝利が保障される」
 北朝鮮の外務省報道官は談話で、今回の砲撃は「韓国軍の軍事演習に対抗した自衛的措置だ」。朝鮮戦争休戦後に「国連軍が一方的に設定」した黄海の南北境界水域の北方境界線NLLの存在が「今回の危険な事態を招いた」と指摘。NLLは認めないとの主張をあらためて強調した。また韓国を「敵」としたが、これまで「逆賊集団」「傀儡一味」などと表現してきた。「敵」と規定したのは今回がはじめてである。
 北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長は24日、平壌で中国の陳竺衛生相を団長とする衛生省代表団と会談し、「両国代表団の頻繁な往来は、朝中友好の強い生命力を示している」と述べた。
 中国中央テレビの連続ドラマ「毛岸英」の上映式が平壌で開かれた。中国の故毛沢東主席の長男で朝鮮戦争に参加して戦死した毛岸英の人生を描いたドラマである。中国代表団は、北朝鮮の金総書記に贈るDVDを康能洙副首相に渡した。康副首相は「朝鮮戦争で毛岸英氏をはじめ、中国の多くの若者が勇敢に戦い、貴重な命をささげたことを、朝鮮人民は決して忘れない」と強調した。
 聯合ニュースによると、李明博大統領が「北南関係改善の雰囲気を踏みにじり、情勢を戦争の状態に追い込んだ」。反民族的、反統一的犯罪を絶対に許すことはできないと非難。「人道事業さえ破綻させ、民族の頭上に災害を浴びせた傀儡逆賊の輩は、より大きな民族の懲罰を免れないだろう」と威嚇した。
 韓国政府が南北赤十字会談を無期延期したことに対し、北朝鮮は「北南対話の扉が閉ざされ、北南関係は破局に直面することになった」と強く非難。<聯合ニュース>
 大韓赤十字社が会談の無期延期を宣布したことを受け、北朝鮮は「これ以上人道主義問題の解決にこだわる積りはない」と主張した。南北離散家族の再会行事定例化をはじめとする人道事業の破綻に、韓国側赤十字が全面的に責任を負わなければならないと強調した。
 延坪島砲撃に関しては、韓国側が北朝鮮領海に数10発の砲射撃行ったことに物理的打撃で対応する軍事的措置を取ったものだとの主張を繰り返した。<聯合ニュース>
 北朝鮮が24日に米軍側に送った通知文で、「事件の発生は米国側にも責任がある」。「軍事挑発を強行すれば躊躇なく、第2次3次の強力な物理的報復打撃を加える」
 在韓国連軍司令部が24日に提案した将官級会談開催を事実上拒否するとともに、28日からの米ジョージ・ワシントンも投入される黄海での米韓合同軍事演習へも警告したとみられる。在韓国連軍司令部に送付された通知文では、3月の韓国哨戒艦沈没のような、北朝鮮に責任を押し付ける「でっち上げ、謀略劇をつくり上げようと、追加的な挑発を企てている」。「米国は南朝鮮の傀儡・李明博政権をかばうのではなく、冒険的な軍事的挑発行為を韓国がこれ以上起こさないよう徹底して統制すべきだ」と主張。
 祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は、韓国政府が国連の対北朝鮮人権決議案に共同提案国として賛成したことを強く非難した。

 北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ムスダン」、射程3千キロの発射実験を数カ月以内に実施しようと準備を進めていることが24日に分かった。北朝鮮は10月10日の軍事パレードで、ムスダンとみられる新型ミサイル8基を登場させたが、これまで発射実験は行っていない。実験によって実戦可能であることを「宣言」すると見られる。ムスダンの射程は、北はカムチャッカ半島の南部から、日本列島のすべて、南はフィリピンの北部まで届く。グアムは圏外である。米軍は岩国基地から全戦闘機を沖縄嘉手納基地に移動させたが、核搭載ムスダンを恐れての退避であろうという見方もある。北朝鮮で核弾頭を搭載するミサイルは、ムスダンが最初になるとみられている。北朝鮮は核・ミサイル開発で、イランと協力関係にあるが、実験結果に関する情報は、両国で共有される。10月10日の軍事パレードには、イランからの代表団が招待され、VIP席で観覧していた。代表団はイランのミサイル開発に携わるSHIG社の幹部ら。SHIGは北朝鮮とのミサイル協力に深くかかわってきた。ムスダンは旧ソ連製の潜水艦発射弾道ミサイル「SSN6」の技術を利用し、陸上発射型として北朝鮮が開発した中距離弾道ミサイル。ミサイル施設がある北朝鮮北東部「舞水端里ムスダンリ」にちなんでの通称。正式な北朝鮮名は不明である。

<米国>この日発行のワシントン・ポスト紙は、カーター元大統領の寄稿を掲載。「8月に北朝鮮を訪れたとき、核放棄と引き換えに、米国と永久的な平和条約を結ぶ用意がある」と聞いた。
国防相会談などで北朝鮮の行動が「綿密に計画された武力挑発」との見解で一致した。北は米専門家に軽水炉建設現場やウラン濃縮施設を公開したが、それでも米政府が対話に応じない場合の対抗策として、砲爆を準備していた可能性が大きい。
 国務省と国防総省は、北朝鮮の延坪島砲撃に言及し、中国の北朝鮮に対する積極的な影響力行使を迫った。
クローリー国務次官補(広報担当)は「戦争ではない。これは一回限りの行動だ」「中国がわれわれとともに、現状と危機の責任がどこにあるのかを明示するよう期待する」「中国の説得に全力で当たる」。中国は「北朝鮮を根本的に違う方向に動かすために、非常に重要」な国家。「北朝鮮が変わらなければならないという明確かつ直接的で、(米中などが)一致したメッセージを送らなくてはならない」。中国の影響力の行使を強調した。国連安全保障会議の場で協議するかどうかについては、最近のウラン濃縮施設公開の事実関係を精査する必要があるとして、「じっくり取り組む」と述べるにとどめた。また数日中に、米中高官協議を行うことを明らかにした。
 マレン米統合参謀本部議長も「北朝鮮に影響力を持つ中国指導部のリーダーシップが絶対に重要だ」。「中国の指導力は極めて重要だ」と、中国の積極的な協力を求めた。また金総書記について、「非常に予測が難しく、危険な男だ」と述べた。
 クリントン米国務長官は、前原誠司外相、韓国の金星煥外交通産相と電話会談。12月上旬にワシントンで日米韓3カ国の外相会談を開くことを打診。
 クリントン国務長官は楊潔箎外相との電話会見を予定していると、ニューヨークタイムズE版が報じた。中国政府に、砲撃事件に対する北朝鮮の責任を認めるように求め、影響力を行使するよう促す方針。
 国防総省は、黄海での米韓合同軍事演習実施を中国に通知したことを明らかにした。
オバマ大統領が砲撃事件で協力を求めるために、中国の胡錦濤国家主席との電話対談の準備を進めていると、ニューヨークタイムズE版が報じた。
 国防総省のラパン副報道官は、米韓合同軍事演習に加わるため、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」を黄海に派遣したことを中国側に伝達。
 ボズワース米北朝鮮担当特別代表は、滞在中の北京で、北による砲撃について「扇動的で無責任な行動を中止し、朝鮮戦争休戦協定と国際的な規範を順守するよう北朝鮮に求める」とする声明を発表。「国際社会のすべてのメンバーが北朝鮮の行動を非難し、非核化に取り組ませるよう求めたい」

<中国>ロシア訪問中の温家宝首相は、モスクワ近郊でメドベージェフ大統領と会談し、朝鮮半島情勢を巡って、「中国はいかなる軍事的な挑発にも反対する」「関係各国は最大限、自制的であるべきだ」「6者協議の再開は朝鮮半島の安定を維持する根本的な道筋だ」。また28日からの黄海での米韓合同軍事演習について「武力によるいかなる挑発にも反対する」と警戒感を露わにした。
 楊外相が、訪韓延期を韓国に通告。26日、27日の訪韓予定であった。
 中国の朝鮮問題専門家は、北の砲撃について「寝耳に水」。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議議長国の中国は、協議再開に向けて調整を進めてきた。しかし「中国は猛獣使いではない」と中国紙が掲載。北朝鮮を追い詰めて、体制が不安定化すれば、大量の難民が国境を接する中国東北部に流入する。中国国内の混乱、さらには便乗しての反乱を中国は最大に警戒している。
 外務省の洪磊副報道官は、砲撃戦に「遺憾」を表明するとともに、「朝鮮半島の平和と安定を損なういかなる行為にも反対する」。南北朝鮮双方が「冷静さと自制を保ち、できるだけ早く、対話によって同様の事件の再発を防ぐことを強く呼び掛ける」。前日よりも強い調子だが、慎重な姿勢を崩していない。
米ボズワース特別代表は、武大偉朝鮮半島問題特別代表と会談。また崔天凱外務次官とも会談。中国外務省は「6カ国協議再開に向け努力することで一致した」と明らかにした。
 中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は、北朝鮮による韓国・延坪島砲撃事件について北「朝鮮と韓国が互いに砲撃し、双方ともに相手側が先に手を出したと主張した」と1面トップで報じ、北朝鮮の砲撃を暗に擁護した。また北「朝鮮と韓国は23日、双方が領有権争いのある島付近で計300発の砲弾を撃ち合った」と説明。北朝鮮による砲撃が先で、それを受けて韓国が反撃したとの記事はあいまいである。最初に韓国が砲撃し着弾した海上は、北朝鮮の主張する北の領海であるという見解であろう。米韓政府の見解も載せながら、「韓国軍は度重なる警告を無視し(北)朝鮮の領海に向けて数10発の砲弾を発射したため、朝鮮人民軍が反撃した」。韓国は「米国との軍事同盟に過度に依存しており、中国との協調が足りなかった」と韓国を批判した。砲撃事件の原因は、米韓の高圧的な対北政策にあると分析し、朝鮮半島の平和を守るためには「北東アジアに残されている冷戦体制を徹底的に排除し、(北)朝鮮の体制維持に対する不安感を取り除くことが何よりも大事だ」と論じた。24日付の中国他紙はほとんどが同じ論調だが、中国メディアを管轄する共産党中央宣伝部による指示があった。インターネット上では、「韓国が先に攻撃したとは考えられない」との書き込みがあふれている。この問題に関心のある市民は、ネットや香港紙の電子版などを通じて、真実を知ったようである。

<国連>在韓国連軍司令部は砲撃をめぐり、北朝鮮軍に将官級会議の開催を呼びかけた。
 今月の国連安保理議長国・英国のライアルグラント国連大使が、5常任理事国や日韓などと非公式に意見交換。ただ、安保理全体で実質的協議に入る見通しはまだたっていない。
 午前、韓国の朴仁国国連大使が国連本部を訪問。安保理議場脇の別室で、英国の次席大使らと砲撃事件について意見交換したが、韓国側から安保理の正式議題にするよう求める依頼はなかった。韓国政府内で慎重に対応を検討しているものとみられる。安保理内での大きな焦点のひとつは、拒否権を持つ中国の対応だ。

<ロシア>安全保障会議のナザロフ副書記は「朝鮮半島の国を分ける境界の近くで演習を行うことは、極めて挑発的だ」と、28日からの米韓合同軍事演習に懸念を表明。
 訪ロ中の温家宝中国首相は、メドベージェフ・ロシア大統領とモスクワ近郊で会談。
 北朝鮮と国境を接するロシア沿岸地方の国境警備隊報道官はイタル・タス通信に対して、露朝「国境は平穏で、任務は通常の計画通りに行われている」と話した。ロシアと北朝鮮の国境線は長さ18キロである。
<2010年12月30日>
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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №5 <2010年10月中旬~11月22日>

2010-12-26 | Weblog
 今回は平壌での10月10日の軍事パレード以降、延坪島砲撃事件の前日、11月22日までの北朝鮮関連の記録です。

10月中旬<北朝鮮>パレードの翌週、北朝鮮の11の地方行政区画の党責任者が揃って、北京を訪問した。北京では、10月10日に平壌に来た周永康政治局常務委員が使節団を歓迎した。

10月21日<韓国>「北朝鮮には、3度目の核実験準備をうかがわせる動きがある」と報じた。<韓国「朝鮮日報」>

○<北朝鮮>軍は極めて大きな影響力を持つようになり、金正日は健康悪化とともに、軍を掌握できなくなっているとの見方がある。「先軍政治は、当然の論理的帰結をもたらした。金正日はもはや、北朝鮮政治で最終的な決定を下す人間ではなくなった」と、元米国務省の北朝鮮分析官だったケネス・キノネスは言う。
○<北朝鮮>立て続けに訪中した金正日は、あきらめたように見える、と中国の政治学者・趙博偉は「中国の下で生きて行く決意を固めた」ようだ。「北朝鮮は中国のプードルになるかもしれない。ただ、世界にとっては、いままでより厄介な狂犬かもしれない」<「ニューズウィーク」Web版 11月30日付>
○<ウィキリークス>金総書記は2008年に脳卒中で倒れて以来、「政策決定能力を失いつつある」

10月26日<北朝鮮>金父子は党と軍の幹部を引き連れ、平壌の東に位置する檜倉郡を訪れた。かつて朝鮮戦争時に、中国人民志願軍が司令部を置いていた地である。彼らは中国軍の戦死者墓を参拝したのだが、毛沢東の長男・毛岸英もここに埋葬されている。「毛岸英物語」は中国でTVドラマ化されたが、そのDVDは金総書記に中国からプレゼントされている。

10月下旬<北朝鮮>中国義勇軍の朝鮮戦争参戦60周年式典。次期中国共産党・総書記の地位を確定的にした習近平中央軍事委副主席が、金総書記と手を携え「侵略に立ち向かった正義の戦争」に勝利した中国朝鮮の「血で固めた友誼」を称賛する演説をした。

11月1日<ロシア>メドベージェフ大統領が北方領土の国後島を訪問した。

11月2日~6日<北朝鮮>米プリチャード元朝鮮半島和平協議担当らが北朝鮮に招待された。寧辺地区で工事中の建築物を見たが、北の担当者は「100メガワット級の軽水炉です。2012年までの完成を目指しています」。プリチャードからこの話しを後に聞いた韓国政府担当者は「ウラン濃縮を狙っているに違いない」と直感した。

11月6日<北朝鮮>朝鮮人民軍次帥の趙明禄が突然の心臓病で死去。朝鮮労働党中央委政治局常務委員、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会第1副委員長、最高人民会議代議員であった。82歳。朝鮮人民軍で、最高司令官の金正日に次ぐナンバー2であった。

11月9日~13日<北朝鮮>米ロスアラモス国立研究所のヘッカー元所長が、招待されて訪朝。

11月11日<韓国>G20出席のためにソウルを訪れたオバマ大統領は「北朝鮮は勘違いしてはならない。韓国の安全への米国の約束は決して揺らぐことはない」と、強い口調で警告し、「北朝鮮は好戦的な行動を中断すべきだ」と促した。オバマは、北朝鮮は挑発行為ではなく、自らの責任を果たすことで尊敬を得られることができると強調。米国は北朝鮮に経済支援を行う準備ができているが、そのためには北朝鮮が義務を果たさなければならないと指摘した。

11月12日 <北朝鮮>寧辺ニョンビョンのウラン濃縮施設を、ヘッカー米スタンフォード大教授・ロスアラモス国立研究所(原子力研究所)元所長が訪れた。教授は、施設は非常に近代的で、核兵器の原料「高濃縮ウラン燃料の生産に転用できる水準にある。『これを見ろ。われわれをみくびるな』というメッセージだと思う」。北朝鮮担当者は同教授に、2000基の遠心分離機が稼動しており、高濃縮ウランは軽水炉原発の燃料の低濃縮ウランを製造していると説明した。ヘッカーは施設を一瞥したとき、「放心状態に陥った」というほどのショックを受けた。大規模な濃縮施設の確認は、今回がはじめてである。2000基が正常に稼働すれば、1年間でウラン型核爆弾を1個か2個つくるために必要な高濃縮ウランを得ることができる。
○<米国>ヘッカー博士から報告を受けたホワイトハウスの担当者らは驚愕した。米国はすでに数年前、北朝鮮がウラン濃縮施設を持っていることを極秘情報として把握はしていた。だが、分析の結果は「少量の高濃縮ウランを抽出できる可能性がある」というものだった。しかし実態は、その分析をはるかに超えていた。だからこそ、一見しただけですべてを理解できるヘッカー博士を招き、あえて見せたのである。<小武定彦「延坪島砲撃 黒幕は金正恩の家庭教師」2011年1月号『文藝春秋』>

11月13日~14日<日本>第22回アジア太平洋経済協力会議で来日した中国の胡錦濤国家主席と民主党の小沢一郎元民主党代表が、20分ほど対談したとされる。「胡錦濤さん、この間、日本に来たとき『会いたい』と言うから、僕は儀礼的な社交辞令で会うのは大嫌いだもんだから『いい』と言ったんだけど『会いたい』というから」会った。中国共産党による1党独裁からの転換を促した。また米政権について、北朝鮮は核を持っていると言っている。「持ってないやつ(イラク)を攻撃して、持っているというやつ(北朝鮮)をそのままにして、話し合いだと。論理矛盾だ」と指摘した。<「ユーストリーム」12月23日>
<日本>小沢・胡会談について、前原誠司外相は「『この間』という言葉の定義だが、私は2008年5月に胡錦濤国家主席が日本を訪れた際のことを指していると思う」。小沢事務所では「今年は胡錦濤に会っていない」としている。<各紙12月29日付>

11月13日<日本>菅首相が中国の胡錦濤国家主席と会談。菅は手元のメモに目を落としながら「心から歓迎する。我が国と中国は一衣帯水の隣国である」。菅は自信なさげに言葉を連ねた。

11月中旬<国連>北朝鮮の国連制裁逃れを主張した専門家パネルの最終報告書を公表予定であった。

11月15日~18日<北朝鮮>米国センチュリー財団のアブラモウィッツ上級研究員ら、安全保障研究者グループが北朝鮮に招かれた。一員のリオン・シーガルに対し「北朝鮮は単なる核爆発装置ではなく、核弾頭を保有している」と述べた。また北朝鮮高官は、米国が敵対関係解消を宣言した2000年の米朝共同コミュニケの内容を尊重すれば、寧辺にある既存の核施設の解体を始める用意があると表明。北朝鮮は、一切の前提条件なしに米朝協議に応じるとする一方、要求を受け入れなければ、寧辺に新たに造られたウラン濃縮施設以外に、無能力化したプルトニウム関連施設の再稼働を進めるとした。
 米政府が金政権を「敵視する意思がないこと」を再確認する見返りに、プルトニウム型の核兵器開発計画の放棄を、北朝鮮は米国に提案した。
 米国が米朝対話を再開しなければミサイル実験を続け、3度目の核実験を実施すると示唆した。
 北朝鮮がすべての核燃料棒数千本を第3国に移送する見返りに、米朝が国交完全正常化を目指すことをうたった2007年10月の6者協議の合意文書の尊重を、米国が改めて表明することを求めた。韓国には、電力発電面での支援の再開を求めた。<「ボイス・オブ・アメリカ」VOA電子版 11月23日付>

11月16日<韓国>韓国領海での定例の砲撃演習を行うと公表。1996年以来、15回目の演習。当然、延坪島などの演習海域が危険水域として、民間船に向けて公表された。

11月18日<米国>米民間機関の科学国際安全保障研究所ISISは、北朝鮮北部寧辺で、2008年に破壊された冷却塔の跡地付近を写した衛星写真を公表し、実験用軽水炉の建設が進んでいると発表した。軽水炉稼働にはウラン濃縮施設が必要で、高濃縮ウランによる核兵器開発につながりかねない。建設は、北朝鮮に核計画放棄を求めた国連安保理決議に違反の可能性があるとした。
<米国>オバマ政権は、金総書記の最大の資金調達組織「39号室」傘下の主要企業に金融制裁を適用すると発表。総書記の資金ルートが封じ込められる恐れが出てきた。「朝鮮労働党39号室」は金総書記に直結する外貨獲得・資金管理機関。同日に米財務省は、傘下の朝鮮大聖銀行と朝鮮大聖貿易総会社を金融制裁の対象に追加した。北朝鮮の政権中枢に経済面で打撃を与え、核問題などで譲歩を引き出す狙いである。39号室は、マツタケや朝鮮人参などの輸出のほか、麻薬密売や通貨偽造、偽造タバコ、核やミサイルなどの兵器取引などで知られる。

<日本>仙谷官房長官が国会答弁で「自衛隊は暴力装置」と発言し、物議をかもす。

11月20日<米国>ヘッカー教授は、北朝鮮でみたウラン濃縮施設の事実を公表。

11月21日<北朝鮮>金総書記と正恩らが、砲撃地点に近い黄海南道の軍部隊を訪れ、野砲の性能や韓国軍の過去の砲撃訓練について、黄海周辺地域を統括する朝鮮人民軍第4軍団長の金格植大将から説明を受けた。このことから韓国側は、延坪島への「砲撃は、金総書記父子が主導した計画的な挑発であることは明らかである」<韓国紙「中央日報」11月25日付>

11月<米国>下院外交委員会の共和党筆頭委員イリアナ・ロスレイティネン議員は、ウラン濃縮の事実にショックを受け「北朝鮮に手を差し伸べるようなオバマ政権の政策は失敗であったことを証明した」
超党派の議会調査局で長年、朝鮮問題を担当したラリー・ニクシュも「北朝鮮がウラン濃縮をひそかに進めているのは米国でも探知していた<注:収集情報量は乏しかったと思われる。米国防長官ロバート・ゲーツ(元CIA長官)はウラン濃縮の事実を「知らなかった」と述べている>が、これほど進展していたということは、オバマ政権にとり大きなショックで、政策の全面見直しにもつながる」
 オバマ政権はこれまで、非核化に向けた北朝鮮側の取り組みを待つという意味の「戦略的忍耐」を政策標語のひとつに掲げてきたが、この忍耐がかえって北朝鮮に核兵器開発のための時間稼ぎを許してしまったようだ、という米国内の評価がある。

11月21日<韓国>アメリカのボズワース特別代表(米政府の北朝鮮問題担当)は21日夜にソウルに到着。北のウラン濃縮施設が確認されたことで、急きょ韓国を訪れ、翌朝にソウル市内のホテルで朝食会を、6カ国会議韓国首席代表の魏聖洛朝鮮半島平和交渉本部長と行った。魏はボズワース同様、2日間の日程で中国を訪れ、武大偉・朝鮮半島問題特別代表と6カ国協議再開などに関する立場を調整する。


「砲撃事件前日」11月22日
<米国>朝。国防総省ビルに、日米の外交・安保当局者が集まった。同盟強化作業の一環として、アジア情勢の分析を持ちより、認識を共有するための会合で、今回が3回目である。すでに中国や朝鮮半島情勢については分析していたが、この日は北朝鮮とロシアについても取り上げた。
<韓国>ボズワースは魏との会談の直後、外交通商部庁舎で金星煥外交通産相とも会談。急派されたボズワース特別代表は「北朝鮮によるあらたな挑発行為であり、たいへん失望している」。代表は同日午後に東京に向かった。
<日本>午後に東京入りしたボズワースは、前原外務大臣らと会談。ボズワースは翌23日午後に北京を訪れるが、北の砲撃開始の直前に北京に到着することになる。
<米国>米国務省の広報担当クローリー次官補は定例記者会見で、北朝鮮のウラン濃縮施設公開について、これが事実なら国際義務に反するものだと批判し「悪行に見返りは与えない」。しかし北のウラン濃縮の動きにも、既存の対北朝鮮政策基調の維持の姿勢をあらためて示した。「今回のことを理由に、対北朝鮮政策が失敗したとする評価は受け入れられない」と述べた。
 クローリーは「北朝鮮は完全で検証可能、後戻りできない非核化措置をとるべきだ」と重ねて強調した。また「対話のための対話など信じない。北朝鮮が非核化における進展をみせることが根本である」
<米国>6カ国協議の前米国首席代表のクリストファー・ヒルは「協議中、北はウランの存在を完全に否定し、米側をだましていた。今後はウランが最大の課題となる」
<米国>夕刻。オバマ政権のソンキム6カ国協議担当特使は、ワシントンでのセミナーで、北朝鮮のウラン濃縮による新たな核武装の危機に対し、オバマ政権としての「軍事オプションの回避」を繰り返し強調した。
<米国>下院外交委のロスレイティネン議員は、オバマ政権が北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定することを求め、圧力強化策を提案した。
<北朝鮮>ウェブサイト「わが民族同士」は、明日13時から延坪島近辺で予定されている韓国軍の護国訓練について、「朝鮮半島の平和と北南関係改善を望むすべての民族の志向と念願に対する悪辣な挑戦であり、受け入れられない反民族的な犯罪行為である。われわれに対する南朝鮮当局の敵対感と侵略の危険の境界線を超えてから長く、傀儡好戦狂の分別のない対決戦争策動が、朝鮮半島で任意に核戦争が起こりかねないことを示している」と威嚇した。
 金総書記は3男の正恩とともにこの日も、砲撃事件の起きた場所に近い、黄海南道の養魚場を視察したという情報がある。砲撃の前日のこの日、朝鮮人民軍第4軍団を訪問し、軍団長の金格植大将に会い、士気を再度鼓舞した可能性がある。
<日本>公明党の山口那津男代表が、ソウルで李明博大統領と会談。砲撃後の24日、与野党党首会談で山口は菅首相に「日米韓の連携が非常に大切。中国との関係も重視すべきだ」と助言した。
<中国>中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表は、韓国の魏聖洛朝鮮半島平和交渉本部長との会談で、ウラン濃縮について「我々も事実関係を確認する必要がある」と述べるに留まった。
<2010年12月26日>
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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №4 <2010年1月~10月10日>

2010-12-23 | Weblog
 コンパクトな文を心がけようといつも思うのですが、意に反して毎度、長くなってしまいます。前に記した11月23日の砲撃事件の1日の記載も、「gooブログ」の字数制限を超過してしまい、2分割になってしまいました。
 今回の北朝鮮関係記事「今年1月から砲撃事件前日の11月22日まで」も、延々と長文になってしまい2分割します。これからの連載予定は以下の通りです

 本日12月22日掲載「2010年1月~10月10日の平壌軍事パレードまで」
 12月26日掲載予定「2010年10月11日以降、砲撃事件前日の11月22日まで」
 
 その後は、関連本を紹介しようと思っています。
  平井久志著『なぜ北朝鮮は孤立するのか』2010年7月刊 新潮選書
  五味洋治著『中国は北朝鮮を止められるか』2010年6月刊 晩聲社 など

 次に、11月24日以降の北朝鮮と世界の動きを綴ろうかと思っています。果たして、約束通りに続くかどうか、自信は乏しいのですが。しかし12月21日までのリチャードソン米ニューメキシコ州知事の訪朝までは継続すべきか? 迷っています。以下、今日の本文です。

1月<北朝鮮>延坪島など黄海5島の占領を想定した奇襲上陸作戦の訓練実施を、金正日総書記が指示した。金総書記は、三男の正恩や軍高官らの幹部を集め、黄海「五島の攻撃を準備しろ。地図から消える方法を考えろ」と指示。これを受けて、朝鮮人民軍は、特殊部隊による上陸訓練などを準備した。訓練を総書記と正恩は視察。
<北朝鮮>黄海の北朝鮮側水域で、約350発の砲撃訓練を開始。
<北朝鮮>「米朝平和協定」の主張を本格的に展開しはじめた。

1月28日<韓国>李大統領は英BBCとの会見で、核問題を解決する助けとなるなら、金正日総書記と年内に会うことが可能だ、と話した。

2月1日<北朝鮮>党機関紙「労働新聞」は、「われわれの勝利を堅く信じる」と題して、金総書記の言葉を掲載した。「私は、わが人民がまだトウモロコシ飯を食べていることに一番心が痛む。今、私がやらねばならないことは世の中で最も立派なわが人民に白米を食べさせ、麦でつくったパンや麺ククスを思いっきり食べさせることだ。われわれみんなが首領(故金日成首席)の前で確認した誓いを守り、わが人民を、トウモロコシ飯を知らない人民として世の中に推し立てよう」。前年末の通貨交換とデノミ政策の失敗で国民の反発が高まっているため、最高指導者が住民の食糧問題に気を配っていることを示し、不満をなだめようという意図からの発言であろうとされている。しかし国家人民の最高責任者として、責務を果たせていないことに対する自責の念を、いくらかは感じているはずだと、私は思います。

2月3日<韓国>訪韓した米キャンベル国務次官補は、在韓米大使館で行われた脱北者知識人や北朝鮮専門家との非公開の懇談会で、金総書記の健康状態について「すべての医学的情報を総合すると、余命は3年程度と考える」と述べた。<韓国「朝鮮日報」2010年3月17日付>

2月8日<北朝鮮>金総書記が訪朝した王家瑞中国共産党対外連絡部長と会談。

2月15日<北朝鮮>中国の大型銀行数行と複数の多国籍企業が、北朝鮮の大豊国際投資グループとの投資交渉を終えた。全体の投資規模は100億ドル以上で、3月中旬に平壌の国家開発銀行で調印式を行う模様。<韓国「聯合ニュース」2月15日付>

2月17日<北朝鮮>自由北朝鮮放送(韓国)によると、北朝鮮当局が全国の「ジョンウン」を名乗る国民に対し、改名を強要したと報じた。金正日が後継者に決まる際にも、同じように「ジョンイル」名の国民に対し、強制改名が行われた。

2月22日<ウィキリークス>ソウル駐在のアメリカ大使のキャサリン・スティーブンスが「北朝鮮が内部崩壊し、南北が統一した際の対応について韓国と協議した」。統一後の朝鮮半島がアメリカと同盟関係になった場合、中国が持つ懸念に対しては、経済的な側面で対応すればよいと韓国政府の6カ国協議代表の千英宇外交通商部第2次官は考えている、とスティーブンスはアメリカ本国に報告した。
 また経済的に崩壊している北朝鮮は、金正日の死後、2年から3年の間に政治的にも崩壊する状況にあるが、中国はその経済的影響力を使って、北朝鮮政府の政策を変える意思がまったくなく、北朝鮮側もそれを知っている。中国は北朝鮮の非核化を望んでいるが、現状に決して不満なわけではなく、中国が北朝鮮を崩壊の淵に追い込まない限り、北朝鮮は実質的な非核化に踏み出さないだろう。さらに6カ国協議の中国代表、武大偉について酷評する。誰に対しても大声で「中国は世界の大国であり、もう途上国ではなく、経済発展がそのことを証明している」と、まくしたてる。しかし千英宇が言うのには、外交部のリベラル派の中国外交官は、朝鮮半島が韓国の主導によって、再統一されるべきだと考えている。北朝鮮はもはや、中国にとって緩衝地帯の価値がなくなったという、新たな現実に向き合う準備ができている。2006年の核実験以来、中国指導部の間で摩擦を引き起こしている議論は、北朝鮮が崩壊したときに、中国が取るべき行動のシナリオだ。<本年11月30日付ワシントン・ポスト紙。ウィキリークス情報。参考:From the Newsroom by Newsweek>
 これらの情報は、韓国大統領府・青瓦台に潜入している北朝鮮のスパイによって、本国北朝鮮に報告された。

<ウィキリークス>半島に誕生する統一国家が、中国に敵対しない無害な同盟国として、アメリカ側に付くことを、中国は容認するであろう。しかし私見だが、この中国外交官の構想を、強硬な中国の軍部が容認するであろうか? 疑問は残る。
中国高官が北朝鮮のウラン濃縮は「初期段階に過ぎない」との見方を伝えていたために、米中とも開発の進展を見過ごしていたことが、明らかになった。
 中国は北朝鮮の核問題をめぐり、米中朝3カ国協議を米国に提案していた。
 中国は、北朝鮮による日本人拉致問題に固執する日本の姿勢に懸念を示していた。
 朝鮮による民主党幹部への接近を受け、米韓高官が日米韓で連携する必要性を再確認していた。私見だが、大阪にある北朝鮮と密接な某大学と、民主党議員たちとの癒着の問題が、以前から取りざたされていた。

 <ウィキリークス>中国の何亜非外務次官が北京の米大使館当局者に対し、日本を国連安保理事会の常任理事国とすることへの反対を伝えた。現在の5カ国が10カ国になれば、米中双方にとって「面倒なことになる」。「中国国民は日本を常任理事国に迎えるのは困難だろう」と述べた。米大使館当局者は「国連予算の第2の拠出国である日本を含めずに安保理拡大の構想を進めるのは困難だ」と述べた。<2009年4月30日付 米外交公電>

 <ウィキリークス>米公電によると、イランは北朝鮮から中距離弾道ミサイル19基を入手。イランはこれにより初めて、ベルリンを含めた西欧諸国の首都及びモスクワを攻撃しうる軍事力を手に入れた、と米政府が認識している事実が明らかになった。ということは、北朝鮮がハイレベルのミサイルを開発し、多数を所持していることは自明である。<2010年2月24日、ロシア高官と協議した米外交官の公電>
 サウジアラビアのアブドラ国王はイランの核開発を阻むために、繰り返し米国に対してイラン空爆を要請した。国王は「蛇の頭を切り落とす必要がある」とのメッセージを送った。
クリントン国務長官は、国連事務総長の潘基文の対イラン観を探るよう指示を出した。

○中国は韓国の最大の貿易国であり、最大の対外直接投資先でもある。中国にとって賢明な選択は、北朝鮮を放置して自壊させ、東西ドイツ統一と同じように、北朝鮮を韓国に吸収させることである。そして新「統一朝鮮」をアメリカの庇護の外に誘い出し、中立化させればよい。<newsweek japan>

2月<中国>劉暁波(今年のノーベル平和賞の受賞者)の懲役11年の実刑判決が確定。劉は共産党一党独裁体制の廃止を呼び掛けた「〇八憲章」の起草者。2008年12月10日の世界人権宣言採択60周年記念日に「〇八憲章」はネット上で発表された。劉は発表の寸前に、国家政権転覆扇動罪で拘束され、2009年12月に起訴されていた。本年12月10日、ノルウェー・オスロでのノーベル平和賞の受賞式典に、劉も代理の家族も、出席できなかった。受賞者の家族さえ出席を許されないため、受取人がいなかった授賞式は1935年以来、実に75年ぶりである。

2月<北朝鮮>黄海と日本海側で「海上射撃区域」を設定。

3月24日<韓国>国家安保戦略研究所の南成旭所長は、金総書記が糖尿病と高血圧を患っており、2週間に1度、人工透析を受けているとみられると報告した。そして「総書記の爪が白く見えるのは慢性腎不全が原因のようだ」

3月26日<韓国>韓国海軍の哨戒艦「天安」が黄海で沈没。戦死者46名。北朝鮮の攻撃によるものと考えられる。北朝鮮は関与を否定しながらも、米朝平和協定の必要性を主張している。

4月26日<北朝鮮>李容哲党組織指導部第1副部長が心臓麻痺で死亡。

5月3日~7日<中国>金総書記が非公式に中国を訪れ、胡錦濤国家主席や温家宝首相と5日6日に対談。4年4カ月ぶりの訪中である。

5月12日<北朝鮮>「労働新聞」が、核融合反応に成功したと報じた。

5月13日<北朝鮮>国防委員会は高齢を理由に、金鎰を国防委員・人民武力部第1副部長から解任。

5月20日<韓国>韓国以外の専門家も加わった民軍合同調査団は、哨戒艦天安の沈没の原因は、決定的物証などから総合的に判断し、哨戒艦は北朝鮮の小型潜水艇から発射された魚雷によって破壊されたものであると結論付けた。

5月<韓国>李大統領は中国の温家宝首相と会談。30分の予定を100分に延長。李は資料を手に自ら説得したが結局、国連安保理での制裁決議案を検討することに応じてもらえなかった。

5月<国連>北朝鮮の国連制裁逃れを主張した専門家パネルの最終報告書について、中国は「哨戒艦事件後に緊迫している朝鮮半島情勢の好転に役立たない」と、公表に反対した。

5月24日<韓国>李大統領は哨戒艦沈没の調査結果を受けた国民向けの談話で、「北朝鮮は謝罪し、事件関係者を即刻処罰すべきだ。われわれの究極的目標は軍事対決ではなく、民族の共栄と平和統一だ」。開城工業団地を除く南北交易・交流の全面中断を表明。

5月25日<北朝鮮>祖国平和統一委員会は韓国の李政権との「あらゆる関係を断絶する」。通信の遮断など、8項目の措置を発表した。

6月2日<北朝鮮>李済剛党組織指導部第1副部長が交通事故で死去。80歳だが、自ら自動車を運転していたとされる。

6月4日<韓国>哨戒艦沈没事件について、国連安保理に対応を要請。米国などは、北朝鮮を名指しで非難する決議や議長声明を模索した。
<国連>常任理事国で拒否権を持つ中国は「北朝鮮を追いつめれば、暴発もありえる。朝鮮半島が制御不能になったら、誰が責任を取るのか」と激しく抵抗した。

6月7日<北朝鮮>最高人民会議第12期第3回会議開催。総書記の義弟の張成沢国防委員を国防委副委員長に選出した。金英逸首相と6閣僚を解任し、崔永林を後任首相に選出した。

7月9日<国連>ようやく採決した韓国艦沈没事件の議長声明は、名指しを避けたうえ、中国の主張で「北朝鮮は沈没に無関係だと主張している」との一文まで入れた、非常に弱い内容になってしまった。韓国はこれ以降、安保理を信用しない。

7月<中国>最初、米空母の黄海入りが取りざたされたが、洪磊外務省副報道局長は「断固として反対する」と述べた。
<米韓>米韓は黄海での合同軍事演習を取りやめ、日本海での合同演習を実施。空母ジョージ・ワシントンも参加。
<北朝鮮>国防委員会は合同軍事演習に対し、北朝鮮は「強力な核抑止力で堂々と立ち向かう」とする声明を発表。
<米国>国防総省で日米の外交・安全保障当局者による秘密会議。第2回目の今回、とりわけ白熱したのが、北朝鮮問題だった。北の今後について、
 ①内部崩壊する。
 ②権力闘争やクーデターが起き、混乱する。
 ③円滑な権力の継承に成功する。
 北朝鮮の3つのシナリオを分析し、米韓と日米の連携策を探った。日米が半島情勢についてここまで本格的な 議論を交わすのは、昨年秋の民主党政権への交代後、はじめてである。
 朝鮮半島の有事に当たって、韓国からの邦人救出マニュアルはすでに作成されているが、内容は極秘である。まずは民間機や自衛隊機で対応し、「それが難しいときには、最終的に米軍に頼らざるを得ない」(日本政府の安保当局者)。日米ではこのような事態についても話し合われている。米安保当局者は「韓国の援軍に駆けつけるほか、港湾を確保して韓国から民間人を救出することも在沖海兵隊の役目だ」と語った。

8月9日<北朝鮮>軍事演習を行い、黄海海上の韓国艦艇に向けて130発余りの砲撃を行った。直撃被弾はなし。また北朝鮮の偵察機が延坪島の周辺に飛来した。

8月24日<北朝鮮>カーター元大統領は、拘束されていた米国人の釈放のために北朝鮮を訪れた。その折に「核放棄と引き換えに、米国と永久的な平和条約を結ぶ用意がある」とカーターは聞かされた。<11月24日付 ワシントン・ポスト紙>

8月26日~30日<北朝鮮>金総書記は、カーター元米国大統領の訪問をすっぽかし、中国北東部を訪問。中国の胡錦濤国家主席が北京から出向いて会談。三男の金ジョンウンも同行した。中国は息子が北朝鮮の次期指導者になることを了承した。
 正日の三男の名、漢字は不明で「ジョンウン」と日本のメディアは表示を統一していた。胡との会談の後、9月28日より中国は実名を「金正銀」と報じ、はじめて実名が判明した。ところが北朝鮮はそれをひるがえし、10月1日に「金正恩」だと公表した。「ここが、興味深い。中国政府は北に泥を塗られたのである」(軍事評論家・佐藤守)。私見だが、ジョンウンは、正雲―正銀―正恩と改名を繰り返したのでないか。いずれの表記も、読みは「ジョンウン」である。中国が<正銀>と公表した直後に<正恩>に変更した可能性が強いと思う。韓国メディアによると、「金正雲から金正銀に改名した」との報道がある<2009年1月8日付>

8月<北朝鮮>延坪島付近の水域上に、計約110発の砲撃を行った。
 1953年に在韓国連軍が設定した「北方限界線」NLLであるが、1999年9月に黄海上の限界線南側で起きた南北銃撃戦で、北朝鮮は死者30名以上。北朝鮮はNLLを無効だとし、より南方海域に「海上軍事境界線」を宣言した。
 2002年6月にも南北警備艇による銃撃戦で、韓国兵5名、北朝鮮は13名が死亡したと推定されている。

8月<北朝鮮>中国政府に勤務する金正男の側近が話したところによると、5月に中国を訪れた金正日に、長男の正男は「ジョンウンが、韓国の哨戒艦事件を起こすのに、なぜ黙認したのか」。また「ジョンウンが無理に貨幣改革デノミを推進して失敗し、これを挽回するために天安沈没事件を起こした。ジョンウンの顔が知られる前に起きたことなのに、なぜ黙認するのか」と抗議した。<韓国放送公社11月14日報道>金正男の側近は「中国と北の高位層には、正男を支持する勢力がまだ多い」と語った。
 通貨交換とデノミネーションの断行は、2009年11月30日に突然発表され実施されたが、北朝鮮人民に過酷な犠牲を強いた。成果は大失敗で、建国以来はじめてといわれるほどの反発を人民たちから受けたという。

8月<韓国>韓国の情報機関「国家情報院」の元世勲院長は、北朝鮮の延坪島砲撃にからみ、8月に北朝鮮が同島や周辺を攻撃する兆候をつかんでいたと、国会情報委員会で報告した。韓国側は北朝鮮の無線を傍受し、韓国が黄海の南北境界線とする北方限界線NLL近くの延坪島など5島周辺を攻撃する計画を8月に確認していたという。<12月1日韓国国会報告>
<韓国>韓国政府は南北統一に備えた費用をまかなう「統一税」創設構想を発表。ソウル外交筋は「健康不安を抱える金総書記が突然死去し、北朝鮮が混乱に陥る急変事態を念頭に置いている」
 北朝鮮はこの構想発表に対し、「われわれの体制を崩壊させる吸収統一を狙うものだ」と警戒を強めた。<朝鮮労働党機関紙「労働新聞」>

9月7日<日本>11:15 尖閣諸島釣魚島沖、中国漁船体当たり事件。

9月15日<北朝鮮>鉄道転覆事故。威境北道清津の製鋼所と茂山鉱山を結ぶ貨物列車が転覆した。<共同>

9月18日<北朝鮮>列車転覆事故があった。平壌から豆満江に向かう列車が被害を受け、ロシアの鉄道関係者も乗車しており、17人ほどが死傷。枕木が約5メートルにわたり抜き取られていた。何者かが故意に起こしたとみられる。<共同>


9月19日<日本>国連総会に出席を目前にした菅首相に対し中国は「中国と戦争する気か。このままではアジア太平洋経済協力会議APECを開けなくなる。すぐに船長を返せ」。中国の強硬姿勢に菅は冷静さを失い、周囲に怒声を浴びせた。取り乱した菅の姿に周囲は唖然とした。中国はさらに対日レベルを引き上げ、国連総会時の日中首脳会談の見送りを表明。11月に横浜で開催のAPECに、中国首脳が欠席するという菅にとって最悪の事態をちらつかせた。政府の判断は、船長の釈放に傾いた。

9月25日<日本>那覇地検が処分保留で、中国船船長を釈放。

9月27日<北朝鮮>李英鎬軍参謀総長が、元帥に次ぐ階級の次師匠に昇進。翌日開催の党会議で、党の最高機関である政治局の常務委員、さらに中央軍事委副委員長に選ばれた。新設のこのポストに座ったのは、ジョンウンと李のふたりだけである。李が総参謀長に就いたのは、2009年2月だが以降、旧勢力を押し出す形で、50~60代中心の「新軍部」が急速に台頭し、北の強硬路線が鮮明になった。
 朝鮮中央放送によると、10月10日付けで金ジョンウンら6人を、朝鮮人民軍の大将に昇進させる命令を発した。

9月28日<北朝鮮>金ジョンウンは、朝鮮労働党代表者会において、党中央委員に選出された。同日、ジョンウンは党中央委員会総会で、党中央軍事委員会副委員長に選出された。中国「新華社通信」は、はじめてジョンウンに「金正銀」の漢字表記を使用した。
 ところで、健在なはずの総書記の二男、金正哲の姿が見えない。後の軍事パレードにも現れない。正恩がこけた場合のスペア、予備に取ってあるという見方もある。長男の正男とともに、気になる3兄弟である。

10月1日<北朝鮮>朝鮮中央通信は、「ジョンウン」の漢字表記は「正恩」とすると発表。

10月<北朝鮮>軍事境界線付近で銃弾2発を韓国側に向けて撃った。

10月9日<中国>金正男はテレビ朝日とのインタヴューで「個人的には3代世襲には反対します。ですが然るべき内部的要因があったなら、それに従うべきだと思います」。三男の正恩氏が後継者という報道は本当か?という記者の質問に、「私もニュースでそう聞いた。事実だと思う」。「父が正恩を寵愛している。いかなる決断も父がする。父が決断すれば従わなければならない」「後継者には興味はない。個人的にこの問題に興味がない。政治には興味がない」。そして正恩について「弟には北朝鮮人民のために頑張ってほしい」
 なお余談だが、正男は語学の達人であることに間違いはないようだ。英語とフランス語を流暢に話し、ロシア語と中国語、そして日本語は会話に不自由しないレベルかそれ以上である。またコンピュータに強いといわれている。政治力についての資質は不明だが、優秀な人物だと言われている。シンパも多い。

10月10日<北朝鮮>平壌で朝鮮労働党創建65周年を祝う軍事パレードが行われ、金正恩がはじめて公式の場に登場した。彼の隣には、中国共産党の周永康政治局常務委員がいた。周は、中国共産党ナンバー9の有力者である。
 正恩の偉大性宣伝で言われているのが、「7カ国語ができる天才。3歳で銃を取り、百発百中の腕前を持つ、砲術の天才」。延坪島砲撃については「砲術の天才の砲撃作戦が大成果を上げた」。語学は英独仏伊の4か国語に精通し、日中ロの3か国語も習得中という。
 実際に延坪島砲撃を立案、総指揮したのは、李英鎬軍参謀総長である。金総書記と同じ68歳。陸海空を束ねる軍制服組のトップ。パレード式典では雛段で、金父子の間にずっと立ち、笑みを絶やさず、その威勢ぶりを見せつけた。李は砲術の専門家で、執務室には関連書が山積みされており、金日成軍事総合大学(5年制)で正恩の砲術論文作成を指導したといわれている。
 ところで2012年は北朝鮮にとって大切な年、金日成生誕100周年である。「強盛大国の大門を開ける」年と北は位置づけており、金正恩への権力継承作業が大きな節目を迎えるとみられている。
<2010年12月23日>
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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №3 <11月23日の記録>後編

2010-12-20 | Weblog
 砲撃事件の起きた11月23日の記録、前日に引き続き、後編を掲載します。

<韓国>砲撃後。韓国聯合ニュースによると、韓国軍は北朝鮮の変革を求め、韓国側の優越性を宣伝するビラ約40万枚を気球に乗せ、北へ飛ばし散布した。盧武鉉前大統領時代からは、北へのビラ散布は中止していた。
<米国>国務省トナー副報道官代行は「北朝鮮の挑発的な行動に、関連当事者は皆ぼうぜんとしている」。「明白な朝鮮戦争休戦協定違反だ」と指摘。
<米国>ゲーツ国防長官は韓国の金国防相と電話会談。北朝鮮の「攻撃を強く非難する」と伝え、朝鮮戦争休戦協定に違反したとの認識を示した。
<国連>国連の潘基文事務総長(元韓国外相)は北朝鮮の砲撃で半島での緊張が高まっていることに深刻な懸念を示し「北朝鮮の攻撃を糾弾し、即時の自制を促す」
<中国>米ボズワース特別代表は東京から午後、北京に到着し、載秉国国務委員(外交政策統括)、武大偉特別代表(6カ国協議議長)、崔天凱外務次官と会談した。ボズワースは、北朝鮮の核問題を話し合う6カ国協議の枠組みは、いまも有効であるとし、議長国の中国が北朝鮮への影響力を使って、砲撃戦の自制を促すことに期待を示した。またウラン濃縮の動きについて「国連安保理の決議違反であり、安保理への提起を検討する」と語り、「北朝鮮の砲撃を強く非難する」と述べた。
<中国>中国外務省の洪磊副報道局長は「北南双方が、平和に貢献するためにさらに行動すべきだ」。「関係双方が朝鮮半島の平和と安定に有利になるように行動することを望む」「半島の非核化を進め、半島と北東アジアの平和と安定を守る」「目下の急務は6者協議を出来る限り早く再開することだ」と強調した。南北双方に自制を求める姿勢を示した。私見だが、この中国の甘い発言は、弟分の北朝鮮がすでに核を持ち、大胆になった隣国を中国が押さえつけることの困難から来ているのであろうか。

 余談であるが、金総書記の長男・金正男は中国国内にずっと滞在している。北朝鮮からは正男を暗殺するための秘密部隊が潜入しており、中国は北朝鮮に対し、暗殺部隊を送り込んだことに強く抗議しているという情報がある。暗殺を指示したのは正恩サイドといわれている。2009年6月に中国マカオ滞在中の正男を暗殺しようとした北の特殊部隊が、中国当局に発覚した。その後、父の金正日は中国の胡錦濤に正男の安全を依頼し胡は確約したが、いまも暗殺のための秘密工作員は、中国に潜伏しているという。
 また私見の推測で言えば、習近平政権がはじまる2012年の直前の来年中には、中国は北朝鮮現政権を平和裏に転覆させ、金正男をトップに据えて傀儡政権を打ちたてようとしているのではないか。そのように思えて仕方がない。金王朝が崩壊し、膨大な難民が中国に押し寄せる前に実行したい計画であろう。2012年は北朝鮮にとって、金日成生誕100周年の記念すべき年である。
 あくまで私見です。金正男は東京ディズニーランド訪問で有名だが、かなり優秀な人物と思われる。彼のシンパは多数が粛清されたという情報もあるが、北朝鮮国内には正恩ではなく、正男を推すグループが国内指導部若手には多かったともいわれている。韓国大統領の諮問機関・民主平和統一諮問会議の李基沢首席副委員長はベルリンで「北朝鮮の金正日総書記の長男正男が、北の体制崩壊の可能性を念頭に置いているとの話しを聞いた」ことを明らかにした。また正男は、北朝鮮は間違いなく「滅びる。長続きすると思うか?」と話した。<聯合ニュース11月26日>

<中国>夜。武大偉・朝鮮半島問題特別代表が「南北朝鮮はともに抑制的な態度を維持して、これ以上緊張をあおるべきではない」と慎重な発言。砲撃戦について「きわめて残念に思っている」と述べ、北朝鮮への批判をにじませた。中国が北朝鮮の行為に強い遺憾と懸念と受け止められる発言をするのは異例<朝日新聞 11月24日付>
中国外務省は、26日から予定していた楊潔箎外相の韓国訪問を急きょ中止。「訪韓すれば、どう言われるかわからない。中国に利点は少ない」
<中国>中国中央テレビは夜のニュースで砲撃戦を伝える際、「韓国の軍事的挑発に対する反撃」とする北朝鮮側の声明を、韓国側の発表内容より先に読み上げるなど、北朝鮮への配慮を示した。
中国外務省の洪磊報道官は「いま最も重要なのは、できるだけ早く6カ国協議を再開することで、関係諸国と一緒に努力したい」
<ロシア>下院のコサチョフ外交委員長は、砲撃を開始したのは「北朝鮮側である可能性が大きい」。北朝鮮と伝統的に友好関係を保ってきたロシアの有力議員が、南北対立で北朝鮮の責任を、名指しで指摘するのは異例。
<米国>バートン大統領副報道官は記者団に対し、オバマ大統領は韓国防衛のため米政府は「必要なすべてのことを行う」と語った。大統領は「中国は北朝鮮に対し、『順守すべき国際的ルールがある』ということを明白にすべきだ」とした。バートンは砲撃事件に関して、移動中の大統領専用機内で記者団に「言語道断の行動だ」と厳しく非難するとともに、「オバマ大統領は激怒している。北朝鮮は休戦協定と国際法を順守していないとの認識を持っている」
<米国>国防総省のモレル報道官は、北朝鮮の意図について「分からない。北朝鮮政府のやることは予測不可能だ」と明言を避けた。
<米国>ゲーツ国防長官は、韓国の金泰栄国防相と電話会談。
<米国>オバマ大統領は韓国の李大統領と電話で協議。
<日本>オーストラリア訪問中の前原外相は「極めて遺憾だ」と北朝鮮を非難した。
<米国>米国営ボイス・オブ・アメリカVOAの23日報道。15~18日に平壌を訪れた米国の安全保障問題の専門家、リオ・シーガルは北朝鮮から「2000年に発表された米朝共同コミュニケを米国が尊重すれば、核開発を中止できる。寧辺にある既存の核施設の解体をはじめる準備がある」というメッセージを、訪朝時に受け取っていた。シーガルはこのメッセージを、米国務省と韓国日本の関係当局に知らせたという。当時、北朝鮮当局者は「前提条件なしで、米国との交渉に臨む準備ができている」と強調したという。また「米国が交渉の要求に応じなければ、ウラン濃縮のほか無能力化したプルトニウム施設の再稼働も進める」と脅したという。シーガルは北の複数の当局者から「核装置だけでなく核弾道を保有している」とも聞かされた。
○「米朝共同コミュニケ」は、両国が2000年10月に発表した共同声明で、敵対関係の解消、経済協力、朝鮮戦争休戦協定の平和体制への転換、ミサイル問題解決などに向けて努力すると明記している。

<韓国>韓国統一省は、25日に予定されていた南北赤十字協議の無期延期を発表した。
<日本>仙谷官房長官は「独自に北朝鮮を制裁できる効果的なものがあれば検討していく」と語り、日本政府として独自制裁も検討する考えも示した。
<米国>ホワイトハウスで単独インタビューしたABCのバーバラ・ウォルターズにオバマ大統領は、中国は「北朝鮮に対し、従うべき国際ルールがあることを、はっきり示さねばならない」と答えた。
<韓国>金星煥外交通産相は、武藤正敏駐韓日本大使に次ぎ、中国とロシアの駐韓大使も同省に呼んだ。北朝鮮の砲撃が「韓国に対する明白な武力挑発」とする韓国の立場を説明した。しかし米国の駐韓大使を呼ばなかった件について「米韓は緊密な連携を取っている」からと強調した。
<韓国>大統領官邸の地下にある要塞は「地下バンカー」と呼ばれているが、行政部要員を集めての当夜の会議に出席したメンバーの半数以上が、徴兵免除者であった。旧KCIA、いまのNICの在籍者も兵役免除の対象である。多くの市民は後にこの事実を知り、エリートたちの「徴兵免除は納得できない」と言っている。
<中国>砲撃戦で問題になった海上の線、排他的経済水域EEZだが、国際世論からも、黄海の中国と韓国の間の線引きは、両国の中心線とみなす意識に傾斜しつつある。あいまいな形で支配海域を押し広げたい中国だが、この事件を機にこれまでの強硬路線をとりあえず、止めざるを得なくなったようだ。尖閣諸島についても、日米同盟が機能している限り、EEZは国際的な中間線を認めざるを得ない。中国にとってこの事件は、不本意な結果を生んでしまったことになる。後の黄海・米韓合同軍事演習はこの点も含んで実施される。
<日本>菅首相は今日の延坪庭砲撃事件を評して、「…助かっちゃうよね。これで野党の目もそれるでしょう。みんなもそう言ってなかった?」。ある民主党議員は「砲撃は神風だ!」。「国会対策上にとっては天佑になるかもしれないな」。自民党幹部のひとりは「民主党のやつらは、北朝鮮サマサマと思っているのではないか」
<日本>防衛省幹部は「防衛省は砲撃事件直前に、現場付近に北朝鮮のミグ23戦闘機が飛来しているのをキャッチしており、砲撃開始時から事態を把握していた。情報はつかんでいながら、それが首相のもとに届くまで、1時間以上もかかっているのが最大の問題です」。官邸関係者は「尖閣問題などでも顕著でしたが、各役所が報告をあげても、菅首相は『何でもかんでも持ってくるな』とイヤな顔をし、中国側に不穏な動きがあると報告すれば、『どういうことだ』と八つ当たりされる。そのくせ責任をとらされるのは、いつも現場。ある外務官僚は『情報の精度が十二分に高まるまで報告しない』と語っていましたが、結果的に情報が遅くなる。それどころか官邸の一部は『自民党のスキャンダルを持って来い』などと言い出す始末で、『これが政治主導の実体か?』というシラけた空気が官僚の間に蔓延している」
<英国>ヘイグ外相は「わが国は北朝鮮の朝鮮人民軍による韓国・延坪島への砲撃を強く非難する」と声明を発表した。「北朝鮮が休戦協定を順守することを強く求める」
<米国>オバマ政権が北の核開発阻止のためとってきた、時間を十分にかけて相手の動きを待つと言う「戦略的忍耐」策は、北朝鮮のウラン濃縮施設公表と、韓国領砲撃によって踏みにじられた。米国世論の硬化が予想される。
<北朝鮮>中国の王和民商務次官と北朝鮮の具本泰貿易次官は平壌で、経済協力の協定に調印。笑顔で握手した。
<北朝鮮>朴徳勲国連次席大使は「これは朝鮮半島での地域問題であり、南北間で解決されるべきだ」と述べ、国連安全保障理事会の緊急協議招集に反対する姿勢を強調した。「韓国から攻撃してきた。我々は応戦しただけだ」と、自衛のための攻撃だったとの主張を繰り返した。
<国連>在韓国連軍が北朝鮮軍に対し、将官級会談を提案したが、拒否された。
<フランス>外務省筋は砲撃事件について、国連安全保障理事会が緊急会合を準備中だと語った。「米国など安保理常任理事国の大半が、砲撃に深刻な懸念を示している」。そして「会合の準備はすでに進んでいる」と述べた。しかし中国は6者協議再開を重視しており、安保理理事会の正式開催は12月下旬に開催と後日になって、やっと決まった。
<国連>国連安全保障理事会は、砲撃事件への対応について、非公式の協議を行った。

○小此木政夫慶応大学教授は「金総書記の今年の2度の訪中や、3男正恩の登場、ウラン濃縮施設公開は、すべて北朝鮮の生き残り戦略だ」。永年にわたる体制存続のために「中国と緊密な関係を築き、米国と対話をするのが狙いだ」
○北朝鮮が米国に求めるのは、また6カ国会議再開の条件とみられるのは<産経新聞11月24日付>
 ①国連主導の対北経済制裁の解除。
 ②朝鮮戦争の平和条約締結をも視野に入れた米朝2国間交渉の開始。
 ③北朝鮮をパキスタンのような事実上の核兵器保有国として認知すること。
○米国の前議会調査局朝鮮問題専門官のラリー・ニクシュは「オバマ政権が、核問題の対処では、北朝鮮との2国間の直接交渉以外に方法がないと、判断するところまで追い込む戦術」
○米国はすでに、韓国や日本を含む西太平洋全域での空軍力と海軍力を増強させる「抑止強化」の政策を進めつつあるが、その動きは今後、ますます具体的かつ迅速になるであろう。黄海や日本海へのより頻繁な米海軍艦艇の出勤。グアム島への戦略爆撃機の恒常的な配備など。
<2010年12月20日>
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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №2  <2010年11月23日の記録>前編

2010-12-19 | Weblog
 砲撃事件連載の本日第2回は「11月23日の記録」、事件当日の情報羅列です。ずいぶん長い記録になってしまいましたが、時間系列で追ってみました。次回第3回は砲撃の前日の11月22日まで、今年1月からの北朝鮮関係の情報の掲載予定でした。ところが今回、1日分の全文を投稿しましたら、字数超過で2回に分割せざるを得ないことが判明。「11月23日の記録」は今日を前編とし、明日に後編を掲載します。

<北朝鮮>8:20 南北非武装地帯に近い都羅山に位置する韓国軍の通信施設に、北朝鮮から1枚のFAXが届いた。文面は、韓国軍が大規模な定例訓練の一環として延坪島で射撃訓練を計画しているとして、北朝鮮の「領海に撃ったなら看過しない」、射撃すれば座視しないという内容であった。
<日本>午前。米ボズワース北朝鮮対策特別代表は東京で記者団に対し、北朝鮮は「核計画を進行中で、3度目の核実験やミサイル発射実験を行う可能性があるなかで、6カ国協議や米朝協議の再開は考えていない」と明言した。しかし6カ国協議の枠組みはいまも有効だという認識を示した。
<北朝鮮>午前。第4軍団に所属する122ミリロケット砲(多連装ロケット砲)1個大隊18門を、黄海道カンリョン郡のケモリ基地に移動・配備し、射撃準備訓練を行った。午前中に1個中隊6門、午後早々に2個中隊12門、計18門。韓国軍当局はこの動きをキャッチしながら、北朝鮮の第1次砲撃に対し、ケモリ基地ではなく、茂島ムドの海岸砲基地の攻撃に重点を置いた。砲撃30分前には計18台が同基地周辺を囲んでいるのを韓国軍がとらえていたと、韓国MBCテレビが報じている。この事実は11月25日に明らかになったが、韓国軍の前線作戦に対する批判の声が、後に上がる。
<韓国>韓国軍は予定通り、午前10時15分から14時25分まで、延坪島の南西部、韓国側海域で訓練を開始。現場海域では前日22日から韓国軍が演習を開始していた。北朝鮮の甕津半島までわずか12キロの距離である。
<韓国>延坪島近辺の黄海にて、韓国海軍は「護国訓練」として実弾射撃・砲撃を13時より開始。島の民間人は約1700人。韓国軍は約500人が駐在。まわりの海は「ワタリガニ」の宝庫、高級魚「イシモチ」の産卵地で「黄金の海」と呼ばれる好漁場である。ワタリガニ漁が盛んなのは春から初夏。周辺には延坪島を含む、韓国の「西海5島」がある。
 北朝鮮に拉致され、未帰還の韓国人は500人以上もいる。そのほぼ半数は、この海域で拉致された漁民である。
<北朝鮮>「南朝鮮は北朝鮮の度重なる警告にもかかわらず、23日13時から延坪島一帯の北朝鮮領海内に砲撃を加える軍事的挑発を強行した」と、聯合ニュースが報道。北朝鮮は砲撃前に、周辺空域でミグ23戦闘機5機を哨戒飛行させた。
<中国>14:20 米ボズワース北朝鮮政策特別代表が北京空港に到着。

<北朝鮮>14:34~14:45 北朝鮮が砲撃。北朝鮮は第1次砲撃の12分間に150発を発射。第1次攻撃では、60発が延坪島に落下。残りの90発は洋上で演習中だった韓国艦船に向けての砲撃である。
 その後に第2次砲撃を加え、延べ約1時間にわたり、延坪島の北方の茂島ムドとケモリ基地から砲撃を開始。北からの砲撃終了は14時55分。
○最初の標的は、延坪庭島西方の韓国軍艦であったと思われる。しかし20ノットほどの速度で航行する艦艇に命中しなかった。北朝鮮軍は、韓国軍に朝から警告した手前、成果を上げざるを得ない。仕方なく標的を急きょ変更し、延坪島の軍施設としたと考えられる。しかし北方からの砲撃目標は、島の稜線の南側である。北からは標的が見えない。ところが意外に正確に砲撃・着弾できたのは、間接射撃に必要な観測手がいたからであろう。着弾地付近の高台に待機していた北の工作員が、無線機を手に着弾地を対岸の北朝鮮軍に向かって、修正指示を出していたからである。電波妨害は、彼らがスパイの役目、北朝鮮軍への通信を終えてから、韓国軍機器撹乱のために発したものであろう。
<日本>14:40ころ。日本の防衛省はレーダーや通信傍受などで、戦闘開始の状況を把握していたであろうといわれている。
<韓国>14:47~15:15 韓国軍は第1次反撃の砲撃を、被爆13分後に開始した。第1次の北朝鮮砲撃の後、延坪島の韓国軍は反撃に手間取り、すぐに応戦できなかった。北朝鮮軍は韓国軍部隊に照準を合わせていたが、島の韓国軍の曲射砲の自走砲部隊は準備不足のため、反撃開始が遅れた。また自走砲6門のうち1門は故障して使えなかった。また2門は砲撃の衝撃で電子回路に故障が生じ、3門だけで反撃を開始した。延坪島韓国軍の装備はK9自走砲6門。その内、発砲可能な3門から計80発を発射。
 反撃が13分後と遅れたのは、北朝鮮による電磁パルスEMPによる妨害のために、砲弾の発射地点を特定できなかったためもある。妨害のために対砲レーダーが作動せず、北がどこから砲撃して来たのか把握できなかった。韓国軍のGPSなどを、北朝鮮側はかく乱できることが初めてわかった。<東亜日報12月3日>
<韓国>14:50 韓国軍は周辺海域に対して、北朝鮮軍の局地挑発に備えた最高度の防衛準備態勢「珍島犬1」を発令。
<韓国>14:58 韓国の聯合ニュースが砲撃事件を速報。「延坪島海上に北が発射したとみられる砲弾飛来」
<北朝鮮>15:12~15:29 ムド基地から2キロ離れたケモリ基地からも、第2次の砲撃がはじまった。17分間で約20発、長距離砲の多連装ロケットを使った。軍事境界線近くの北朝鮮海岸部には、岸壁坑道内の野砲1万門以上の砲門が配備されている。ソウルもここからは射程圏内である。なお岸壁内の砲陣地へは、地上からの攻撃は難しく、陣地破壊には空軍機によるミサイル攻撃が効果的とされる。
 北朝鮮は計約170発の砲弾を発射したが、うち90発が海上に、約80発が島に落下した。野砲と長距離砲の多連装ロケット砲が発射された。
 北朝鮮の海岸砲と呼ばれる野砲は、射程が54キロの170ミリ砲と、同27キロの130ミリ砲、そして12キロの76.2ミリ砲を配置している。
<日本>15:20 日本経済新聞速報「南北境界線付近に砲弾。北朝鮮が発射か」<韓国メディア情報>
<日本>15:20 日本政府が官邸の危機管理センターに、情報連絡室を設置。管首相が砲撃を知ったのは、何とその10分後であった。
<日本>15:21 共同通信速報「韓国軍当局者は、北朝鮮が黄海の南北境界水域に砲撃を行ったと明らかにした」
<日本>15:24 仙石官房長官は自宅で砲撃を知った。
<韓国>15:25~15:41 韓国軍3次の対応射撃30発を発射。ケモリ基地に向けた砲弾は14発が、海岸近くの田畑に着弾。茂島ムドには15発が砲射砲(多連装ロケット砲)と海岸砲基地のある北朝鮮軍海岸砲部隊陣地に着弾。建物への直撃はなし。残りの砲弾は海に落下。
<北朝鮮>15:29 北からの砲撃が止む。
<韓国>大統領府によると、李大統領は当初「断固対応し、拡戦(戦争拡大)しないように万全を期せ」と指令した。後に強気な発言に訂正されるが当初の弱気な大統領の姿勢に、多くの市民には不満の声もある。李大統領は、民間企業経営者になぞらえて「CEO大統領」とも称されてもいる。
<日本>15:30 公邸にいた菅首相は外交ルートを通じ、外務担当秘書官から砲撃事件の第1報を得たと翌日に語った。23日夕刻の発言では、だれからも砲撃の連絡もなく事件発生を知らず、たまたま「部屋のTVをオンにしたら砲撃のニュース映像が映っていた」。そして管の第一声は「大変なことが起きたなあ…」。テレビ画面を見つめながらつぶやいた。
 「満身創痍の首相は、今回の砲撃で『危機の宰相』を演出できれば干天の慈雨になるが、安全保障は首相にとっての鬼門。対応を誤れば政権浮揚どころか政権崩壊を招きかねない」<産経新聞11月24日付>
<韓国>15:40 韓国空軍は現場上空にF15K、kF16戦闘機、各4機を相次いで出撃させた。北朝鮮もすでにミグ23戦闘機5機を発進させていた。韓国機の2機は射程250キロの空対地ミサイルを装填していた。北のさらなる砲撃に備え、ミサイル基地と海岸砲基地攻撃の準備を行っていた。空中戦が発生してもおかしくない状況であった。
<北朝鮮>砲撃事件の発砲基地の近くには、北朝鮮の地対艦ミサイル「シルクワーム」を配備した別基地もある。
○韓国空軍が射撃爆撃をできなかった理由は、「戦時作戦統制権」が米国にあって、韓国にないからだといわれている。戦時作戦統制権とは、有事の際に戦闘現場の作戦を指揮する権限。現在の韓国軍の戦闘準備態勢は<レベル4>だが、重大な緊張状態や軍事介入の可能性ありの<レベル3>に上がると、韓国軍約65万5千人は、在韓米軍司令官の指揮下に入る。2015年には有事統制権は韓国に移る予定だが、それまでは米軍が指揮する。北の侵攻を想定した作戦計画は「5027」、北の態勢崩壊を想定した「5029」作戦も、ともに連合軍司令官が共同作戦を指揮する。韓国はこれから2015年の指揮権移転に向けて、軍備の一段の強化を開始するであろう。
 ところで一時、韓国政府は戦闘機による北朝鮮側への爆撃を指示した。だが延坪島からの北への反撃成果、北朝鮮側の被害は大きかったと判断し、急きょ爆撃は中止された<聯合ニュース25日報道>

<韓国>15:50 韓国軍側が北朝鮮に、通知文で射撃中断を要求。
<中国>16:05 中国外務省の洪磊副報道局長は定例記者会見で「関係各国が朝鮮半島の平和と安定に努めるよう希望する」と述べた。
<日本>16:05~16:42 菅首相は国対担当参議院議員と公邸で談話。
<日本>16:11 自民党の石破茂政調会長が共同通信の取材に「周辺事態も念頭に置き、あらゆる事態に対応できる態勢が必要」と述べた。
<韓国>16:35~21:50 李明博大統領が、外交・安全保障関係閣僚会議を開催。
<韓国>16:36 韓国行政安全省が全国家公務員に非常待機令を発令。
<日本>16:40 伊藤哲朗・内閣危機管理監が首相官邸に到着(知ったのは3時半)
<日本>16:44 菅首相が公邸から官邸に無言で移る。仙谷官房長官らと対応を協議。
<日本>17:12 菅首相がぶら下がり取材に応じ、「どの国より早い記者会見だった」と自画自賛。しかし「情報収集と不測事態への対応準備に努める」というだけの国民に対するメッセージであった。海外に対する見識の一言もなかった。私見だが、同国民のひとりとして実に恥ずかしい。
<米国>17:33 米ホワイトハウスが北朝鮮を「強く非難する」という声明を発表。
<日本>17:37 宮中行事「新嘗祭」に首相ほかが出席のため外出。
<日本>17:54 北澤俊美国防相登庁。昼間、国防省近くの麹町宿舎にいたが、登庁の気もなかった。さすがに18時前に出勤したが、秘書は「テレビでどんどんやっているので(出なければ!まずい、と気付きあわてて)登庁しました」。ちなみに岡崎トミ子国家公安委員長は、都内の宿舎にいたにもかかわらずこの日、登庁しなかった。
<米国>17:55 オバマ大統領は砲撃事件の発生を、ドニロン大統領補佐官から電話で報告を受けた(現地時間早朝3:55)。大統領報道官は「米国はこの攻撃を強く非難し、北朝鮮が好戦的な行動を停止し、朝鮮戦争休戦協定を完全に順守することを求める。米国はわが同盟国の韓国の防衛と、この地域の平和と安定に責務を有する」という公式声明を発表した。
 しかしオバマ大統領が事件を知ったのは、遅い遅いといわれている菅首相より2時間半ほども後である。なぜか? 現地深夜に睡眠に入ったばかりの大統領を起こすことを、側近が躊躇したのであろうか? 私見だが、睡眠薬を飲んでの就眠であったためであろうか?
<韓国>18時過ぎ。李大統領は態度を硬化させ、彼は砲撃の直後、テレビ電話会議で将軍たちを招集し、一時は武力報復を検討した。また大統領は韓国軍合同参謀本部で「断固とした対応を取れ。状況が悪化しないよう万全を期せ。挑発に対しては、何倍にもしてやり返さねばならない」。しかし政府元高官は「威勢は良いが、韓国が取ることができる措置は限られている」
<米国>18:30ころ。ホワイトハウスは声明を出し「米国は同盟国である韓国の防衛と、地域の平和と安定に全面的に尽力する」と、北朝鮮のさらなる挑発行為を強く牽制した。
<米国>ボズワース北朝鮮政策特別代表は、訪問先の北京で記者団に対し、「北朝鮮のウラン濃縮は国連安全保障理事会の決議違反に当たる」として、安保理への付議を検討する考えを示した。

<韓国>李大統領は、青瓦台・大統領府に金泰栄国防相や国家情報院長らを緊急招集。安全保障関係閣僚会議を開き、情報収集と対応策を協議した。
<韓国>18:40 韓国軍合同参謀本部が記者会見。韓国国防省は北朝鮮に対し、挑発行為を直ちにやめるよう要求する通知文を発送した。周辺海域一帯に、局地挑発に備えた軍の防衛準備態勢を最高水準に格上げして発令。
<北朝鮮>19:00 朝鮮人民軍最高司令部は声明を発表。「われわれ革命武力は南朝鮮の傀儡が祖国の領海を、0.001ミリでも侵犯すれば、ためらうことなく無慈悲な軍事的対応打撃を継続する」。「挑発者の火遊びを無慈悲な稲妻で制圧するのがわれわれの対応方式だ」。朝鮮中央通信23日19時付、平壌発報道の要旨は以下の通り。
 ①南朝鮮(韓国)は23日午後1時から、黄海の延坪島一帯の北朝鮮側領海に砲撃を加える軍事的な挑発を敢行。砲弾は数10発に達した。
 ②挑発は「北方限界線」を固守しようとの悪質な企図の延長だ。
 ③北朝鮮軍は即時的で強力な物理的打撃で対応、断固とした軍事的措置を講じた。
 ④今後も韓国側が祖国の領海を0.001ミリでも侵犯するなら、躊躇なく無慈悲な打撃を加える。
 ⑤韓国側はわが軍の厳粛な警告を心に刻まなければならない。黄海にはわれわれの設定した軍事境界線のみ存在する。
○私見だが北朝鮮の姿勢を思うに、米韓朝には平和協定がない。また境界線も確定しないから、このような海上での紛争が度々、起きるのである。米国は平和協定の交渉の場に立つべきだ。これが北朝鮮からのメッセージなのではないか。

<ロシア>19:00 ラブロフ外相が「最初に砲撃に訴えた勢力は重大な責任を負う」と、名指しは避けながらも、北朝鮮は「非難に値する」とした。
<日本>19:07 仙谷官房長官が権哲賢駐日韓国大使と面会。
<日本>20:30 菅首相は皇居から官邸に戻った。
<韓国>20:30 金星煥外交通産相が武藤正敏駐韓日本大使を同省に呼び、北朝鮮の砲撃が「韓国に対する明白な武力挑発」とする韓国の立場を説明した。
<韓国>20:37 李大統領が合同参謀本部を視察。
<日本>21:48 仙谷官房長官が記者会見で、砲撃について「許し難い。強く非難する。直ちにやめるよう求める」
<日本>20:55 首相官邸で関係閣僚会議が始まる。
※長い1日はまだ続きます。
[2010年12月19日]
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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №1  <はじめに>

2010-12-11 | Weblog
 北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国は、不可解な国です。どこが民主主義? 共和国とは? 共和制は、世襲的な君主制に対し、国民によって選出された代表者によって統治される政治形態。共和国とは、独裁ではなく共和制によって政治を行う国だそうです。人民の自由が奪われた金王朝のこの国は、民主主義の共和国でしょうか?
 しかしもっと不可解なのが、民主党政権下の日本です。党首脳陣が考えていることは分かりにくい、というよりも保身以外、何も考えていないのではないか? 少なくとも国益なり、国民の利益や幸福のことは、彼らの脳中にはなさそうです。いや。無いに違いない。

 さて今回の延坪島の砲撃事件を機に、北朝鮮はどのような考えを持っているのか? なぜあのような行動を取るのか? 知りたい、理解したい。気になりだしました。
 当然ですが、隣国の韓国(大韓民国)、そして中国(中華人民共和国)、ロシア(ロシア連邦)。海を隔てた日本、米国(アメリカ合衆国)。さらにはこれらの国々と利害関係のある国々や国連(国際連合)など。それらを調べることで、現在ingの<現・現在史>をいくらかでも把握し、理解できるようになるのではないか? そのような気が、むらむらと湧いてきました。そして情報収集を開始したのです。
 友人にこの作業開始のことを話しましたら、「新進気鋭の朝鮮半島問題研究家の誕生ですね」。彼のいう「新進」は、まったくのシロウト、無謀なる初心者、入門したてのヒヨッコ。「気鋭」は気持ちだけが先行突出した、オッチョコチョイという意味だそうです。彼がこれから読んで、どう言うか? 楽しみです。

 連載は下記の順序で進めようと思っています。
№1 本日掲載の「はじめに」
№2 事件発生の11月23日の記録。この1日を時系列で記します。1週間ほど先にアップしようと思っています。
№3 本年1月から、事件前日の11月22日までの北朝鮮関連情報を、月日順に羅列します。
№4 砲撃事件の翌日、11月24日からの国別、日別の関連情報を延々と記します。
 ところで、何回の連載になるか分かりません。半島と世界情勢が安定すれば、そのときに終了します。あるいはバテて、10回も続かずに終了するかもしれません。

 さて、このシリーズ開始のため、復活希望の多い?連載「電子書籍元年2010」は当分休載。SF「未来書店物語」の未来書店は、しばらく休業します。
<2010年12月11日 南浦邦仁 記>
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SF「未来書店物語」 №17 <小休止>

2010-12-05 | Weblog
 連載SF「未来書店物語」について、熱心な読者よりご意見やアドバイスをいただきました。数は決して多くはないのですが。
 これから数回、それらをテーマに、曲がり道を散策してみようと思っております。

 まず、登場人物がどんどん増えるので、だれがどれなのか、話しが混乱してしまって、理解しづらいという指摘です。すみません。シロウトが物語モドキにチャレンジすると、考えが拡散してしまい、つい登場者が増えてしまうようです。欲張るからそのようになってしまうようです。
 とりあえず登場人物をご紹介しておきます。何人かははしょっておりますが。
 なお年齢は誕生日を個別に設けると、カウントがややこしいので、全員が元旦生まれにしてあります。まるで数え年ですね。2012年現在の年齢です。

片瀬五郎 生年1950年 年齢62歳 主人公。超小型の本屋「未来書店」2代目店主。1988年まで不動産会社の営業社員だったが、未来書店の先代、親友の前川の死去、店を継いだ。2012年4月、新生未来書店を息子の伸介たちと新装開店。住まいは店から徒歩10数分の祇園新橋近く。地元古井町出身。京都市東山区。
片瀬文子 1952 60歳 五郎の妻。
片瀬洋子 1981 31歳 長女。2011年暮れから、未来書店から5軒目、古井町商店街の居酒屋「藤島」の2代目女将。親友の森正子と、食堂居酒屋を営む。
片瀬伸介 1983 29歳 長男。地元の信用金庫に勤めていたが辞め、新生未来書店を父と新装開業。全国の小型零細書店に向けて、本屋革命を開始。

山本千代 1945 62歳 銭湯「古井町温泉」主人。元市会議員。かつてウーマンリブ運動の闘士。東山区連合婦人会のドン。
山本拓郎 1981 31歳 片瀬洋子の小中学の同級生、婚約者。子ども入浴料を無料化し、全国でも有数の風呂屋に変身させた。植物考古学の専門家でもあり、暇さえあれば風呂焚口横の小部屋の顕微鏡で、プラントオパールや花粉化石を調べている。母校の京都府立理工大学の非常勤講師として、後輩の指導にも当たっている。

片山   1948 64歳 2010年のアイパッド発売とともに3人はドボッと、はまった。
三室   1948 64歳 3人は「電子雑誌」を発行開始。各国語版を発行し、世界から注目を浴び出す。
井上   1950 62歳 3人のフルネームはそのうちに決めます。

河野健  1983 29歳 通販会社「チャパネットタカラ」から、未来書店への出向社員。片瀬伸介と組んで、全国同業者に向け、新しい書店を築く大きな力になっている。

北浦圭子 1987 25歳 片瀬の妻文子の妹の子。片瀬夫妻の姪。京都で新進のブックデザイナーとして注目されていたが、実戦を希望して未来書店の新生企画に2012年3月より参画。のちに未来書店出版部を立ち上げる。

柴田政治 1948 64歳 PODマシーン「ティータイムE」の製造会社社長。社員は20名足らず。東大阪の零細メーカー。
玉田大助 1950 62歳 新社名「TTパレットジャパン」の社員。製作責任者。
玉田二郎 1983 29歳 大助の息子。マサチューセッツのMAT出身。アメリカ現地企業のエンジニアだったが、日本に住む婚約者が母の病気のために渡米ができなくなった。二郎は米企業を辞め、帰国結婚予定。自らが命名した「TTパレットジャパン」に転職する。

安田三郎 1946 66歳 古井町の大工。隠居していたが、未来書店新装を機に復帰。安田工務店会長。
安田孝二 1980 32歳 全従業員4人の安田工務店社長。三郎の息子。後に「町のゼネコン」として古井町再生に活躍。

近藤大助 1932 80歳 町の長老。通称コンチャン。尊敬と親しみの念で、みなが呼ぶ。町の皆を取りまとめる達人である。

藤島小百合 1945 67歳 居酒屋藤島の初代女将。膝を痛め店を片瀬洋子に譲り、山科に移ったが暇をもてあまし、まもなく洋子の営む食堂藤島に応援で復帰予定。サユリストたちの憧れであった。初代古井町小町。

森正子  1981 31歳 片瀬洋子の小学校以来の親友。食堂居酒屋「藤島」の共同経営者として活躍。

桂    1946 66歳 京都本屋商業組合理事長。未来書店初代の故前川の親友。
中垣   1952 60歳 中垣書店店主。未来書店の片瀬五郎の友人。POD購入を支援。書店改革の仲間。
堀井   1950 62歳 同じく。ブックス堀井店主。
仲井   1947 65歳 同じく。仲井書店店主。本屋組合の新設「Eブック&本屋再生委員会」委員長。片瀬五郎は副委員長に就く。

 ほかにもいろいろ文章の不備や、書きかえや疑問のご指摘をいただいております。次回も継続します。問題点は、たとえば食品衛生法や、公衆浴場の公定価格などなど。疑問点、改善部分とか、ご意見をお聞かせくだされば、うれしいです。
<2010年12月5日 週1回ていどの連載>

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SF「未来書店物語」 №16 <無料とフリー>

2010-12-01 | Weblog
 洋子から結婚の話しを突然に聞かされ、うろたえた父の五郎。その夜、店を閉めると居酒屋藤島の赤提灯の前を足早に通り過ぎ、自宅に向かった。
 いつものように日本酒の燗を、小さな猪口でちびちび飲みはじめた。五郎は妻の文子に「え~、今日の昼のことやけど…」
 文子にはピンときた。洋子からは数日前に聞いていた。父に直接話すのが筋だからと、娘が夫に話しを切り出すのはいつかと待っていた。
 「相手は古井町温泉の山本拓郎君なの。知ってるでしょう? 子どもを無料にして、大繁盛し出したお風呂屋さん。お母さんも市会議員として女性のために気張りはった方で、わたしも尊敬しています。息子さんも好青年。わたしは、ふたりの結婚に賛成です」 拓郎は三条白川小学校で洋子と同級生だった。
 あの少年だったのか…。片瀬も最近でこそたまにしか会わないが、かつて小学生のころ、未来書店の常連の子どもだった。理系がすきで、少学館や学圏の図鑑、植物や化石の本などをよく買ったのを、片瀬は覚えている。礼儀正しく聡明そうな少年だった。もう20年ほども前の記憶である。
 「府立理工大学と院で、植物考古学を学んだそうです。花粉考古学とかプラントオパールとかの研究者だけど、それって何なのか? わたしには意味がわかりませんが。5年ほど前にお父さんが亡くなって、お風呂屋さんを継ぐことに決めたそうです。全国の風呂屋さんがどんどん減っていくなか、元気の見本になることが目標だって、洋子が言っていました」 まるで未来書店や食堂藤島の銭湯バージョンではないか。

 片瀬夫妻と洋子、山本拓郎の四人で晩の食事を一緒にすることになった。五郎のお見合いのようなものである。藤島は正子が、未来書店は伸介と河野健が店番をしてくれる。日程は風呂屋の休日の水曜にした。
 食事所は不動産屋をやっていたころ、接待で世話になった八坂神社のすぐ南、石塀小路の輪田を予約した。もともとはお茶屋だが、先代女将が高齢になり、娘の銀子は「ギャラリー輪田」に衣替えした。ただ古くからの客の希望があると、仕出し屋から懐石料理を取り、ほかの客を入れずに座敷を貸し切りにしてくれる。
 輪田の庭を片瀬は好きだ。玄関をくぐると、いつも立ち止まって見入るのが片瀬の楽しみであった。

 拓郎は「片瀬さん、すごい本屋をつくられましたね。開店の混雑の日、それからも何度か行きましたが、いつもお留守で…。PODで洋書を数冊つくってもらいました。子どものころもずいぶんお世話になりましたが。高校生のときは繁華街の本屋ばかり利用し、大学時代は学内生協…。足が遠のき、すみませんでした。これからはPODでお世話になります。Eバンもいただきました」
 洋子の話しによると、いまは母校の非常勤講師もつとめており、後輩たちに植物考古学を教えているそうだ。花粉化石からは縄文時代遺構の植林栽培、栗やヒエ、ヒョウタンなどの栽培を証明し、稲作の同じく縄文の時代からの開始を何例も発見したそうだ。プラントオパールとはイネ科植物の葉に含まれているガラス質。指が切れるのは、この鉱物質のためらしい。古代の田畑からは大量に見つかるそうだ。
 拓郎は風呂の釜炊きの横に小部屋を設け、暇を見つけてはそこで顕微鏡をのぞき込んでいるという。母校には店が定休日の水曜に通っている。

 輪田の先代女将が奥から不自由な足なのに、あいさつに出て来た。彼女は正座して「片瀬さん、おおきに、久しぶりでんなあ。おじょうちゃんも大きくならはって。奥さんも20年ぶりくらいで、ほんに今日はありがとうございます。未来のご亭主さんにも、これからよろしゅうに。立派な青年ですこと。お幸せを祈ってますよって」
 片瀬もこの青年を好ましく思った。少年少女のころの記憶を探りながら「洋子も人を見る目があるな」と、五郎は思った。

 銭湯を無料化にした話しになると拓郎は「実はぼくのアイデアではないのです。彼女の発案です。内緒にしてねと言われ、これまで誰にも話さなかったのですが」
 洋子は「父さんの本棚にあった本、グリス・アンデルセンの『無料とフリー』※を借りたこと覚えてる? あれでわたしの発想が変わってしまったの。銭湯は小学生以下を無料。食堂の藤島も無料のバイキング。あの本から学んだの。フリーには、無料と自由の意味があるって。無料という強力なパワーで、みなが自由を獲得できないか? 拓郎君とこのフリーも、藤島のフリーも、父さんから借りた本のおかげなの。温泉のフリーは、わたしたちふたりの共同発明です」 拓郎をたてる洋子に、みなうれしく、大笑いした。Eバンもフリーだと。
 「このふたりは、わたしにとって手本、同志になって行くのではないか?」と、片瀬は直感した。

※クリス・アンダーソン著『フリー』NHK出版 2009年11月刊
○隔日連載でこれまで続けて来ましたが、そろそろ息切れのようです。週1回掲載程度にペースダウンしようかと思っています。ほかにもやりたいことがありますし。
<2010年12月1日水曜。私的な話題ですが、今日は片瀬五郎の誕生日です。齢は? 年齢不詳のわたしです>
コメント (2)
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