万歳はいまでは「ばんざい」ですが、もともとの読みは「ばんぜい」「ばんせい」のようです。
788年、桓武天皇の祈祷で降雨があった。そこで群臣がみな、万歳をとなえたという記録があるそうです『続日本紀』。
古来、天皇の即位式や慶賀に「万歳」(ばんぜい)の文字を記した旗「万歳旛」が用いられ、雅楽「万歳楽」が演じられました。天皇の長寿を予祝するためです。なお「万歳楽」の読みですが、まんざいらく、まんさいらく、ばんざいらく、ばんぜいらく…。いろいろありそうですが。
ところで、万歳(ばんぜい)は本来、君主や貴人の長久の繁栄をことほぎ願うことをいいました。ところがその後、転じて庶民にも、正月や目出たいことを祝う言葉になる。 祝福芸能では萬歳「まんざい」。まんざいは全国にひろがり、三河萬歳、大和萬歳。そして越前、加賀、尾張、伊予などが有名です。
昭和8年には「漫才」という新語が吉本興業によって作られました。
400年ほどの昔、イエズス会の宣教師たちによって編纂出版された『日葡辞書』では、「千秋万歳」を「せんしゅうばんぜい」と読み、日本人が正月やその他の目出たいときに、挨拶としていう言葉。「あなたは何千年も生きる」。長久を予祝する言葉として使ったとあります。
その後おそらく明治時代に、どうも叫び声にまでなったようです。
明治5年(1872)9月12日、京浜間の鉄道開行式での祝辞の最後に「君万歳、君万歳」。
同11年11月9日、北陸からの還幸の記事に、「百万の民戸、国旗を掲げ、万歳を奏す」。いずれも「ばんぜい」なのか「ばんざい」「ばんせい」なのか不明です。
「ばんざい」と読んだ最初といわれているのは、明治22年2月11日。帝国憲法発布の式典が挙式された。青山練兵場での観兵式に向かう天皇の馬車に、大学生たちが「万歳」(ばんざい)を高唱したことにはじまるそうです。
明治30年の第11回帝国議会解散のとき、議長が天皇の詔勅を読みあげた際、議場内に「拍手起こり、万歳と呼ぶものあり」と記されています。
国会解散での万歳三唱のルーツは、おそらくここにはじまるのでしょう。ひとつには明治以来の、天皇に向けた万歳を無意識裡に、自らと自己の所属する政党の勝利を予祝する願い。他党や政敵に向けてのエールでは、決してなさそうです。
<2009年8月2日初稿 2025年1月16日改定再録 南浦邦仁>
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