代役アンドロイド 水本爽涼
(第302回)
「そうだな…、とりあえず明日、研究室へ一端、戻ろう!」
「エアカーは、どうされます?」
但馬が諄(くど)く訊ねた。
「このまま別荘にしばらく収納しておこう。どうするかは、その後、皆で考えよう」
「…ということは、記者会見とかその後のマスコミ対策とかを考慮して、ってことですね?」
「ああ…。但馬君、君は少し酔っとるな。…そうなんだがね」
教授は少なからず迷惑顔で但馬を垣間見た。
その頃、沙耶は三井と綿密なスケジュール調整を電話でしていた。
『…ええ、保は今日、明日中に一端、戻ってくると思うわ。さっきメールが入ったから』
『そうなんですか。ということは飛行車の最終実験は成功したということですね』
『まあ、そうなるわね…。で、そうなると、飛行車は別荘へそのまま保管されてる訳よ』
『はあそういうことです。実行日は保管されてる間に、ってことになりますが…』
『だわね。あとは三井さんと私のベスト・タイミングはいつかってことだけど…』
『私の方は毎日が同じペースで流れてますから、夜ならいつだってOKですよ』
『同じペースってことは…逆に考えれば休みがない、ってこと?』
『はい。まあ…。自由なようで、まったく自由がない訳です。先生の所用以外、大して用もないですけどね。着飾る訳でもなく、美食を食べる訳でもなく・・ただただ、先生のための日々ですから、ははは…』
『あらっ!? 珍しく笑ったわね』
『いえ、笑ったのではなく、感情システムで愚痴を表現しただけです』
『そうなの? そこが人間と違うところよね、私達』