代役アンドロイド 水本爽涼
(第306回)
ホットラインとは、何らかの連絡手段である。今の携帯は置いていく積もりでいた。GPS機能が搭載されているからで、別に一個、付加していないリーズナブルなものを買ってあった。保の行動データは、山盛研究室の研究データも加味された。その結果は割合と早く出た。電話外線のモジュラージャックを抜き、指先を触れれば、研究室と外部の情報は入手できたし、パソコン情報もすべて分かった。分からないとすれば研究室内での人間同士の会話ぐらいのものだったが、エアカー情報に関しては保から直接、聞きだして入手していたから、これで一切の不都合は消滅したように思えた。沙耶は携帯を手にした。三井は律儀にも携帯を前にして待機していた。当然、辺りに人がいない自室である。正午10分前には机の上へ携帯を置き、机に座って、じっと見入っていた。むろん、長左衛門には私用があるからと断りを入れて離れていたから、急に呼び出される心配はない。
「はい! 分かりました!」
沙耶と三井が保や長左衛門の前から忽然と消えたのは、その二日後の夜だった。
『沙耶さん! いい乗り心地ですね』
『そりゃそうよ! 私がプログラムしたんだから』
『はい! いい眺めです』
下界には絶景の富士山が見え、高度計は4,200mを示していた。酸素の希薄さはアンドロイドの二人? には不要の心配だった。