代役アンドロイド 水本爽涼
(第304回)
「そうか…。こっちは上手くいったよ。エアカーは、しぱらく別荘へ保管しておくそうだ」
『そう…』
ただ聞き流した風に外見上は見える沙耶だったが、思考は三井と話した最適な実効日を模索していた。その証拠に、保が寝静まった深夜、沙耶は三井に携帯をかけていた。
『そうなのよ。しばらく別荘へ保管するそうよ』
『そうですか。ことによるとパーツに分解されて研究室へ戻ったんじゃないかと思っておりましたが…』
『その心配は、なかったようね。それじゃさっそく近々の時期を選ぶことにするわ。それで、いいわよね?』
『はあ、私の方はいつでもOKです。それに、先生に年一回お見せしている会計帳簿の提出時期が来月に迫っておりますので、それまでの方が…』
『電話代でしょ? 見りゃ分かるわよね。私達って、かなり、かけ合ってるから…』
『そうなんですよ。お金の出費は、いくら額が大きくても、何も仰せじゃございませんが、使途については、ある程度、目通しされますから…』
『電話代だけが突出してるわよね』
『はい、前年度に比べればその通りでございます。沙耶さんの方は?』
『私? 私は大丈夫よ。会計簿は私が預かってるから。見せたことなんか一度もないわ』
『羨(うらや)ましい話ですね。…それじゃ、長電話になりますから、この辺りで。飛ぶ日が決まりましたら、またお電話、下さい。正午から10時以降の深夜で、お待ちしております』