代役アンドロイド 水本爽涼
(第305回)
『分かったわ。それじゃ、故障なくね…』
沙耶は静かに携帯を切った。
『さてと…、私もそろそろ停止するかな』
停止とは、人間でいう睡眠である。
次の日、保はいつものように愛妻弁当ならぬアンドロイド弁当を持って出かけていった。その後の沙耶は食事の片づけ、掃除、洗濯などの雑用を済ませた後、部屋へ戻って椅子に座った。机の前にはカレンダーが置かれている。沙耶はそれをじっと見つめると、やがて静かに両瞼(りょうまぶた)を閉ざした。カレンダーの画面には内臓データとして画面ごとメモリー回路に保存される。そこへ三井と話し合った二人? の消滅時期のベストタイミングを模索するデータが送り込まれ、解析されていく。約10分後、沙耶は静かに瞼を開けた。
『この日がベストね…』
沙耶は眼前のカレンダーを見ずに呟(つぶや)いた。同じカレンダーの映像は沙耶の思考回路に映し出されていて、解析の結果、最適の日と確定された日が点滅していた。 沙耶は目の前に置かれたカレンダーを見ずに呟(つぶや)いた。同じカレンダーの映像は沙耶の思考回路に映し出されていて、解析の結果、最適の日と確定された日が点滅していた。しかし、結果が出たからといって飛ぶ日と決定する沙耶ではない。保の分析データも加味し、最終判断にするつもりなのだ。三井への連絡は、その後ということになる。幸い、保が困惑しないように作成入力したファイル等は完璧に終了したから、問題はなかった。最後に一つ迷うのは、完全に保との音信を絶つか・・ということだった。すなわち、人間なら完全な失踪状態に入る訳であり、そういう形にするのか、あるいはホットラインだけでも残しておくのか、ということだ。