代役アンドロイド 水本爽涼
(第300回)
「それは、そうだ。まあ落ちても、浮上安全システムが機能するから沈みはせんがね」
「ええ、その点は安心してるんですが…」
保は小さく笑った。
翌日、早暁の朝焼けで空が明るさを取り戻そうとしていた頃、保達研究室の四人の姿は浜辺の砂上にあった。
「岸田君、じゃあ、乗ってくれたまえ! 手抜かりはないね? 但馬君」
「はい! 教授。大丈夫です」
「じゃあ、岸田君、5m上昇し100m海上に向かって進行してくれたまえ。その後、反転、100m後退し5m下降だ」
「元の位置へ戻るということですね」
「ああ、そうだ…」
「分かりました」
保は機器のスイッチを入れ飛行車を起動し始めた。次の瞬間、飛行車は研究室内で浮上したときの動きを見せた。フワ~リという感じで、ゆっくりした上昇である。三人の視線は上昇していく飛行車の機体へと集中した。
「おおっ! いい感じだ。その調子だ、岸田君!」
保は山盛教授に返事せず、ただ頷(うなず)いて運転操作を続ける。約5mではなく、感知システムで、ぴったり5m上昇し、飛行車はその状態を保持して空中に静止した。
「では、進行を開始します!」
5m上空から保の拡声された声が降り注ぐと同時に、機体は緩やかに海上めざして進み始めた。