水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -37-

2015年09月02日 00時00分00秒 | #小説

「この前、言ってた例のアレよ…」
[ああ、アレな…]
 初期化されクローンとなった城水には分かる訳もなく、適当に話を合わせるしかなかった。
「高くつくし、それとなく辞退したんだけどね…」
[ああ…]
「いいじゃないですか、お金のことなら心配なさらなくても・・と、こうなのよ!」
 メンツを潰(つぶ)された里子の怒りは、城水に浴びせられた。城水は話の内容から解析し、少し理解した。
[それは、あんまりだな…]
「でしょ! 頭にきたから、その心配はないんですけどね、つて言ったのよ」
[ほう、それで?]
 話は里子の独壇場になっていった。それも当然で、城水としては聞くほかはないのである。話の内容が皆目(かいもく)分からないのだから、下手(へた)に話せば、突っ込まれる危険性があり、危うい。
「だったら、いいじゃないですの・・と、こうよ!」
[ほう…]
「私だってメンツがあるでしょ。言ってやったわよ!」
[どう?]
「行きますわよ、行きますとも・・ってね」
 城水は、異星人的に冷静に判断し、結局、行くんかいっ! と思ったが、心に留めた。
[まあ、いいじゃないか、行けば…]
 城水は当たり障(さわ)りなく了解して流した。


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