「この前、言ってた例のアレよ…」
[ああ、アレな…]
初期化されクローンとなった城水には分かる訳もなく、適当に話を合わせるしかなかった。
「高くつくし、それとなく辞退したんだけどね…」
[ああ…]
「いいじゃないですか、お金のことなら心配なさらなくても・・と、こうなのよ!」
メンツを潰(つぶ)された里子の怒りは、城水に浴びせられた。城水は話の内容から解析し、少し理解した。
[それは、あんまりだな…]
「でしょ! 頭にきたから、その心配はないんですけどね、つて言ったのよ」
[ほう、それで?]
話は里子の独壇場になっていった。それも当然で、城水としては聞くほかはないのである。話の内容が皆目(かいもく)分からないのだから、下手(へた)に話せば、突っ込まれる危険性があり、危うい。
「だったら、いいじゃないですの・・と、こうよ!」
[ほう…]
「私だってメンツがあるでしょ。言ってやったわよ!」
[どう?]
「行きますわよ、行きますとも・・ってね」
城水は、異星人的に冷静に判断し、結局、行くんかいっ! と思ったが、心に留めた。
[まあ、いいじゃないか、行けば…]
城水は当たり障(さわ)りなく了解して流した。