城水が至近距離まで近づいたとき、車の前ドア横に立つクローン[1]がテレパシーを送った。
[どうだった?]
直接、話せばいいじゃないか…と、腹立たしく思えた城水は、[なにが?]とだけ短く返した。その間にも二人の距離は縮まり、目と鼻の先になった。
[当然、学校内のことだ…]
クローン[1]は怒る様子もなく、冷静に口を開いて答えた。
[どうということはない…無事だ]
そこは事実と少し違っていたが、城水は虚勢を張った。どうにかこうにか無事に済んだ…が本音だったのだ。
[そうか…それならよかった。指令にはそう伝えておく。明日以降もよろしく頼む]
[ああ。それはいいが、いつ地球を離れるのだ]
城水がそう訊(たず)ねたとき、クローン[1]は徐(おもむろ)に腕を見た。腕には未知の計器らしきものが装着されていた。
[約、半月後だ。その前日、今朝、お前に渡した物質が知らせる…]
クローン[1]は、やはり冷静に答えた。
[私は、どうすればいい?]
[それは以前にも言われたはずだ。この地に残るも我々とともに去るも、お前の判断次第である。では…]
言い終えると、クローン[1]は透明になり、跡形もなく消え去った。