[だが、報道では得体の知れない侵入者が突然、現れたと言っていたぞ]
━ それは瞬間だったと[4]は言っている。ミスに気づき、すぐにシールドで顔を隠し、議場から消えたそうだ ━
[そうか。ならば、いいが…]
━ 万一の場合は、お前を緊急避難させる ━
[それはいいが、城水の家族はどうなる]
━ どうもならない。お前が存在した記憶を消去する ━
[しかし、雄静(ゆうせい)という子供の存在はどうなる。里子は雄静の存在を、どう認識しているのだ]
━ 家族には別の記憶を植えつける。お前は死んだ記憶となる。お前の顔形は別人として修正され、遺影として安置される手はずだ。この段階で、お前の家族は今のお前を忘れている ━
[なるほど…。すでにそういうプログラムが出来上っていたのか。ならば、私は安心していい訳だな]
━ ああ、そういうことだ。余り遅くなると、家族が不審に思うぞ ━
次の瞬間、テレパシーは途絶え、地球外物質は緑色の光を発するのをやめた。城水は書斎を出ると、そのままキッチンへ向かった。
「あら、着替えは?」
背広姿の城水を見て、里子が訊(たず)ねた。
[食べたら、また出かける。知り合いが会いたいそうだ]
城水は方便を使い、出鱈目を言った。
「そうなの? 珍しいわね、こんな時間から…」
里子は不審っぽい眼差(まなざ)しで城水を見た。ただ、それ以上は訊(き)かなかったから城水は救われた。