水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -60-

2015年09月25日 00時00分00秒 | #小説

━ 城水よ、指令を伝える。人間の目には見えない無色透明の袋が私とともにポケットの中にある。その中へ一日に50種ずつ、動植物の種族を確保せよという指令である。詳細は、改めて伝える ━
[分かった…]
 城水は横たわったまま、物質へテレパシーで返した。城水の少し離れたベッドの上では、里子がなんの心配もないような平和な顔で寝息を立てていた。そういえば、最近、手に入れた知識の中に<知らぬが仏>というのがあったな…と、城水はニヤリと笑った。
 朝食が済むと、いつものように城水は家を出た。小学1年の雄静(ゆうせい)は通学パスに乗り遅れまいと、スキップを踏みながらすでに家を出ていた。
 坂道を車で下ると、城水はいつものように駐車場へ車を止め、駅へと歩き始めた。そのときだった。
━ この道のマンホールの下は、すでに昨日の深夜、我々が通路を確保した。今、その状態をお前に示しておく ━
 城水が着る背広の外ポケットが突然、異様な緑色の光を発すると、テレパシーを城水へ送り始めた。城水が足下のマンホールをに視線をやったとき、蓋はゆっくりと上昇し始めた。その中を城水が覗き込むと、不思議なことにスッポリと下水道が消え、トンネルが出来ていた。下方向へ緩(ゆる)やかな階段が付いていて、照明もないのに空間は不思議なオレンジ光に満たされ、明るかった。城水は、これがUFO編隊が着地している山麓に通じた穴か…と理解した。
[了解した]
 城水は、単にそうとだけテレパシーを返した。


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