小忙(こぜわ)しく家へ着いた城水はテレビのリモコンスイッチを慌(あわ)てながら押した。
「あら、どうしたの? 息、切らして…」
[いや、なんでもない…]
里子が怪訝(けげん)な顔つきで城水の顔を窺(うかが)った瞬間、城水の脳内に危険信号が点滅して浮かんだ。城水は、しまった! と思い、すぐテレビのリモコンを押して、スイッチを切った。ニュースで万一、クローンの姿が流れれば、具合が悪い。クローンの姿は自分の生き写しだからだ。いや、そればかりではない。城水の存在は世界に報じられ、家族ばかりか世間の誰もが知るところとなる。これは非常に危うかった。それよりも、大バレの事態は、悟られずという指令された城水の目的が果たせなくなる。
「怪(おか)しな人…。お風呂、沸いてるわよ。ゆうちゃんは、もう出たから」
[ああ…]
今の城水に風呂などどうでもよかった。城水は普段着に着替えることなく書斎へ入ると、目を閉ざしてテレパシーを送った。その瞬間、城水が背広の外ポケットから出した地球外物質は、手の平の上で緑色の光を放ち始めた。
━ 何も心配することはない。確かに[4]はミスを犯したが、すぐ姿を消した。お前には言ってなかったが、人間が生み出した科学機器では私達の姿は映らない。そういうシールドを、それぞれが装備しているのだ ━
地球外物質は城水にゆったりとテレパシーを送り返した。