城水の右ポケットに入った物質の緑色光が消え、城水は歩き始めた。城水の脳内では数値の乱数表とグラフで示された解析データが駆け巡る。どうも仲間達は世界各地に散らばっているようだ…という結論の解析データを得て、城水は無言で頷(うなず)いた。自分もその一員だと認識したのである。
その日の放課後、城水は学校近くの空き地で最初の回収をした。動植物を含め、50種は、いとも簡単に採取出来た。城水は、それらを地球上にはない物質で出来た伸縮自在の捕獲袋へ収納し、伸縮させた。捕獲袋は異種多様な生物や死物を収納し、城水のテレパシーにより、一瞬にしてコンパクトな手の平サイズまで収縮された。
一学期の終業式が近づいていた。雄静(ゆうせい)はウキウキ気分で帰宅した。城水の帰りは捕獲作業で遅れていた。
「パパ、遅いわね。どうしたのかしら? ゆうちゃん、学校で何かあった?」
「別に…。あっ! もうすぐ終業式だって先生が言った」
雄静は先生が話した夏休みの過ごし方を詳しく話し始めた。里子は、訊(き)くんじゃなかった…と後悔(こうかい)した。
[ただいま…]
城水が帰宅したのは6時前だった。コンパクトに収縮させた無色透明袋は背広の内ポケットのなかにあった。外ポケットには地球外物質が入っている。当然、着がえは一人でせねばならない…と城水の脳内で計数文字が飛び交い指示を出した。城水は玄関で靴を脱ぐと、そそくさとキッチンを通過してクローゼットがある居間へ向かった。