「まあいいや…」
到真(とうま)とすれば、たちまち自分が困る出来事でもなかった。同じクラス仲間にはとても言えないし、今となっては幻(まぼろし)を見た・・とも考えられるのだ。先生が訊(き)きたいと言ったから早く登校したのに…と、到真は納得しながらも少し怒れていた。
職員室へ入った城水は自分の机へと座った。位置はすでにテレパシーでデータ化され、城水へ送られていた。
[ここだな…]
城水はデスク椅子へ座り、辺りを見回した。職員室の配置、構造、教師、その他の状況なども詳しく送られていたが、突発する事態には備えなければならない。何があろうとも、UFO編隊が地球を離れるまでの残余の日に、正体を見破られてはいけなかった。城水は徐(おもむろ)に腕を見た。職員達が登校するまで、まだ20分ほどあった。机の上の書類や机の中のものは一応、目を通す必要があると判断し、少しずつ目を通した始めたときだった。スゥ~っと突然、職員室へ現れたのは城水の様子を観察していたクローン[1]だった。
[これを渡しておくよう指令からの命令を受けた…]
クローン[1]は早足で城水が座る席へ近づくと、ひとつの装置らしき物体を机の上へ置いた。物質は手の平に収まる程度の小さな球体で、ゴツゴツしていた。
[この指示どおりでいいんだな]
[そうだ…]
クローン[1]は言い終わると、たちまち消え去った。城水は置かれた物質を手にした。