水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -51-

2015年09月16日 00時00分00秒 | #小説

[んっ? いや、なに…ど忘れだ、ははは…]
 城水は突発時の対応策の一つ、<暈(ぼか)し>を使った。テンションが低めだったから、こちらも少しハイへ上方修正した。
「そうなの? 若狭さんね、あの方、実はアレのコレのソレなのよ」
「アレのコレのソレって?」
「あなた…どこか悪いんじゃない。いつも分かってくれるじゃない」
「パパ、アレのコレのソレだよ」
「あらまあ! ゆうちゃんの方がお利口じゃない」
 城水は、すっかり守勢に立たされた。
[ああ! アレのコレのソレなあ]
 危うく感じた城水は、突発時の対応策の二、<口合わせ>を使った。本当のところ、さっぱり要領を得ず、分からなかったのだが…。
「そうなのよ。プライドが高いっていうかさ、負けん気が強いっていうか…」
[厄介(やっかい)なお方なんだな…]
 城水は里子の話で、いくらか理解度を増した。
「あらっ! いけない! もうこんな時間! あとはお願い!」
 里子は腕を見ると、慌(あわ)てて家を出ていった。城水は、ともかく里子の追及の手を逃れられ、ホッとした。
[この辺で雄静(ゆうせい)の友達はいるのか?]
 里子が作っておいたカレーをキッチンテーブルで味わいながら、城水はそれとなく雄静に訊(たず)ねた。


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