(34)でも取り上げたが、マスコミの力は計り知れない。風評(ふうひょう)となりやすい性質のもので、正しく迅速(じんそく)に伝わる場合はいいが、その内容が間違っていたり、過剰(かじょう)に盛られたりして広がるのは戴(いただ)けない。所謂(いわゆる)、風評被害であり、大きな社会問題となる訳だ。チェッ! そんなことがあったのか? ちっとも知らなかった…と悔(くや)しがった昭和30年代の方が遥(はる)かに幸せだったのかも知れない。知らないでよかった話題も多くあるからだ。^^
とある街路の交差点で偶然、出会った二人の男が立ち止まり、話し合っている。
「ほう! あの精肉店、店じまいか?」
「ああ。なんでも物流が滞(とどこお)ったかららしいぜっ!」
「食い物(もん)の物流が滞っちゃ、商売、やってけねぇ~もんなっ!」
「ああ。ほらっ! ここ最近、例の一件が巷(ちまた)に蔓延(はびこ)ってるだろっ!?」
「そのせいで、かっ!?」
「ああ、完全な風評被害だぜっ!」
「マスコミも困ったもんだっ! 俺なんか昔人間だから、必要がない新しい情報は知らないことにしてるっ! 特に悪い方はテンション落とすからなっ! ははは…」
「スル~~かっ!? そりゃいいっ!! 俺もそうするよっ!」
「ああ、悪いことは言わんっ。そうしなっ!」
「どうだい!? 軽くキュッ! と一杯っ?」
「おっ! いいなっ!! 新しくできた居酒屋でいい店、知ってんだっ! 安くて美味(うま)いっ! 風評じゃないぜっ!」
「実況見分だからなっ!」
「ははは…重い調書だっ!」
「ははは…」「ははは…」
二人は笑いながら繁華街の方へと歩き出した。
疲れる風評を避(さ)けるには、情報に頼らない実地が一番! という結論に至(いた)る。^^
完