goo blog サービス終了のお知らせ 

水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (47)義務

2021年03月28日 00時00分00秒 | #小説

 義務というのは、考えるだけでも実に疲れる。^^ むろん、考えずに聞いただけで疲れる方もおられるだろう。^^ では、義務を課せられ疲れないためにはどうすればいいか? という解決法の問題となる。今日はそんな一例になるお話だ。^^
 とある町役場の町民課の窓口前である。二人の老人が待つでなく待合用の長椅子に座り、語らっている。対峙(たいじ)して窓口に座る窓口係も、『あんたらっ! ここは喫茶店じゃないよっ!』とは思うが言える訳もなく思うにとどめ、迷惑げな下目線で二人をジロリ! と一瞥(いちべつ)する。
「ははは…確かにっ! 国民の三大義務ですからなっ! 仕方ありません…。ただ、疲れますなっ!」
「ははは…疲れます。教育の義務[26条2項]、勤労の義務[27条1項]、納税の義務[30条]です」
「偉(えら)く詳(くわ)しいですなっ!」
「私、こう見えましてな、実は元検事でして、法律方面は少し五月蠅(うるさ)いんですよ、ははは…」
 窓口係は、『えっ! あんた…元検事っ! 見えない、見えないっ!』とは思うが、言える訳もなく思うにとどめ、迷惑げな下目線で二人をジロリ! と、また一瞥する。
「ほう! さようで…。ご縁(えん)とは不思議なものですなっ! 私、こう見えまして、実は元弁護士ですっ!」
 窓口係は、『えっ! あんた…元弁護士っ! 見えない、見えないっ!』とは思うが、言える訳もなく思うにとどめ、迷惑げな下目線で二人をジロリ! とまたまた、一瞥する。そして、『見えない、見えないっ! 二人とも見えないっ!!』と確信して、またまたまた二人を一瞥する。一瞥し過ぎて疲れる訳である。^^ 語る二人は納税の義務を果たした後(あと)だからペラペラと語り続け、義務の疲れを発散したのか疲れることがない。
「おっ! こんなところで長話(ながばなし)をっ! 迷惑になりますから、そこら辺(へん)でお茶でもどうです?」
「いいですなっ! それでは、参りますかな…」
 二人はようやく長話をやめ、町役場を出ていく。窓口係は、『迷惑、迷惑っ! もう十分に迷惑っ!』と、またまたまたまた、二人の後ろ姿を一瞥する。
 義務で疲れる場合には、二人で語り続ければいい・・という解決法の一例である。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする