物事が変化するには、すべてにそうなるだけの原因が存在する。病気になるには病気になる、疲れるには疲れるだけの原因があるということになる。病気の原因を取り除けば病気は完治(かんち)するし、疲れる原因を取り除けば、疲れないで済む訳だ。ただ、男性がもてない、女性が好きだと告白されない・・という原因までは、今、流行(はや)りのAIでも個人的な細々としたデータを集積したとしても分からないだろう。^^
春めいた一日、ポカポカと暖かな日差しが射し込む午後のひととき、二人の老人が縁側廊下の座布団に座り、茶を飲みながら話をしている。
「うちの息子がそう言っとりました」
「ほう! 倍、疲れると?」
「なんでも世間はコロナ、コロナで、仕事が難(むずか)しいそうですわっ!」
「そういや、世間もマスク、マスク姿ですなっ!」
「はいっ! してないと変な目で見られ、倍、疲れますっ!」
「ははは…してる方が変なんですがなっ!」
「まあ、変なことが罷(まか)り通るご時世ですから…」
「それは言えますっ!!」
「正義が勝つ訳ではなく、勝った方が正義という話によく似てますなっ!」
「そうそう! むろん、近隣で蔓延(まんえん)している場合は別ですが…」
「原因はなんなんでしょう?」
「原因ですか? 原因は治療法が見つからないからでは?」
「いやいや、もっと根本的な原因があるように思いますよっ!」
「どんなっ?」
「菌が強くなった原因ですよ、ははは…」
「なるほどっ! その原因を取り除かないと、また発生しますかっ?」
「はいっ! おそらく…」
二人の老人は沈黙して餅(もち)を頬張った。
「そういや、原因は分かりませんが、この餅、スーパーで見かけなくなりましたなっ!」
「すると、これが最後の餅ですか?」
「ええまあ、そうなりますかなっ!」
原因とは複雑で、解明するには孰(いず)れにしろ疲れるのである。^^
完