水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (45)罹患(りかん)

2021年03月26日 00時00分00秒 | #小説

 最近、覚えた言葉に罹患(りかん)という言葉がある。^^ 知らないと疲れないが、知ってしまうと疲れることが実に多いというのは困ったものだ。雨の一日、今日は病院からこんな馬鹿馬鹿しいお話を書いている次第である。^^
 とある公園である。すっかり春めいた快晴の昼過ぎ、一人の老人が傘をさしてベンチに座っている。晴れた気候なのだから、誰の目にも奇妙に映(うつ)る景色だ。そこへ、もう一人の顔馴染みの老人が近づいてきて、さも当たり前のようにベンチへ座った。
「やあ、どうもっ!」
「ああ、いつもの方ですな、ははは…」
「今日は雨傘の方ですか?」
「んっ? あっ、しまった! 間違えました。今日は日傘でしたな、ははは…」
「罹患ですなっ!」
「罹患っ!?」
「ははは…最近、医者の孫から教(おそ)わった言葉です」
「お孫さんはお医者様で?」
「はい! なにやら、ゴチャゴチャやっとります…」
「罹患ですか…。私もいい勉強が出来ました、ははは…」
「小難(こむずか)しい言葉は疲れるもんですなぁ~」
「はい、さようで…」
「知らない方がよかったですな。罹患しましたよっ!」
「ははは…疲れましたか?」
「はい、罹患ですっ! ははは…」
「何かにつけ、知らん方が罹患しませんなっ!」
「はいっ! 疲れることがないっ!」
 全(すべ)て知らない方が罹患せず疲れないで済む訳だ。^^

                   完


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