水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (34)マス・コミ力(りょく)

2021年03月15日 00時00分00秒 | #小説

 私が勝手に名づけた用語にマス・コミ力(りょく)という言葉がある。マス・コミとは、言わずと知れたマス・コミュニケーションを短縮した言葉で大衆伝達を意味することは皆さんもよくご存じのことと思う。詳細はテレビやラジオ、雑誌、インターネット、新聞、書籍etc.を駆使して、不特定多数の大衆[マス]に大量の情報を伝達することである。その影響力は計り知れず、60年ばかり前と比較すれば、極端に増幅していることが分かる。結構なことだが、知りたくもない内容、間違った情報などが尾鰭(おひれ)を付けて社会に広がるのは如何(いかが)なものか…と少なからず疑問に思えてくる。^^
 とある普通家庭の夕暮れ時である。この家のご主人が勤めから帰宅し、ひとっ風呂(ぷろ)浴びたあと小皿の肴(さかな)を摘(つ)まみながらビールを飲んでいる。テレビは報道ニュースをアナウンサーが深刻そうな顔で語っている。
『昨夜、○○市の繁華街で夕食用の焼き魚を猫に咥(くわ)え去られた主婦が、追っかけていた途中、電柱に追突し大怪我をしました。ただちに病院へ搬送されましたが、命には別状ないようです』
「猫も、なんかなかやるじゃないかっ! …どぉ~~でもいいニュースで疲れるだけだな…」
 ご主人は疲れた顔でリモコンのボタンを押し、チャンネルを変えた。○○市は、この普通家庭からは遥かに離れた県の市で、ご主人には余り関係がなかったのである。^^
 その後、全国各地では猫の盗難防止用グッズが飛ぶように売れることとなった。新型コロナウイルス用のマスクのように…。
 このように、どうでもいい内容がマス・コミ力でウイルスのように蔓延(はびこ)れば、人の心は疲れることになる。^^

                   完


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