水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (46)重荷(おもに)

2021年03月27日 00時00分00秒 | #小説

 心理[メンタル]面も含め、荷(に)は重いより軽い方がいいに決まっている・・というのが、重荷(おもに)に対する普通の見方である。今日はそんな重荷のお話だ。^^
 とある空港近くの喫茶店である。二人の観光客らしき二人の男がコーヒーを啜(すす)りながら話をしている。
「次の便まで、まだ50分ばかりありますよっ!」
「私にそんなこと言ってもらってもっ! バスが遅れちゃったんですから…」
「まあ、そらそうなんですがねっ! …それにしても大きな荷物ですなっ! 重荷になりませんかっ!?」
「ほっといて下さいっ! 私ゃ、これくらい持って出ないと安心できない性分なんですからっ!」
「そうでしたか…。知らぬことで、どうもすいません」
「いや、謝(あやま)ってもらうほどのことでも…。それにしても、あなたの方は小さな荷物ですねっ!」
「はいっ! 私は持って出るものが多いのが重荷で、疲れるんです」
「ははは…軽荷ですか。私は軽いと疲れるんです。まったく逆ですなっ!」
「確かに…」
 二人はその後、コーヒーを二度ばかりお替りして旅立った。
 重荷になるのは、軽い場合もある・・というお話である。^^


                   完


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