眠気(ねむけ)とは妙なもので、予想していなかったとき、突如として襲ってくる。年齢を重ね、中年を過ぎると、頓(とみ)にその傾向が強くなる。これだけは、誰に文句をいう訳にもいかないから、どぉ~しようもなく、腹立たしい。^^
とある町役場に勤める丸太(まるた)は、名のとおり、木のように丸く太り、丸太そのものの体格の中年男だった。
「丸太さんっ! 丸太さんったらっ!!」
昼過ぎの眠気に襲われ、ウトウトしている丸太を揺り起こしたのは若い女子職員の百合川(ゆりかわ)だった。
「…んっ!?」
「課長が見てますよっ!」
「…課長がっ!?」
百合川に窘(たしな)められた丸太は一瞬、課長の毛無(けなし)をチラ見した。そのとき、タイミング悪く、目と目が合ってしまった。丸太はおもわず愛想笑いをし、軽く頭を下げた。毛無は顔を赤くし、茹蛸に近い顔で怒っている。それもそのはずで、丸太が眠気でウトウトするのは毎度のことで、その都度、毛無に怒り顔で見られていたのである。
その顔にめげないで働く丸太は、百合川の怒り顔に、いつの間にか気にならないワクチンのような耐性が出来ていたのである。ただ、眠気だけは益々、強まるばかりで、これだけは丸太にもどうしようもなかった。
生理現象ばかりは、誰もがめげるようである。^^
完