水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

めげないユーモア短編集 (18)コツコツ

2022年10月20日 00時00分00秒 | #小説

 お笑い芸能の有名どころが謳(うた)い文句のように言っておられたが、物事をコツコツと、めげないで続けることは小事ながら大事なことである。━ 千里の道も一歩から ━ という格言めいた言葉もあるように、小さなことからコツコツ始めないと、物事が達成されないのは事実に違いない。それが分かっていながら、この男、横川も草刈り機でバリバリと草を刈り始めた。夏に向かう梅雨時である。いくらバリバリやったところで、根が残っているから、数日もすれば刈り始める前以上に伸びることは予想されていた。それでも、しないよりはした方がいいだろう…くらいの軽い気分で横川は刈り始めたのだった。半ば諦(あきら)め気分の作業なのである。
「横川さん、ご精が出ますな…」
 突然、近くの畑の立山が鍬で畑の畝の草を除草する手を止め、かけなくてもいいのに声をかけた。
「ああ、立山さん。おはようございます…」
 横山は罰悪く、返した。よぉ~~く考えれば、少しも罰悪くないのだが、なぜか横川はそう返していたのである。機械は動いて草を刈っているが、自分は機械を動かしているだけだ…と一瞬、深層心理で思えたのである。だが、次の瞬間、今の時代、自分の考えは理想だな…と思い返した。
「私の畑と違い、かなり大変でしょう」
「ええ、まあ…。コレが手放せません、ははは…」
 横川は立山の助け舟に乗せてもらい、めげないで草刈り作業をふたたび始めた。
 めげないでコツコツやるといっても、コツコツ熟(こな)せるだけの手段が必要・・ということになる。^^

                   完


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