世の中には時流という時の流れがある。その時代独特の流行の傾向である。この流行に逆らえば、世間から白い目で見られる。白い目よりは黒い目で見て欲しいものだ。^^ 人は白い目で見られるのは嫌だから、どうしても時流に流れようとするが、中には反発する人もいる。だが、時流という流れは大きな流れだから、自分一人が抗(あらが)っても、どうにもならない。それでも、めげないで抗う人は、やはり白い目で見られる。黒い目で見られなくても、せめて黄色か赤い目で見て欲しいものだ。^^
とある時代、とある夕方の学生街である。学生目当ての食堂や本屋が軒(のき)を連ねている。食堂前の通りを二人の若者が歩いている。どこから見ても学生には見えない夜間大学生で、仕事を終え、早めの夕食のあと、これから講義を受けるようだ。
「いや、俺は時流に逆らわん。っていうか、逆らえんからなっ! 気分だけだっ」
「それは、そうだっ! お前は公務員だからな…」
「この大学はバリケード封鎖してる反体制の学生が多いが、俺はな…」
「奴らも、就職に差し障(さわ)りがあるが、めげないで頑張ってるんだぜ」
「だな…」
会話は途絶え、沈黙したまま二人は大学の裏門を入っていった。
誰もが多かれ少なかれ時流に逆らい、めげないで生きているのである。^^
完