今日はフランスの作家で、シャルル・ド・ゴール研究所初代理事長でもあったオリヴィエ・ジェルマントマの著書「日本待望論」よりお伝えします。
ジェルマントマは、世界に比類なき精神文化と幸福な平等社会を作り上げてきた日本を愛した一人です。世界の模範となり得べき日本であれと日本人を鼓舞し、めざめよと𠮟咤激励した人でもあります。
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私の訪日は今回で五度目になります。
かくも貴国再訪の熱意に燃えたわけは、荒廃の極に達した現代世界において日本の果たすべき役割はたとえようもなく大きいと予感させられているからにほかなりません。日本民族の勇気、万民安寧の礎たらんとする熱い真心、自然や神々との緊密な結びつき、歴史の連続性、文化の奥深い独創性などからして、日本こそ、明日の文明の座標軸の一つとなってしかるべきではないでしょうか。
これは、初めて貴国を訪ねたとき以来、直観として我が胸に宿ったところのものであります。いまから23年前、ある輝かしい春のことでした。私は、ありありと見てとったのです。日本人というのは地球上最強力の活力に満ちた国民であり、その文化は、新時代の知のいかなる条件にも即応できる性質のものである、と。
人類の疫病神たるソ連体制が崩壊し、暴力とセックスと金の泥沼に咲く唯物主義的サブカルチャーの画一化時代が到来するに及んで、我らが地球は、もしも文化的・精神的に新飛躍をとげざるかぎり明日はないも同然という事態に至りました。
しかし、日本には、豊饒(ほうじょう)なる過去があり、現下の危機も根底までくつがえすには至らないほどの経済的バイタリティに満ちているのですから、いまこそ国民が自己信頼を回復し、自らの「特殊性」を発揮すべき時が到来したと見るべきではありますまいか。
日本の皆さんにあてて、こうして筆を執ったのも、そのためにほかなりません。現代人をして守銭奴以外の何者かたらしめるためには世界は日本を必要としていると、こう言いたいのであります。
今世紀末に臨んで、世界にほとんど感動の種は尽きました。戦争、飢餓、腐敗堕落は猛威をふるい、かたわら、富める者は不浄の財宝にあぐらをかいて、ますます富める者となり、若者たちは、神聖なるものから切り離されて、ドラッグに夢をつむぐばかりです。
諸大国に何があるというのでしょうか。アメリアは放漫にも得手勝手な価値観を押しつけてやまず、低俗な文化形態を地球上の端々までばらまいて恥じることがありません。ヨーロッパは黙々と統一を模索中なるも、これを見いだすにはまだ未知の試練を幾つも経なければなりますまい。
中国ときては、闇雲に覇権の誘惑に駆られているていたらくで、現状においては、人間を豊かならしめるいかなるモデルをも提示できていません。
日本のための席は空いているのです!
よく伝統に忠実たらんとするならば。アメリカ的モデルの幻惑から目覚め、力で成り上がろうとする誘惑を脱して、断固、政治的主権を再び掌中に握りしめさえするならば。
いまや世界は、精神的にも文化的にも空洞化しています。日本文化は、開かれたものであり、ドグマの虜とならないという特性を持ち、そのことによって貴国は史上初めて、普遍的メッセージを世界にもたらしうる位置に立とうとしているのです。
---owari---
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