人生の再建について、
第一に、マイナスの思いというものをストップする、ということを述べました。
第二に、いろいろな成功や失敗の原因の例を他に求めて研究する、という話をしました。
そして、他の人の成功や失敗を研究した結果は、当然ながら自分自身に返ってきます。
「自分はどうなのだろうか。自分自身、客観的に見てどうなのだろうか。こういう心境で、こういうやり方で、こういう能力で、はたしてこれで幸福になれるだろうか、成功できるだろうか。考えてみると、自分の危ないところはここだな。性格的にはここが危ない。仕事の仕方では、ここが危ない。対人関係では、ここが危ない。したがって、成功している人からいくと、ここをこういうふうに変えていくのが本筋なのだな」――こういうことを学ぶことです。この研究心は、ひじょうに大事です。
しかし、これだけではまだ充分ではありません。マイナスの思いを止め、そしてしっかりと研究したら、次にやるべきことは、当然ながら、向上に向っての出発です。さらに発展していく道を選んでいかなければなりません。
では、そのときにどうするか、何がいちばん大事であるか。それを述べましょう。
それは「志」だと私は思います。志です。理想です。これなのです。これがなければ、いくら研究しても向上しないのです。発展しないのです。研究の次にあるものは、この志なのです。「理想を高く持って、やっていくのだ」と思うことなのです。
この理想を描く能力、志を持つことができる能力、これは、人間として生まれて生きていくなかでの、最大の才能の一つでもあるのです。現にそういう結果が出ていなくとも、過去の実績から見たらそうでなくとも、しかし、志がまだあるということは、それは大いなる才能なのです。志があるということは才能なのです。自分には、この才能がまだあると思わねばなりません。すべては、そこから始まっていくのです。
ですから、どのような不幸に打ちのめされても、マイナスの思いは発さず、そして他の人のものをよく研究し、自分自身についてもよく研究して、理想に燃えることです。志を向上へと持って行くことです。それが大事なのです。
この思いがない人は、どうしても、いま一歩を進めることができないのです。
頭がよくて、人柄もよいのに、成功しないという人がいます。人柄がよいというのは、最初に言った恨み心のない人でしょう。他の人びとを責めたりしない人のことでしょう。こういう方は人柄がよいと言えるでしょう。頭がよいというのは、研究熱心な人のことでしょう。研究熱心で頭がいい。でも成功しない。
そういう人に足りないのは、たいてい志です。なぜなら、その理想が情熱を呼ぶことになるからです。そして、そういう志を持っている人のところに、人は集まってくるのです。
世の中には、「どうすれば志が持てるのか」と訊く人がいます。「どうすれば理想に燃えることができるのか」と問う人も数多くいます。「どうすれば情熱を持って生きていけるのか」と問う人もいます。
しかし、そういう人たちへの答えは、たった一つの実例が出てきたら、それで充分なのです。たとえば、このブログを読まれているみなさんのなかに、一人、志の高い人が出てきて、熱情ある人生を示したら、これで、ほかの人たちへの説明はいらなくなるのです。
そうなのです。志というのは感化力を持つのです。他の人びとへの影響力を持つのです。人は、その波動に、その念いに、揺り動かされます。そして不思議なことに、その志が自分のなかにも宿るのです。「ああいうふうに生きてみたい」という気持ちが、宿ってくるのです。
したがって、こういう真実に目覚めたみなさんであるならば、手本を求めるのもよいが、自分がまず手本になってみようと思いませんか。不幸の底にあり、敗北の底にあっても、なお明るく生き、マイナスの思いを出さず、研究を重ね、さらに工夫をし、もう一度、挑戦していく。そして、高い志のもとに生きていく。みずからがそういう姿を見せることこそ、じつは多くの成功者を生み出していく秘訣なのです。
偉人の条件とは、ほとばしり出してやまない情熱であるように思います。挫折など、どこにでも転がっています。失敗など、どこにでも転がっています。自己憐憫に陥るような出来事、条件など、いくらでもあります。身体に関しても、才能についても、自分を憐れもうと思えば、いくらでも憐れむことができるでしょう。そのようなものは、世の中に掃いて捨てるほどあります。
そうではないのです。要は、掃き溜めのような人生環境のなかに生きようとも、そのなかで、いかに鶴のように生きるかということです。掃き溜めのなかでも、鶴のように生きられるかどうかなのです。それが大事なのです。そういう人が出てきてこそ、世の中は幸福に満ちた人びとでいっぱいになるのです。
人柄がよくても幸福になれない。頭がよくても幸福になれない人には、この情熱というものが必要です。それを教えてあげることが必要です。そうであってこそ、初めて幸福の扉というものは開いていくものなのです。
---owari---
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