このゆびと~まれ!

「日々の暮らしの中から感動や発見を伝えたい」

幸せな日本の創り方~ 北野幸伯『日本の生き筋』を読む(前編)

2019年04月12日 | 政治・経済
今日は、無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』からの転載です。
国際関係アナリスト・北野幸伯氏の著書『日本の生き筋』を読まれたメルマガ編集長・伊勢雅臣氏のご感想です。少し長文になりますがあしからず。

―――――

■1.「日本は幸せな国?」
 ロシア在住28年の国際関係アナリスト北野幸伯氏は、ロシアの視点からのユニークな著作で弊誌にも何度も登場いただいているが、氏の新刊『日本の生き筋』はさらに視野を広げて、国民生活、国家経済を含めて我が国の目指すべき方向を論じた刺激的な著作だ。

 この本のまえがきは「日本は幸せな国?」という副題がついており、国連が発表している「世界幸福度ランキング」の2018年度版で日本が156カ国中54位だったというデータの紹介から始めている。ただ弊誌は、この手のランキングは評価項目の選択によっては、そんな順位にもなるのだろう、という程度にしか受け止めなかった。

 しかし、その後に紹介されている「イシキカイカク大学」の案内ページに載っていたという次のデータには愕然とした。

 ・教育への公的支出:最下位(34カ国中)
 ・日本人の労働生産性:最下位(主要先進国中)
 ・平均睡眠時間:最下位
 ・日本企業の社員の「やる気」:最下位クラス
 ・仕事にやりがいを感じている:最下位
 ・世界の仕事満足度調査:最下位
 ・自国に対する誇り:最下位
 ・自分自身に満足している若者:最下位
 ・将来に明るい希望を持っている若者:最下位

 これでは幸福度54位というのも無理はない。特に「やる気」「やりがい」「誇り」「希望」という精神的満足度の低さに、筆者としては、若い世代に申し訳ない、と思うばかりだった。

■2.ロシアで出生率を大幅に上げた秘密
 しかし、慙愧(ざんき)の念に浸っていても仕方がない。幸い、この本で北野氏は総合的な、かつ説得力のある「幸せな日本の創り方」を提言している。こういう議論を活発に繰り広げる中から、「希望」や「やる気」も湧いてくるはずだ。

 その「幸せな日本」を創るための最重要課題が少子化問題であろう。よく少子化とセットにされる「高齢化」は国民が長生きできるようになったという点で、「幸せな国」への一里塚である。あとは健康寿命をさらに伸ばして、元気なお年寄りを増やし、その元気を職場や地域で活かせるような仕組みを作っていけば良い。

 逆に「少子化」は国民の気持ちを暗くさせ、未来への希望と活力を奪う問題である。この点で、北野氏は「少子化問題は解決可能」として、ロシアでの成功例を紹介している。

__________
 1999年、ロシアの人口は、「年間70万人」という超スピードで減少していました。
「このままだとロシアは消滅する」と、マジメに心配している学者もたくさんいたのです。この年、ロシアの合計特殊出生率(JOG注:一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均)は、なんと1.16だった。

 ところが、2012年は1.69、13年1.71、14年1.75、15年1.75!
 死亡率の低下も手伝って、人口が「自然増加」し始めている。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 日本の出生率がここ数年1.4程度で低迷していることに比べれば、ロシアは日本よりはるかに低い水準から、一気に抜き去ったのである。

 出生率を急速に上げた政策の一つは「母親資本(マテリンスキー・カピタル)」という制度だった。これは子供が二人生まれたら、平均年収の2倍くらいの大金が支給され、住宅関係(住宅の購入、修繕など)や教育関係に使える、というものだ。

 出生率回復の成功例はロシアだけではない。フランスの出生率も90年代から一貫して上昇し、先進国では珍しく2006年には2.0を超え、以後、その水準を保っている。そのために効果のあった対策がやはり子供が二人以上生まれた家庭への手厚い経済的保護である。

「育児休業手当」(二人目の子どもが生まれると、3歳になるまで母親が仕事を休んでも月6万5千円程度が支払われる)、「乳幼児受け入れ手当」(子供が0歳から3歳まで受けとれる)、「家族手当」などがあり、子供二人の家庭では年間6百万円近くとなる。こんな手厚い保護があれば、子供を産みたい家庭は経済的制約に縛られずに出産・育児に取り組めるだろう。

■3.日本版「母親資本」の提案
「母親資本」の日本版として北野氏が提案するのが、「三人子供を産んだ家庭には、住宅購入資金2000万円まで支援します」という制度である。たしかに日本の都市部では3人も子どもを育てられるような広い住宅を持つこと自体が難しい。しかし、2千万円もの補助が出れば、それも可能だろう。

__________
「財源どうするんだボケ!」
そんな声が聞こえてきます。
別に2000万円、一括でその家族にあげなくてもいい。

「住宅購入資金のローン(たとえば30年)を、2000万円まで国が肩代わりします」
・・・
 すると、「三人子供を産んだ一家庭」につき、国の月々の負担は、月7万円くらいでしょう。
 子供一人あたりの支援額は、月2万3333円となります。

 これなら、「財源どうするんだボケ!」という人も、「非常に現実的なプランです」となるでしょう。

 これを実行すると、関わる人みんなにメリットがあります。
・三人生んだ家族=夢のマイホームが手に入って幸せ
・銀行=国が払ってくれるので、とりっぱぐれない
・国=出生率が劇的に高まり、未来は安泰

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 まさに「三方良し」だが、さらに言えば、住宅への需要が高まることで住宅産業や家具・家電業界、出産や育児の需要増から病院、保育園、幼稚園、学校なども潤う。まさに国全体を明るくする対策と言える。

 それでも北野氏はアナリストらしく、この支援策の「リターン」まで計算している。詳細は本書に譲るが、3人の子供たちが成人して、所得税などを払うことによって、生涯で8千万円近くのリターンを国は得られる。2千万円の投資で、8千万円のリターンがあるとは、まさに「とんでもなくおいしい投資」なのである。

 出産と育児を保護する少子化対策はそれほどの巨大なリターンをもたらす。それに気がついているからこそ、ロシアやフランスは子だくさん家庭への手厚い保護をしているのである。

---owari---
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本が衰退していくのは決ま... | トップ | 幸せな日本の創り方~ 北野幸... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治・経済」カテゴリの最新記事