① ""コラム:目標破綻は不可避か、地球温暖化の厳しい現実""
[ロンドン 16日 ロイター] -
クリーンなエネルギーシステムがこれほど喧伝(けんでん)されているにもかかわらず、大気中の二酸化炭素(CO2)は急速に増え続けており、改善の兆しは見られない。
(地球環境)
4月16日、クリーンなエネルギーシステムがこれほど喧伝(けんでん)されているにもかかわらず、大気中の二酸化炭素(CO2)は急速に増え続けており、改善の兆しは見られない。コペンハーゲンで2009年撮影(2019年 ロイター/Pawel Kopczynski)
大気中のCO2濃度が上昇を続ける中、気候変動防止目標は手の届かないものになっており、政策担当者らは居心地の悪い選択を強いられるだろう。
このままCO2濃度が上昇し続ければ今世紀中には、気温が現在よりかなり高くなる世界に向けた計画を練るか、大気中からCO2を除去するため未検証の戦略に頼らざるを得なくなるだろう。
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の締結国は、地球の平均気温が産業革命以前の水準を超えて上昇することを阻止すると宣言。
同条約に基づき2015年締結されたパリ協定では、署名国は地球の平均気温の上昇を摂氏2度未満に抑えること、さらに摂氏1.5度に抑えるための努力を推進することを公約している。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に助言する科学者らの試算によれば、これらの上限設定は、大気中のCO2濃度が450ppm(2度以下)または430ppm(1.5度以下)を超えないことを意味している。
だが現在の動向から考えれば、2020年代後半から2030年代後半には、こうした上限値に達してしまう。エネルギーシステムとグローバル経済に大規模な変更を加えるには、あと10─20年に満たない時間しか残されていないことになる。
だが、エネルギーシステムの進化ペースは遅いことで有名だ。家電製品や産業機械、発電所、パイプライン、送電システムといった長期に及ぶ設備投資に組み込まれているからだ。
現在使われている設備の予想耐用年数と更新ペースの遅さを考えると、今後20年間にわたって大気中のCO2濃度を430─450ppm以下に抑えるシナリオを描くことは、ますます困難になってくる。
ハワイ島マウナロア山での計測によれば、大気中のCO2濃度は2019年初めにすでに約410ppmまで上昇している。10年前は387ppm、観測開始した1958年には314ppmだった。
これとは別に、世界各地の観測ネットワークが海面で計測した大気中のCO2濃度は、2018年が平均407ppmで、10年前の385ppm、1980年の339ppmから上昇している。
米政府機関である地球システム研究所によれば、地球の平均CO2濃度は、過去10年間で年平均2ppm以上、つまり1年に約0.6%のペースで上昇しているという。
重要なのは、観測からは、大気中のCO2濃度の上昇が減速し、いずれ横ばいになるという兆候が見られない点だ。
これまでの推移を考えると、CO2濃度は政策担当者の設定したパリ協定の目標を超過し、地球の平均気温も2つの目標を超過してしまうことはほぼ確かなようだ。
どちらも数10年間、目標値をオーバーシュートした後、今世紀後半に目標値に向けて戻り始めると、IPCCの「Mitigation of climate change」(2014年)は予想する。
IPCCに助言する科学者らは、地球温暖化を長期的に摂氏1.5度以下に抑えるには、いずれにせよ、すでに大気中に放出されたCO2を何らかの方法で回収する必要があることを認めている。
今世紀後半の数十年間で、1000億トン─1兆トンのCO2を回収する必要がある、とIPCCの「Global warming of 1.5 degrees Celsius」(2015年)で同科学パネルは説明する。
CO2回収には、植林、森林再生、土地再生、大気中CO2の直接的な回収・貯留などの戦略がある。だがこれまでのところ、どの方法についても、求められる規模に近い条件で商業的に実現可能かどうかは確認されていない。
とはいえ、CO2目標の破綻が迫っていることは、エネルギーシステムが政策当局の設定する目標からどれほど乖離しているか、現在の傾向がそのまま続けば地球温暖化がどれほど現実味を帯びるか、政策担当者がそうした結末を避けたいのであれば、どれほどの努力が必要なのか、こうした事実を如実に示している。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)