サブタイトル「 福島原発事故-ー 利益誘導システムの破綻と地域再生への道」
著者は福島に住んで31年、3.11以前も原発について社会科学の角度から論じてきた。
自ら被災し、「原発被災地である福島県にいる者でなければ語れないような何かを表現したいという思い」をもったという。(あとがき)
「誰が事故の責任を負うべきか」と問い、《私の個人的な見解》と断りながら、「東京電力、政府、自治体、そして国民」のそれぞれの責任について言及している。特に「国民には全く責任がないのかといえば、そうは言えないと思う」として、「国民が歴代政府の政策を支持、(あるいは容認)してきたこと」についてもふれていることは、本当に重く受け止めたいと思う。
「原発の電気を大量に消費している都市の住民に責任の一端があることは言うまでもありません。」「無知であることにも責任がともなうのです。」と厳しく指摘している。いわゆる電源3法のシステムが、あの手、この手で、財政力の乏しい高齢化のすすむ農村に危険な原発をおしつけてきたこと、その財源は都市に暮らす私たちが電気料金とともに負担してきたことを、少なくとも私はこの本を読んで初めて詳細に知った。そして「無知であることにも責任がともなう」という著者の言葉を、自分のなかで、反芻する。
政府が国民をだまし続けようとしても、「知ろう」と思い、知る努力をすれば真実に近づけるのだから、「無知であること」に甘んじていることは許されない。そのことを痛切に感じた。
清水修二(国立大学法人福島大学副学長)
自治体問題研究所