本書のあとがきに「貧困は人を殺す」とあります。
これは、著者の志賀さんのお父様が2009年4月に「仕事が嫌い」との書き物を残して自死されたことを表しています。
仕事が嫌いなら転職すればよいのだけど、家族がいて住宅ローンがまだまだ残っていたら、弁護士や、医師、看護師のような職種についている人でない限り、それができる人はほとんどいないだろう。
つまり、自由がないということです。
仕事がきつく賃金の低ければ、そうでない仕事に移ればよいのだけど、普通はなかなかできない。
貧困の本当の原因は経済的なものではなく、自由がないことにある。
非正規の人はずっと自分の労働力を安売りすることを強いられて、そこから抜ける自由はない。そのような人たちの集まりが就職氷河期の人びと。
就職氷河期の人びとは人数の多い団塊ジュニア世代だったから、その中で何百万のも人がとてもじゃないけど、結婚して家族を作って、家を買ってなんてことはできなかった。
その結果、人口減少が予測よりも進んでしまっている。
今のままでは、就職氷河期の人びとが65歳を迎えると、貧困問題はもっと悪化するのは明白だけど、まともな対策が講じられる可能性は残念ながら、低いだろう。
本当に悲しいことだけど、これが今の日本社会。
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