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20代の終わりや30代の初めは、勤務医として体力的に一番頑張れる時。最先端の医療をどんどん身に付けて行き、救急現場で経験もどんどんしていけるので、病院ではなくてはならない存在になっている。しかし、その時には、女性医師の場合、ちょうど出産や育児との両立で悩むことになる(その前の結婚で悩んでいるケースもあるが)。
その実態に付いて、詳細に分析されてこなかったし、その対応は更に遅れてきている。厚生労働省は、医師を増やすことを決めたが、大学に入学してから彼らが実践でフルに活躍するまでには、10年も要する。待てない。その前に、育児後の女性医師をどう生かすかが問題で、それは、医師不足の折、極めて大事な問題となるはず(65歳以上の医師も、それなりに上手に使うべきだと思うが)。
病院勤務の女性医師が、育児後に医師としてどう関わっているか、・・・ある調査では、パートに変更したのが30%、開業などに変更したのが50%で、元の病院勤務医に戻ったのは、わずか20%でしかなかった。これは、極めてゆゆしき問題である。しかも、勤務医時代にしていた当直は、出産をしてからは、わずか9%の人しかしていない。
現在、小児科と産婦人科の医師確保で問題になる理由として、若い小児科医の半分が女性医師で、若い産婦人科医の7割が女性医師で占められているからである。お産をし、育児も経験しているそれ等の医師の方が、男性医師よりもある面では優れている所があると思われるのだが。
育児後の病院勤務の女性医師の大半は、体力が続かない、(子どものことで休みなどをもらうと他の医師に)気兼ねしないといけない、周りに迷惑を掛けているなどと思って、深刻に悩んでいる。中には、上司から、「患者を取るのか、患者を取るのか」と詰め寄られたケースもある。一人が休むと、他の医師に今以上のしわ寄せが行く。そうでなくても、多くの救急病院の小児科や産婦人科では、激務の連続の日々だ。
ある男性小児科医がかって私に言っていた、「前の勤務の病院、4人中に3人が女性で、育児のしわ寄せが独身の自分に全部来て、断る訳には行かず、それも、突然ってことが多くて、もう女性とタッグを組んでしたくないです」と。
何故、こんなことが起きるのか。その理由の最大のものとして、「主治医制」の問題がある。つまり、日本の医師の大半は、自分の患者さんが悪い時、深夜でも病院に駆け付けて対応することが多い。少なくとも、携帯を持ち、連絡が付く様にしている例が大半だと思う。そんな状態では、どうしても、普段の過程生活が仕事に振り回されることになる。
今からの医療は、医師を増やして、チーム医療にすべきである(田舎は、無理だなあ。集約化で何とかそれをしのいでいるのが現状だが)。子育て中心の人には、昼間勤務だけにして、17時になったら、拘束を一切取って上げることである。病院の主治医制を複数にして、患者側にそれを納得してもらう必要がある。当直は、開業医から協力してもらう(大阪康生年金病院では、産婦人科の当直の7割を開業医が受け持っている。それでお産も50%アップで年間700人ほどになり、更には、その病院を希望する若い先生方が増えているとか)。
女性医師にとって、勤務する病院が、いつまでも魅力的な存在になっていることが、いい医療につながると思われる。
*写真と上の内容は、全く関係がありません。インドネシアのイスラム教徒の人が、お茶を点てています(私の弟子です)。