白井健康元気村

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心の元気と体の元気 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆㊸

2022-03-24 05:35:22 | 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆

【気まま連載】帰ってきたミーハー婆㊸

心の元気と体の元気

岩崎邦子 

 

 

「体の悪い所ってないんでしょ?」
 いつの頃からか元気そうな人を見ると、つい声を掛けてしまう私。
 すると、「血圧が高くて」「コレステロール値が高いの」「糖尿があって」とか「膝が痛くて」「腰が痛くて」と、何らかの体の不具合や気にしているという言葉が返って来る。
 そうだよね、高齢となれば体調であったり、体のあちこちに痛みが出てきたり、血液検査などで出る数値が基準値より高かったりして、何も気にすることが無い人など、皆無に等しいよね。
 後期高齢者となった身の私達夫婦、かつては問題点が山積していた。そのために夫は手術もしたし、私は体に見合った運動を続け、月に一度、二人で町医者に通う。
 夫は少し血圧が高かったことや、眠りが浅いとか、他にもなんだかあるらしいので、漢方薬とかを調合してもらっている。
 私の血圧は若い頃から今も低いので問題はない。でも、一時は悪玉コレステロール値と中性脂肪値が高めであった。
 そして、年を重ねて一番気になるのは骨粗鬆症のこと。転んでの骨折が怖いため、それらに合わせての薬を服用してきた。
 薬の効果などを知るためもあり、4カ月毎に血液検査を受け、つい先頃には夫も私も問題点はないとの結果が。
 ところが先日、服を着替えているとき、右脇の下に小さなしこりが手に触れた。
「あらら、乳がん?」
 数日経ってからも確かめると、しこりは消えていないし、少し痛みがある。
 夫が現役であった頃、会社関係の医療機関で人間ドックを利用していた。リタイア後は市が行う集団検診がある。 
 だから、乳がんの早期発見の仕方を学んだし、それがとても大事だということが、頭をよぎった。
 若い人や子育て中の人が罹患した場合には、その進行の速さが悲劇となる。例えば、歌舞伎俳優・市川海老蔵の妻だった小林麻央さんのケースだ。医師の診断ミスによる手遅れが、ずいぶん話題になった。
 高齢となられた美智子上皇陛下が、乳がん手術をされたとも。意を決した私は総合病院を訪れ、婦人科の前でしばし待つことに。
 初診なので問診票に気になることを書き込む。しばらくすると看護婦さんが私の前に立って言う。
「あぁ、ここではなく乳腺外科ですね。月曜と金曜の午前ですから、出直してください」
 そんなわけで、私の無知さが露呈して、あっさり診察拒否をされてしまった。
 月曜と金曜の午前は、私には予定があるし、お天気次第だなぁ…と、心の中で呟く。
 それから数日後、雨で予定がキャンセルになった。夫に「気になっていることがあるから」と告げ、覚悟を決めて乳腺外科の前で順番を待つことに。
 ひっそりしていた婦人科と違って、内科・外科・皮膚科・乳腺外科などが混在している待合室前の椅子に座った。
 それぞれの科の前にあるモニターに受付番号が出、呼び出しアナウンスもある。都合で、順番通りでないこともあるらしい。呼ばれて診察室に入るが、あっさり出てくる人もあれば、「え~、どれだけ時間がかかってるの~」の人もある。
 待つ間は長く感じるものだ。一様にマスク姿であるが、乳腺外科に来ている人では、多分、私が一番の高齢だろう。
 介護の人に手を引かれて診察を待つ人は、内科なのか、外科なのか。その動きや垣間見える表情から、認知がきているのだろうなぁ…。まだ若そうな男性は、常にうるさく妙声を発しているが、付き添っている介護士の男性は冷静な顔つきで対処している。
 やがて、両手で二本の杖を付きながら、一歩、一歩、やっとの思いで歩く女性を見て、ハッとした。あっ、Kさんだ。髪も乱れているし、体形も変わっているが、目元の面影から確信した。
 7、8年前にバス旅行で一緒だった彼女は私より1歳若いはずだ。以前にもスーパーマーケットの近くを、肩掛けバッグにおぼつかない足取りで、そろりそろりと歩く姿を見たことがある。周りを見る余裕などは全く無さそうだし、リハビリとして歩いているのだろうと思い、声を掛けられなかった。
 診察を待つ間の私は、人間観察をしてしまい、様々な思いが交錯してしまった。
 ようやく私の番号が出、アナウンスもあって診察室に入る。以前に婦人科に行った失敗談を話しながら、その後すぐにこちらの科に来れなかったなどと言うと、
「あなたは忙しい人なんですね~」
 と、医師は笑いながら一言。 
 私は1カ月程前からのしこりが気になることを話す。
「多分心配はないが、念のためマンモグラフィとエコー検査をしましょう」
 医師は両方の画像をのぞき込む。
「なんの心配もありませんね」
 そう言われたが、私には全く理解が出来ない。怪訝そうな私の表情に気づいたのだろう。医師は安心させるようなことを次々と言い始めた。
「こうした白い腺ではなく、癌であれば、くっきりと黒い斑点のように出ます」「何の自覚症状がない人でも、このような検査を年に一度くらいは、することが大事なんです」「それによって早期発見が出来ますから、このことは、知り合いに伝えてください」
 それでも私は不安だ。
「なぜ、しこりが出来ているのでしょう?」
 と、聞く。
 でも、医師の答えがはっきりしない。
「ひょっとして、ワクチンのせいかな?」と医師が首を傾げた。「で、どちらの腕に打ちました?」
「3回目の接種は右でしたが……」
「うーん、それかもしれない、きっと」
「そうなんですか…」
 少し腑に落ちないけど、私としてはそう言うしかない。。
 定期的に乳がん検診をすることの大切さを伝えたくて、久しぶりに娘にLINEで通話した。コロナ騒ぎのせいで、もう3年も日本への帰国が出来ていない。
 アメリカのサマータイム(夏時間)は、3月13日から始まっていた。東部、中部、山岳部、太平洋の4つの地区で時間が違う。娘たちの住む
東部だと日本との時差は13時間だ。

 こちらの午前10時にLINEしたのだが、娘は夕食の後片付けが終わったばかり。大学生の孫は昨日まで家にいたが、短い春休みが終わってアパートに戻ったという。今の悩みはガソリン代がうんと高くなったと嘆いている。
 私からは、「特に変わったことはないが、乳がんかもと思って婦人科に行ったけど、間違いだった」と伝えると、
「へぇ~、知らなかった。乳腺外科なんだ」
 と。ついでに
医師から「しこりはワクチン接種が影響してるかも」と言われたと伝えた。
「それは、ないでしょ、ない、ない」
 娘に笑われてしまった。
 さて、癌に関しては、大腸がんも胃がんも、その検査の仕方は、一昔とはすっかり様変わりしたようである。「苦しい」という人や、「いや簡単、簡単」という人も。でも、まだ私は経験をしていない。
 やがては血液や唾液の検査で、どこに癌があるのか、分かる時代がやがて来ることだろう。
 それまでわが命が長らえることはないだろうが……。
 ま、気になっていたことは、とりあえず無罪放免。春だ! 心も体も元気に過ごそう! 
 

 

【岩崎邦子さんのプロフィール】 

昭和15(1940)年6月29日、岐阜県大垣市生まれ。県立大垣南高校卒業後、名古屋市でОL生活。2年後、叔父の会社に就職するため上京する。23歳のときに今のご主人と結婚し、1男1女をもうけた。有吉佐和子、田辺聖子、佐藤愛子など女流作家のファン。現在、白井市南山で夫と2人暮らし。白井健康元気村では、パークゴルフの企画・運営を担当。令和元(2018)年春から本ブログにエッセイ「岩崎邦子の『日々悠々』」を毎週水曜日に連載。大好評のうち100回目で終了した。


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