NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

スカーフェイス

2010-04-28 | 休み
『グランセフトオート:バイスシティ』がリスペクトというかオマージュを捧げたというか、ぱくった元の映画だと『ゲームになった映画たち』で指摘されていて、ほんのりと興味があり観てみた。


scarface


観て驚いた80年代のロサンゼルスを舞台としているということもあるんだろうけど、それにしても主人公の名前もトニー。キューバからの形式上政治亡命者という設定以外、造詣とかはほぼ似ている。海岸沿いの風景なんてまんま『バイスシティ』。車や80年代テクノサウンド音楽もあいまってトニーはトニーにしか思えない。アル・パチーノが『バイスシティ』の存在を知って激怒したというのは至極最もな感じ。

内容的にも『グランセフトオート』みたいに当初はお使いミッションをこなして、徐々に”格”をあげてしのぎを渡って成り上がっていくという何ともなピカレスクでビルディングスロマン。そしてまんま『グランセフトオート』。『バイスシティ』以上にお使いミッションからストーリーを組み上げて行くというゲームデザイン自体も『スカーフェイス』から来ているのでは?と思わずにはいられない。土地や店を買って、経営とかもまんま。

話は本当にピカレスクロマンのビルディングスロマン。昔の劇画みたいなもの。端的に言ってしまえば、チンピラが小さい犯罪から徐々に大きな犯罪を犯し、裏社会の大物になって行く。ただこれで終わらないのが好いところ。極悪人ではあるけれど、家族思いで人殺しも厭わないが守るべき矜持は持っている。それが全ての足を掬うと。単なるバイオレンスに落ちていないのはやはりこういったトニーの人物描写が大きい。

過激といわれていた描写も序盤のトニーたちがはめられ、仲間が拷問を受けるシーンくらいにしか感じなかった。ラストの大銃撃戦も確かにバイオレンスで弾丸を打ち込まれてもなお戦い続けるトニーの立ち回りはまさに悪漢で圧巻。ラストの女々しいまでの生き様は本当に格好良い。妹との別離も。けれどラストのトニーの絶命シーンは作りこみすぎだなぁと思わないことも無い。マシンガンで後ろから撃たれて屋内プールに落ちるとか。


この悪漢の最後というのは『ゴッドファーザー パート3』に近い。というか、ぼくは『ゴッドファーザー』サーガはやっぱり3部作あってこそのものだと考える『パート3』肯定派だけれどマフィアモノ、ピカレスクモノと考えると『パート3』のラストも『スカーフェイス』のラストも非常に正統派。愛娘を奪われるマイケルと親友と妹、すべてを失うトニー、崩壊という点で非常に全うなピカレスクロマン。しかも両方ともアル・パチーノ。