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その男、凶暴につき

2010-04-27 | 休み
北野映画は『あの夏、いちばん静かな海』と『HANABI』くらいしか見ていないので本格的な北野バイオレンス映画は初めて。


その男、凶暴につき


前半、武こと我妻刑事が聞き込みに歩くシークエンス。ロケ地が横浜ということもあるんだろうが、朽ちたアパートを回るシーンや川を行く船から橋を仰ぎ見るカットなんかは殊更に『機動警察パトレイバー:劇場版』を思い起こさせる。しかも同様に忘れ去られた風景という批評性まで感じさせる。それほど似通っているいや、本当に。あの時期、ウォーターフロントって言うのが流行っていたからなのかも知れない。同時代性ってことなのかも知れない。公開年も同じだし。

遠景と個人に視線を当てるときの仰ぎ見るようなカメラ。雨の中陸橋を車が走るシーンとか武が白竜を詰問するシーンはとにかく格好良い。特に後者は前段の道を外れた刑事というキャラクターがよりピカレスク的な色合いを強くしてくる。そこを白竜の視点のような感じで武を仰ぎ見るように映す。密室空間での暴力の緊張感がすごく伝わってくる。そこでの小細工もまた卑怯で格好良い。まぁ他のシーンでも対峙したキャラクター単独でカメラを向けると少し下からあおったようなカットが多いけど。

主人公が破天荒で、暴力的でいて、一方で憂いが内在されていて良い。というか、大概の武映画の登場人物は憂いがあるっけ。無いほうが珍しいか。そういう魅力的なキャラクターが動くので本当に面白い。ただ不満なのはその暴力描写が少し遠慮がちなところ。執拗に暴力を振るうのだけれど、型は重いのに、描写としてはとっても軽い。ヒット感が無い。それはこの映画のすべての部分に当てはまっていて重さという点で少し物足りない。その代わりにさらっと楽しめるけど。


VシネっぽいけどVシネじゃない。日本のドラマでエリック・サティの音楽がやたら使われるようになったのって、この映画の影響なのか。20年以上前の映画だから当然だけれど、出演者がとっても若い。特に遠藤憲一が別人のよう。

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