運転手はまだシートに座ったままだった。
窓を叩いて様子を聞くと「首が・・・首が・・・」
とさすっている。首が尋常じゃなく痛いらしい。
出血はありそうかと聞くと
手、足を目だけ動かして確認し「なさそうです。」と
弱弱しい返事。グチャリといったダッシュボードに
幸いなことに足は挟まれていないみたいだった。
飲んでないな?の問いかけにしっかりと「ハイ」
飲んではいないらしい。呼気も匂わない。
飲んでたらそのままほっぽらかして帰ってくるつもりだったが・・・
救急とオマワリ呼んでやるからそのままジッとしとけ
とオイラの言葉に素直に「ハイ」
携帯電話で119・110と対応している間に
渋滞が始まっていた。だーいじゅうたい。
まもなく渋滞の間を縫って救急車が到着。
車内の彼に脊椎何とかという首の痛みを
抑える簡易ギプスを巻いてから彼を引きずり出し、
ストレッチャーに乗せて、救急車に詰め込み、あわただしく立ち去った。
タヌキが飛び出したらしい。それを避けようとハンドル
を切ったが結局タヌキを成仏させ、切ったハンドルを
戻しきれずにその前の電柱に真正面からディープキスを
お見舞いしたとのことだった。
これだけ車が変形していて、あの程度で済んだのだから
タヌキが身代わりになってくれたのだと思うしかないだろう。
タヌキは無残な骸を道路中央に晒していたが、あまりに
気の毒と思ったのか隣家の方が道脇に移動させてやってた。
その後、オマワリがちっとも来ないのでいる必要も無いと
判断し帰ってきた。彼の軽症を祈るばかりである。
そんな、さむいさむいさむい夜のウチの裏の県道での
出来事だったわけで・・・
オイラんちの周りってタヌキ出るんですか?