「はるばるきたぜ、ルーブルへ・・・の巻」
朝、私はカメラに高感度フィルムを入れていた。
事前に調べたところ、ルーブル美術館は写真撮影OKだ。
日本に比べるとすごい太っ腹である。
しかし、ストロボの強烈な光は絵の具の劣化と退色を引き起こす。
たぶんストロボは禁止だ。どこを調べてもこのことは記載されていな
かったが、私が館長なら禁止する。
私はカメラを抱えてシャンゼリゼ通りを東に向かった。
コンコルド広場が見えた。
凱旋門がシャンゼリゼの始まりなら、コンコルド広場は終わりである。
「広場」と名前がついているが、交差点である。しかもロータリーだ。
交差点の真ん中に噴水とベンチが置いてあり、オベリスクが立っている。
公園に入るのも出るのも、命がけだ。
私はここで何枚か写真を撮ろうと思っていたが、1枚だけ撮ってやめた。
こんなところで死んでられない。
ちなみにここから東にいくと、あまり有名ではないがもう一つ凱旋門がある。
コンコルド広場の交差点を南に曲がり、セーヌ川との突き当たりが
ルーブル美術館の入り口だ。
有名なガラスのピラミッドの入り口は、当時まだ完成していなかった。
さっそく入り口でチケットを買って入ろうと思ったが、開館しているのに、
販売していない。
たぶん、一週間の内1日だけ無料の日があるとガイドブックに書いて
あったが、今日だったもかもしれない。
お金のない学生でも勉強できるようにとのこと。さすが、芸術大国。
でも、ルーブルのチケットをゲットできなかったのは、少しさびしい。
入り口を入ってすぐ目に付いたのが「ストロボ禁止」の張り紙。
やった、予想通りだ。
ちなみに、ルーブルは写真はOKだが、原寸大の模写は禁止だ。
世界には、我々には想像できない天才がいる。
贋作を作るくらいの力量を持った人など、たくさんいるのだ。
入り口を入ってすぐ右に売店があった。
売店でガイドブックを買おう、と思っていたので立ち寄った。
売店にはガイドブックがたくさん平積みしてあったが、どれも同じだ。
よく見ると、それぞれの列に国旗がついている。日の丸もあった。
フランスの国旗のついているガイドブックをめくってみた。フランス語だ。
「すると、日の丸は日本語か?」
日の丸のついているガイドブックをめくってみた。日本語だった。
「フランスまできて、日本語のガイドブックはいらないよな」
そう思い、わざとフランス語のガイドブックを買った。
失敗だった。いまだに、何が書いてあるかわからない。
その他にも、イヤホン式のガイドの機械などもレンタルしていた。
もちろん日本語のガイドもある。さすが国際的な美術館だ。
よし、では行くぞ。
実は作戦を立てていた。「見ないところ」を決めていたのだ。
ルーブルは細かく見ると一週間かかる、といわれている。
とてもそんな時間は無い。
だから、始めから見ないところを決めたのだ。
たとえば、原始時代の石や土でできた器とか、やじり、骨などはパスした。古すぎるのだ。
なぜ、織田信長や徳川家康がおもしろいか、それはちょうど良い「古さ」だからだ。
全てが推測ではつまらない。歴史的事実がないと、おもしろくない。
エジプト文明もパスした。
ツタンカーメン(正確にはトゥト・アンク・アメン)の黄金のマスクでも
あるなら別だが、それ以外は同じにみえたのだ。
狙いは中世から近世にかけての西洋絵画だ。
もっともヨーロッパらしく、もっともルーブルが得意とする分野だ。
正面入り口に立った私は、右にいくか、左に行くか、正面の階段を上がるか迷っていた。
ふと、左をみると、つきあたりの部屋がとんでもない人だかり。
うしろ姿だが、半分おしりが出ていて、両手がない彫像。
「あれは・・・・まさしく・・・・・ミロのビーナス!」
急いで近づいたが、台座に乗っており、高い。見上げる感じだ。
また光線が、もろ逆光だ。時間が悪いのか、建物の位置が悪いのか。
色々工夫してみたのだが、結局顔は黒くつぶれてしまった。
私は階段を上がって2階にいった。
階段の中央には「サモトラケのニケ」の彫像があった。
この「サモトラケのニケ」を美術に興味のない人に説明するのは、むずかしい。
背中に翼がある女性の像なのだが、首から上がとれてしまっている。
そんな像だ。
2階いくと、キリストの絵がたくさんあった。
時代からいうと、だぶんバロック時代くらいであろう。
宗教絵画は聖書を読んでいないと、意味がわからない。
たとえば、「ピエタ」という絵が聖書のどの場面をさすかわからないと、
なかなか理解できないと思う。
「ピエタ」とは死せるキリストを抱いて嘆くマリアのことである。
さすがキリスト様、本物の金の絵の具を使っている。金ぴかだ。
ちなみに、キリストは実在したかどうかは不明だが、お釈迦様は実在した。
なぜなら、お釈迦様の骨があるのだ。
お釈迦様の骨を米粒大に砕いたものが「仏舎利」だ。
五重塔などのお寺の塔は本来は「仏舎利塔」であり、
有名なお寺はほぼ仏舎利を持っている。
塔の心柱の礎石の下に埋めるのだ。
どこかの寺の五重塔の修理の際、報道陣に公開された。
1粒数億円で寺院どうしで取引されることもあるらしい。
アングルやドラクロワが出てきた。
そろそろルネッサンスか。