先日の大会で予選敗退組のうちK君とちょっと話す時間がありまして、彼の現在の悩みを聞かされました。「良くも悪くもリリースポイントを一定にしたい」とのこと。悩みというか問題点が分かっているだけでも大したものです。打てない理由をそこだと思って直したいと考えているのでしょう。大抵の場合、打てない(スコアにつながらない)スランプの原因を見つけられないままもがくケースがほとんどです。というかk君の悩みももしかしたら見当違いなのかも知れません。
リリースを一定にするというのは本当のことを言えば永遠の課題とも言える重要なポイントです。むしろ一定にしない方がレーンにアジャストするので良いともいえるのです。 「リリースを一定」にするというのは「思ったところにボールを置ける」と言い換えることもできるでしょう。
それよりも問題なのはK君の投球方法そのものにあると考えています。彼の投げ方は空中でリリースしボールを奥のドットまで放り投げる投球です。プッシュアウェイもバックスイングもあまりやりません。ボールを抱えて腕の力のみで投球しているように見えます。ロフト気味ではあるのですが、完全なロフトボールでもありません。ただ確実に言えるのは「スキッドは短い」ということです。つまりはボールの特性を無視してしまいがちな投球方法です。現在のボールのほとんどはスキッドが長く設定されています。レーンのオイルに対処するためです。オイルに左右されない為の投球方法としては間違いではないと思いますが、せっかくのボールの特性が生かされないのではハウスボールを投げて「曲がらない」と悩むとの同じです。現在のボールは「曲がる」ボールがほとんどです。レーンもそういう風なオイルの引き方をしています。曲がることを前提にボウリングがあるといえるでしょう。太古のような曲がらないレーン・ボールで無理やり曲げる必要はないのです。自然にボールはショートフックになり落とし所さえ間違わなければポケットに入ります。その落とし所(スパットもしくはドット・板目)の読みが早ければ早いほどスコアアップにつながります。
ボウリングは最終軸足のそばからレーン上にボールを転がしていくという方法が99%です。たまに手前のオイルを使わないようにと遠くまで無理やり放り投げるやり方をする場合もありますが、常にそうしている人はほとんどいません。ツレの投球ではボールが着地する音はほとんど聞こえません。スーっとボールがレーンを転がっていきます。リリースの時の指のぬける音もありません。私はちょっとだけ落とし気味なので着地音がします。早すぎると軸足に当たるので痛いです。もっと早いと三歩目の右足膝付近にあたって痛いです^^;手投げになっていると特にそうなりがちです。失投というやつですね。レーンに早く落ちてしまった場合でもフィンガーに無理やり残して持っていきます。が、そういう「ごまかし」は何回もできるわけでもないし、やらない方がいいので次の投球では気をつけてそうならないように努力します。
K君の投球だと手前のオイルを無視する形になり、いつでもオイルの多い所を使うことになります。それが間違いだとは言い切れませんが、私は彼にこうアドバイスしました。
「もしかしたら自分に合った投球方法は思いもよらない方法になるかもしれない。体格や筋力、関節の強さなどによって、今とは180度違う方向に答えがあるのかも知れない。こうしたいという目標があるのは悪い事ではないけれど、もう少し視野を広く持っていろんな方法を試してみてもいいのでは?」といいました。まだ年齢も若いし、経験年数も浅いので直すならまだ間に合う状態だからです。PBAの選手のように左から右に出して思いきりフックさせる「クランカー」になるのかもしれないし、オーソドックスな10枚ー5枚付近から3枚ー1枚に出す、もしくはそのまままっすぐレーンを走らせるやり方があっているのかもしれません。
K君は以前に使っていたリスタイをはずした理由を自分の投球にあっていないからと言っていましたが、リスタイ自体が悪いわけではないと思うよと言うと、また俯いてしまいました。悪いものならこれだけ流行ることはないからです。なにかしら良い現象があるから使っている人が多いのでしょう?
特に私のツレは長い間別の方法をやっていましたが、ボール回転数はそのままでスピードを上げたいという理由で、息子のやっている「ケーゲル方式」を取り入れることにしたのです。最初の三カ月ほどは悲惨でした。自分でもやめようか元に戻そうかと思ったそうです。でもスコアに結び付かないまでもスピードは確実に上がってきているので、このままリリースを安定させること(ボールコントロールを確実にする)が出来ればいいのにと思って練習を重ねた結果、現在はだいぶ慣れてきたようです。
今までの自分を捨ててまで挑む理由はどこにあったのでしょうか。たぶんそれが「向上心」なのだと思います。
K君の師事するプロの投球法は以前に私も習いましたが、受け入れたくない方法なので無視することにしました。私は誰に何と言われようとも、ファールラインぎりぎりのところからレーンを長く使ってボールを押し出して投球し、フッキングポイントをピン手前に持ってくる方法をやりたいのです。ボールのスピードは男子に比べて遅いのですが、フィンガーが強いので回転数はかなりあります。よってオイルの切れ目で立ち上がる強いボールを投げることができるのです。ただし手前を走らせるか、どこのラインを使うのかを読み切れずに苦労することが多いので、様々なオイルパターンでのアジャストを早く見極める技量が必要だと感じています。
K君は私と話したあとひとりで車に戻り、ずっと悩んでいたようです。良いことです。