田舎の父の元に帰る為、4時25分の高速バスに乗った。
淡路島に入ったころには、太陽が沈みかけ、西の空は夕焼けのオレンジ色に染まっていた。
その夕焼けに向かって、バスは走って行く。
薄っすらと暗くなり始めた海は、穏やかで小さな波が、わずかな光を集めて光って見えた。
山の紅葉は、まだ見頃までには少し日が掛りそうだ。
6時になると、すっかり暗くなり、
真っ暗なトンネルの中を走っているのかと、錯覚してしまう。
外は、随分冷えて来ているようで、バスの薄い車体を通し、冷たさが伝わってくる。
2時間半のバス移動。
7時に父の家に着いた時には、父は夕食を終え、片づけをしていた。
すぐに、お風呂の準備をして、9時には床に就いた。
もう何回も往復して、バスの移動は慣れたはずだが、疲れた~~~!
先月、父の家に帰った時には、まだ蕾を付け始めたばかりだった菊も、満開になり
家の軒下に並べられていた。
台風が接近するたびに、強風を避け鉢を運び避難さえた大輪の3本建ての鉢は、玄関先に並べてあったが、
今年は去年より出来が良くなさそうだ。
やっぱり何度も移動させたのが良くなかったのだろうか?
一生懸命だった父の落胆を想うと、胸が痛む。
父に聞くと、出来の良いのは、菊愛好家の発表会に展示してあるのだと言う。
良かった!
ここで留守番していのは、出来の悪い子たちだったのだ。
父が、展示されている菊の写真が有ると出してきた。
めったに自慢する事のない父が、誇らしげな笑顔を見せた。
窓越しに秋の優しい日差しが差し込む。
来年も、再来年も、同じような優しい日差しの中で、父の笑顔が見たいと願う