我が家に帰る前日の朝、
朝刊の中に“手作り市”のチラシを見つけた。
こんな田舎の町で、手作り市が開催されるのは珍しい!と思い、チラシを手に取った。
場所は、隣の町にある市役所の隣、
阿波農村環境改善センターとなっている。
田舎では、自転車で行動できる2キロ以内が、私の行動範囲で、
2キロ以上は出掛ける事は無かった。
「ここ、自転車で行ける?」
父に聞いてみた。
「行けんことは無いが、遠いゾ!」との返事。
あぁ~~車さえあれば、すぐに行けるのに~~!
「見に行きたい!」と、「遠いゾ!」の二つの思いが、頭の中で押し相撲を始める。
やっぱり見に行こう!
父に描いてもらった地図と、スマホの地図を頼りに、知らない道を出掛けて行った。
幸い秋晴れのいい天気!
初めての道を走る不安を、少しは和らげてくれる。
田舎は目印になる建物が無いので、スマホの青い経路を辿りながら、
自転車で6キロ 45分掛けて到着した。
建物の入り口には、「木工市」の赤い旗が立っている。
会場に入ると、藍染め、着物のリメイク、木工、アクセサリー、陶芸、竹細工、ツル籠など
50人の作家さんの作品2,500点が展示販売されていた。
私は藍染めのチュニックやTシャツが気になり、見ていたら、作家さんが来られ説明してくれた。
気に入った作品を見ると、私は、その作品を作った作家さんに興味が湧く。
藍染めの、青と白のはっきりしたコントラストのデザインも、
自分で縫製される洋服のユニークなデザインも、
センスの良さと、技術の確かさが窺え知れる。
その作家さんは、やっぱり、ハツラツと元気な人だった。
話が弾み、「私も染をしている」と、柿渋バックの写真を見てもらうと、
「一緒に展示会をやりませんか?」と、誘っていただいた。
思いがけない展開!
出会いは、いつ、どこで有るか解らないものだ!
「私の方こそ、是非ご一緒にさせてください」
お互いの名刺を交換した。
6キロの道の先には、思いがけない素晴らしい出会いが有った。
この出会いが、6キロ先の遠い夢で終わらず、
6キロ先の近い正夢であってほしい!
帰り道の自転車は重かったが、心は反対に軽かった。
行く時に冷たく感じた秋風も、火照った頬には心地良かった。