いつかは「本物」の玉子焼きを

 文豪内田百の家にいた猫のノラが一番好きであったのが、握り寿司の玉子焼きであったという。これは、内田百の「ノラや」という随筆に述べられているのだが、うちの猫なんかを見ていると、玉子焼きよりも断然刺身のネタに飛びつきそうである。怪訝に思って読み進めていくと、鮨屋の玉子焼きは、普通に家で作るのと違って、河岸から仕入れてくる魚のエキスのような物の汁が入っているそうである。きっと、猫が舌鼓を打つような味なのだろう。まだ読んだことはないけれど、内田百は「御馳走帖」なんていう随筆まで書いているくらいだから、百が言ういつもの鮨屋というのは、それ相応の店なのだろう。
 この「ノラや」を読んで、そんなにおいしいものなのかと鮨屋で玉子焼きを食べてみたのだけれど、残念ながら私の「それ相応」は回る鮨屋であるから、たいしてうまいものとは思えなかった。いつかはノラが食べていた、お魚エキス入りの玉子焼きを食べてみたいものである。
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眠れない熊たち

 動物園に行くと、年老いたツキノワグマが、ちょうどクマのからだがすっぽり入るくらいの、落ち葉が敷かれた丸いベッドで眠っていた。時々ふるえるようにしながらじっと眠っているので、いっしゅん冬眠なのかしらと思ったが、少し前に、上野動物園で国内では初めてとなるクマの冬眠が試みられているというニュースを聞いたから、この京都の動物園のクマはただ眠っているだけなのだろう。
 えさをとることが難しい冬の山でクマたちは冬眠するのだから、毎食きっちり与えられる動物園のクマは冬眠する必要がないにちがいない。
 だがこの冬は、野山に住むクマも眠れずにいるらしい。例年では真冬にクマの姿を見ることのない地域で、クマの目撃情報が相次いでいるという。専門家のあいだでは、暖冬のため冬でもえさが豊富にあるから冬眠する必要がないのだという意見と、反対にえさが不足していて冬眠できるだけの栄養を蓄えることができなかったのだという意見に分かれているらしい。
 理由はどうであれ、山の住み家をはなれて人の前に姿を現し捕獲されたクマは、その9割が殺処分されている。殺すという方法が一番低コストなのだろうけど、世の中には無駄金があふれている。動物たちの命を救うために使うお金がもう少しあったっていいと思う。


暖冬余波?冬眠できず親と離れ…民家の床下に子グマ(読売新聞) - goo ニュース
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