みゆちゃんの首輪

 みゆちゃんの首輪がなくなった。みゆちゃんがもし外に出て迷子になった場合に備えて、電話番号を書いてつけていたものである。鈴のついた、赤い格子柄の首輪で、よく似合っていた。
 庭で遊んだあと、二階へ上がって戻ってきたら、なかった。
 猫本来の姿には、当然首輪などついていないけれど、長い間見慣れていた首輪が突然なくなると、人でいえば服を着ていないような、なんだか落ち着かない気分になる。
 首輪は少し引っ張ると外れるタイプのものだったので、おそらく何かに引っ掛けでもして外れたのだろう。庭か、あるいは、二階でみゆちゃんが入れるのは物置として使っている部屋だけなので、そのどちらかに落ちているはずである。
 先に庭を探した。赤い首輪だから、閑散とした狭い庭に落ちていればすぐに見つかるはずだけれど、見当たらなかった。
 だとすれば、物置部屋である。こちらはいろいろな物で氾濫しているから、探すとなると、相当覚悟がいる。ざっと見渡した限りでは、見当たらない。
 夫が新しい首輪を買おうと言った。しかし、探せば家の中にあるはずだから、数百円のことだけれど、もったいない。これを機に、物置部屋を整理するから、と言い張った。
 が、そのままである。首輪のないみゆちゃんの姿にも、もう見慣れてしまった。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )