わんにゃんとドライブ

 子供の頃に飼っていた犬は、車によく酔った。車に乗せると、息がはあはあと荒くなり、よだれがだらだら流れ出る。かわいそうなので、極力、車には乗せないようにするのだけれど、家族でレジャーに出かけるときなど、やむを得ない場合には、タオルをたくさん積み込んで、なるべく揺れないよう、誰かがしっかりと抱きかかえて行く。繊細な神経の犬だったから、車が動く前から、乗っただけでもう反射的に息が苦しくなっている。車で行くときにはいつも大変だったので、よその犬が、助手席の窓から涼しげな顔をしてドライブを楽しんでいるのを見ると、いつもうらやましく思った。
 もっとも、最初から車酔いする犬だったのではない。子犬の頃は、譲ってもらったブリーダーの人が慣らしていたためか、車が平気だった。車酔いをするようになった責任は、実は私たちにある。子犬が家に来て間もない頃、母に音楽教室へ車で送っていってもらうときに、うれしくて子犬も一緒に乗せていった。ところが、教室で私と弟が降りて行ったあとには、子犬を支える人間は誰もいない。母の運転で帰るまでのあいだ、かわいそうに、子犬は車内でこっちへふらふら、あっちへふらふらしていたらしい。それ以来の車嫌いなのである。
 これに対して猫たちはどうかというと、一度、車内でネロをケージから出したところ、ブレーキペダルの下にもぐりこんでしまい、乗っている者はみな怖い思いをした。それ以降、猫はケージから出さないことにしている。
 みゆちゃんが車を好きになってくれて、一緒にドライブできたらどんなにか楽しいかと思うけれど、ケージのまま座席に置くと、いつもより低い唸り声で「降ろせ~、降ろせ~」と鳴き続けるのが現状なので、夢のまた夢、といったところである。
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