昔昔のPCゲーム

 小学校の頃、父が初めて仕事用に買ったパソコンの中に、宇宙船のゲームが入っていた。もうゲームの名前は忘れてしまったけれど、自分が操縦席に座っているような画面構成になっていて、前方に現れる隕石を避けたり、敵機を撃ち落したりしながら進んで行って、どこかの惑星に着陸し、燃料を補給するという、ただそれだけのゲームだった。出てくる隕石や敵機もただ色のついた線描で、着陸する惑星にいたっては網掛けの円であった。
 でも、熱中した。パソコンを使っていいと父から許された、限られた時間いっぱい、弟と二人、パソコンの前に椅子を並べて、宇宙船を操作した。線描きの隕石が頭上をかすめるように飛んでいくと、二人して首を引っ込めたものである。今の超リアルなテレビゲームに比べると、面白くもなんともない原始的なゲームだけれど、その頃の私たちには、3次元的な画面が珍しく、とてもリアルに感じられた。暗闇の中で次々と後方に流れていく宇宙の星たちもきれいだった。
 四半世紀ほど前には、旅館のロビーや、大浴場の前のホールに、卓上型のインベーダーゲームみたいなものがよく置いてあった。
 弟が小さいとき、旅館のテレビゲームがどうしてもやりたくて、父にお願いし、ゲーム代の五十円玉をもらった。わくわくしながらエレベーターのゲームをスタートさせたが、ゲームになれていなかった弟は、すぐにゲームオーバーとなり、一生懸命お願いした五十円玉は、数秒で消えてしまった。無関心な父は、もういいのか、と弟に言った。幼い弟が味わった悔しさ、虚しさの程は、想像に難くない。
 その後十年ほど経って、弟はレトロなゲームばかりを集めた家庭用ゲーム機のソフトの中に、そのエレベーターゲームが入っていることを見つけ、再挑戦し、全面クリアしたらしい。
(トラックバック練習板)
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