柿とメジロと三毛猫と

 冷蔵庫の中にしまったままになっていた柿がすっかり熟してしまって、柿の苦手な私はもとより、柿の柔らかいのが嫌いな夫も食べないので、庭に来るメジロにやることにした。
 いつもメジロが花の蜜を吸いに来る山茶花の木のとなりの百日紅の、冬枯れした枝に半分に切った柿を刺して、まだかまだかとメジロの来るのを待ったけれど、なかなか柿に気がつかないのか、メジロが来ぬままとうとうその日は暮れてしまった。
 次の日の朝起きて台所に下りると、ぴちぴちと可愛いさえずりが聞こえて、庭に薄緑色のメジロの姿があった。いつものとおりつがいで来て、かわるがわる柿の実をつついている。わずかな量の花の蜜を、花から花へとせわしなく飛び回って飲むよりも、一所にとどまって好きなだけ食べられる柿の方が、ずっと食べやすいにちがいない。味を占めて、メジロは何度も何度もやってきた。きょろきょろしながら柿の実をつついて、それが終わると、近くの枝に飛び移り、くちばしの両側を百日紅の枝にこすりつけて拭いている。その様子がとても可愛くて、いくら見ていても見飽きない。
 みゆちゃんはというと、同じようにメジロを見つめている。時々、猫が鳥や虫に呼びかけるように鳴く鳴き方で、ひげを震わせ、にゃ、にゃにゃ、と鳴いている。そんなふうに鳴いてしまったら、相手に自分の居所がばれてしまうのではないのかと思う。なぜ、呼びかけるように鳴くのか不思議である。メジロには手の届かないのを知っているのか、あるいは、みながメジロを可愛い可愛いと言うのでやきもちを妬いているのか、みゆちゃんの後姿は、なんとなく面白くなさそうである。

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