蝋梅

 蝋梅の花を見に、植物園へ行った。蝋梅という名の由来は、花の見た目が蝋細工に似ているからだとか、陰暦の12月を意味する蝋月に、梅に似た花を咲かすからだとか言われている。
 比較的過ごしやすい日だという予報であったが、それでも10度は上回らず、どんよりとした冬の空で、植物園に人はまばらであった。
 北門の券売所で職員の人に蝋梅の木の場所を尋ねたら、さあ、もう見頃は過ぎたかもしれないということだったけれど、梅林にあると聞いて、そちらへ向った。
 寒々しく吹き上がる噴水の横を折れて、前日の雨でまだしっとりと濡れているような針葉樹が、高く空をさえぎる並木道を進むと、右手に梅林が見えてくる。梅の木は枝に丸いつぼみをつけながらも、未だ開花の時期を待って、じっと静かにたたずんでいた。その粛々とした梅林の中央あたりに、唯一、黄色い花をいっぱいにつけた蝋梅の木が、薄明かりのようにぼんやりと見えた。同時に、微風が、黄色い香りを運んできた。
 静かな梅林に入って、蝋梅の木のそばまで行くと、一段と強く匂った。果たして見頃がもう過ぎているのかどうか私には判然としないけれど、十分にきれいであった。名前の通り、蝋細工のように透き通った黄色い花びらが、雨の滴をまとって、冬の空に凛と光っていた。

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