ルノワール+ルノワール展

 京都国立近代美術館へ、「ルノワール+ルノワール展」を見に行った。
 印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワールとその次男でフランスを代表する映画監督ジャン・ルノワールを取り上げた企画展で、2005年にパリで開かれて大反響があった展覧会とあってか、また最終日の前日とあってか、かなりの人出があった。
 人の流れに押されるように階段を登って三階の会場まで登ると、当然そこも人だらけで、立ち並ぶ人々の頭の向こうに、ルノワールの絵が見えた。
 日本画の作品は、ときどき展覧会に行ったりして見る機会が多いから、どの画家がどんな画風であるかということが最近になってようやく少しずつわかりかけてきたが、洋画はというと、実はよく知らない。ルノワールが有名な人なのは知っていたけれど、どんな絵を描く人なのかは知らなかった。
 人込みの向こうに明るく浮き上がった女性の肖像画を見てまず思ったことは、目がきれいだということだ。絵の全体は優しい色合いで、くっきりとした線などないのに、こっちを見る黒い目は、澄んでいて力があった。
 はじめにそう思ったものだから、顔のあたりにばかり注意がいってしまったのだが、ルノワールが描く多くの人物画は、どれも表情が豊かで魅力的である。
 机の上で何かの作業をする男の一生懸命な顔。膝に乗せた幼子と一緒に、テーブルの上の食べ物を手に取る女性(はじめは母子の絵かと思ったのだけれど、説明を見たら、幼いジャンと、乳母を務めたルノワールの妻の従姉妹であるらしかった)。
 展覧会のポスターにもなっていて、傑作と名高い「田舎のダンス」という絵についても、女性の喜びいっぱい幸せいっぱいの笑顔がいきいきと描かれている(ちなみに、この女性が後のルノワールの妻であるらしい)。
 ルノワールの絵のあいだあいだには、その絵を彷彿とさせる息子ジャン・ルノワールの映画の一場面が、白い壁に映し出されている。
 躍動感溢れる映画の中で踊る女性の表情が、「田舎のダンス」の幸せそうな女性の顔とそっくりであった。

(イラストは本文と関係ありません…)
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