ある芝居の客席で、
なつかしい人に会いました。
昔、客演したミュージカル劇団の方で、
お母さんのように慕って、
本当にお世話になった役者さん。
何年かに1度、
メールのやり取りをする程度で、
まさに「疎遠」の状態であるのに、
それでも、いつも、
心のどこかしらで気になっていた存在。
そんな方に、なんと、
客席でばったり会ったのです!
人間の気持ちって不思議なものですね。
あちらもやっぱり、
「望子さんのことが、いつも気になっててね」
・・・と。
もう、そうなったら、
一気にタイムスリップ!
2人して大興奮で喋ること喋ること!
開演前、休憩時間、終演後。
もう本当に喋り倒しました。
一緒に旅公演に行った思い出話や、
その時の舞台のことや、何やかや。
「旅に行ったとき、
〇〇さん、64歳っておっしゃってましたよね」
「今ね、80歳」
「えーーーーっ。絶対に見えない!
っていうか、もう16年も前なんですね~」
「びっくりよね~。
もう、あっという間」
本当に、あっという間・・・。
・・・ではあるものの、
その間に、彼女はご主人を亡くし、
劇団も主宰が亡くなって、解散。
16年は間違いなく過ぎているんですね。
そして、思い出話が一段落すると、
次はどうしても、当時の人たちの消息の話に・・・。
「そういえば、Oさん、知ってる?」
「ああ、一緒の舞台には立ってませんが、
お顔はよーく知っています」
「こないだ、亡くなったのよ」
「えーーーっ」
「Oさんは1人暮らしだったから、
だんだん動けなくなっちゃったら、
もう食べるものも作れないでしょ。
私、家が近いから、食事運んだりしてたんだけど、
そのうち、急に入院して・・・」
Oさんはベテラン劇団員で、
どちらかというと、脇を固めるタイプ。
でも、なんか、無性に面白かった。
「Dさんは?
私、Dさんとは、10年くらい前に、
ある劇団さんでお目にかかってるんですよ。
ストレートプレイで珍しいなと思ってたんですけど」
Dさんというのは、劇団トップのシンガーで、
大きな体から出る、深い声が本当に素敵で、
彼のソロのシーンになると、
いつも舞台ソデでうっとり聴いていました。
「Dさんはね~。
今、タクシーの運転手やってるのよ」
「歌・・・は?」
「なかなかねぇ。
もう舞台からも遠ざかっちゃったから。
Dさんの歌、よかったけどねぇ」
あ~、そうだよね~。
大きな劇団だったから、舞台だけで食べられた。
でも、そこがなくなったら、
別に食べる道を探さなきゃいけないんだから。
ほかにも、いろいろな人の話を聞きました。
小劇場の役者のように、
バイトしながら、今も舞台に立っている人。
解散した劇団を、少人数でもう一度、
立ち上げようと頑張っている人。
(あの頃、撮った写真、どこかにあるかな?)
彼女と別れて、ふと、そんなことを思いました。
使い捨てカメラで、ワイワイやりながら撮った写真。
私にとっては、今も16年前で止まったままの、あの人たち。
ま、見つからないだろうな~。
見つかったところで、感傷に浸るだけだしな~。
こんなとき、お酒が飲めたら、
ひとり、グラスを傾けて、サマになるんだけどな。
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