<つれづれに、あとちょっと・8>
――これが本当に最後です――
千秋楽が終了してすぐ、
まずはお礼を言わねばと、
私は渡辺さんのところに走りました。
だいたい千秋楽が終わったばかりというのは、
ほっとしながらも興奮してて、寂しさもあり、
けっこうみんなハイになっています。
でも私はいつも、騒ぐ若手たちをあたたかく見守りながら、
せっせとバラシにかかるオバサン、というスタンスでした。
な、の、にーーーーー!!
何を間違えたか、
私が超興奮状態に陥ってしまった!
2年ぶりの舞台で、
たくさんカルチャーショックを受けて、
はたまた、かなりの過労状態だったからか、
まさに「超」がつくほどの興奮状態で、
そんな湯気が出そうな状態のまま、
渡辺さんに心から、お礼を伝えました。
「べーさんっ!本当に本当にお世話になりましたっ!
べーさんにいつも引っ張り上げてもらって、
私はそれに乗っかるばっかりで」
と身振り手振りを交えながら喋り倒し、
あちらが何か喋っているのも聞かず、
「いや本当にありがとうございました。
もうどれだけ、べーさんにご迷惑かけたかと思うと、
でも嫌な顔もせずに付き合って下さって、
なんたらかなんたら」
と、また山ほどの感謝を一気に喋ったところで、
渡辺さんが、ひと言。
「お茶・・・こぼれてます」
「へ?」
はっと我に返ると、
手には、いつも飲んでいるほうじ茶のカップが。
それもなぜか蓋を開けたまま。
私はそれを持ちながら、
派手に振り回して、喋り続けてた・・・。
床には、ほうじ茶の水たまりが・・・。
慌ててそこら辺のティッシュペーパーで拭いてたら、
渡辺さんも手伝って拭いてくれて。
もうーーーーーーっ、
なんで最後までこれなのよーーーーっ!
結局まともにお礼も言えず、
こぼれたお茶を拭いてもらって、
謝っておしまい。
あ~あ。
舞台の上では、
馬鹿をやるお父ちゃんを、
大きな愛情で包み込むようなお母ちゃんだったけど、
舞台を降りれば正反対。
寡黙で冷静なお父ちゃんに、
迷惑をかけ散らかすお母ちゃんでありました。
しかし、最後ぐらい落ち着いて、
きちんとお礼を言いたかった・・・。
(おわり)
長々とお付き合い下さり、ありがとうございました!
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