さかざきが綴る「アンティークな日々」

アンティークディーラーさかざきがアンティークのこと、日常のことを綴っています。

買付け雑記

2020-10-10 | 

***長いですが、お読みいただけましたら幸いです。***

 買付けから帰国して十日以上が経ちました。(が、まだもう少しおこもり期間は続きます。)今回はいつにも増して印象に残る買付けでした。ヨーロッパの国境が開いたのは7月でしたが、仕入れ先やアンティークフェアが実際に始まったのは8月から。8月は既に仕事が入っておりましたので、帰国後二週間の隔離時期を取ることが出来る9月を待っての買付けとなりました。

 今回は、途中で現地の状況が悪くなって、便の変更や欠航があったとしてもスムーズにコミュニケーションが取れるよう(時差のある私ではなく、河村も対応出来るよう)、いつも使っているエールフランスや大韓航空などスカイチームではなく、日系のANAで。また、今回はフランスの状況が思わしくなく、イギリスはフランスからの入国を制限していたため(現在、フランスからイギリスに渡ると強制的に一週間の厳しい隔離となります。)、イギリスへはフランスを経由することが出来ずエールフランスは不可。フランスから途中イギリスに往復することもままなりませんでした。なので、今回はイギリスから入国。

 ですが、その直前、まず事件が!いつにもなく超憂鬱な気持ちで、何があっても良いように早めに羽田空港に向かい、さっさとセキュリティーチェックを抜け、搭乗ゲートに着いたのが定刻の2時間近く前。ほっとしたのか強烈に眠くなり、そのまま眠りそうになっていたところ、はたと気付き思い切り目が覚めました!セキュリティーチェックを抜ける前に予約しておいたwifiのモデムを受け取るのをすっかり忘れていたのです。今回は常時インターネットは絶対必要!慌てて出国審査に飛んでいき、係官の方に訴えると…「ここから向こうには戻れませんので、ANAの方に取りに行って貰いましょう。」とのこと。ANAの地上係員の女性を呼んで貰い、モデム会社のカウンターまで取りに行っていただきました。(ANAの地上係員さん、お綺麗な方でした。その節は本当に世話になりました。)

 途中、いつものようにユーロスターでロンドン-パリ間の移動をしようとしたところ、予約時になんと1日3便しかないことが分かり、しかも最終は昼の12時過ぎ。それに乗らなければ、その日のうちにパリに到着することは出来ません。結局、ウン十年か振りにドーバー海峡をフライトで渡ることになりました。また、今回、イギリスに入国するには事前にインターネットからの登録必要でしたが(どちらにしても日本のパスポートは自動化ゲートを通ることが出来ますし)、それ以外はほとんどいつも通りでした。

 イギリスに到着するとまたまた事件が!「これは絶対忘れてはいけない物!」と、いつも使っているジュエリー用のルーペ2個(10倍と20倍)を確かにバッグのポケットに入れたはずなのに、どこにもないのです!それぞれのジュエラーに借りても良いのですが、このふたつがないとジュエリーその他の買付けは不可。仕事になりません。スーツケース2個をひっくり返してもどこにもない!結局、買付け第一日目の朝イチにロンドンの御徒町的な街(ジュエリー用品の問屋街)まで走って行って、ルーペ2個を買う羽目に。(帰国後、ルーペ2個はいつも使っているバッグのポケットから出てきました。勘違いしてそちらに入れてしまったみたいです。)この2件の失敗で、憂鬱な気持ちも吹っ飛びました。

 イギリスのディーラー達はちょっと元気がない感じ。今回、事前に連絡をし、わざわざ3時間以上の道のりを運転して、私のホテルまで来てくれたディーラーは「もう半年以上、アンティークフェアはないし、本当に大変!」と言っていましたし、同様にいつもとの同じ場所やフェアで会えないディーラーとはプライベートでアポイントメントを入れ、パブの片隅で商談することも。  
 ロンドンから一日かけて日帰りで行った田舎のお気に入りのフェアは、一番のメインストールがコロナ対策のためクローズとなっていましたが、それでも他のストールに皆お引越しをして、なんとか普段と同じメンバーが揃っていました。(こちらのフェア、当然ともいうべき訪れていた日本人ディーラー私一人きりでした。)そのようなこともありつつ、コロナ禍でコレクションを手放したコレクターの話も度々耳にし、結果的にはイギリスで良い買付けが出来たと思います。

 今回、一番心配していたのはフランスの状況が非常に悪かったため(現在もその状況は変わっていませんが…)、「イギリスだけで帰国しなければならなくなるかも。」ということ。フランスが再びロックダウンしたら、当然仕入れ先もアンティークフェアもロックダウンする訳で、イギリスからフランスへ入国することすらままならなくなり、パリからの帰国便をロンドンからに変更して日本に帰国しなくてはならないと考えていたからです。ですが、フランス政府は「経済優先」に舵を切り、ロックダウンはもちろん、特に制限することなく、フランスに渡ることが出来ました。ヒースロー空港のエールフランスカウンターで、「日本人?フランスのレジデンス(居留資格)は持っているのか?レジデンスカードは?」と言われた時には、一瞬ドッキリしましたが、「大丈夫!在日本フランス大使館で聞きました!日本人はフリーです!」と慌てて答え、事なきを得ました。(本当に事前に在日フランス大使館に聞いていたのです。ただし、答えは「日本からはフリーだけど、イギリスからはこちらでは分らないので、在英フランス大使館に聞け!」というものでしたが…。)無事、飛行機に乗れたものの、ユーロスターですと3時間ほどのところ、ロンドンのホテルを出て、パリのホテルに着くまでなんと7時間!!むか~しむかし、初めて一人でヨーロッパをひとりで周遊した時に(その頃はまだユーロスターはありませんでした。)、カレーと紅茶の匂いのするパキスタン航空でドーバーを渡ったことが思い出されました。

 そして、到着したフランスのいつものホテルでは、レセプションのお馴染みのムッシュウのお陰で、いつものお気に入りの部屋をあてがって貰いひと安心。(「あの後、どうしてたの~!?」と感動の再会でした。)また、毎回キィをアルコールで消毒し、手渡しではなくバスケットに入れて渡してくれる気遣いに「あのフランス人が!」と感動。同じく誰もがマスクをしている様子にもびっくりしました。(パリ市内はマスク装着が義務づけられていて、していないと135ユーロの罰金なのだそうです。)

 久しぶりに会ったフランスのディーラー達は皆いつも通りな感じ。夏はバカンスにも行き、普段とさほど違わない生活を送っていたのかも。(だから南フランスを中心にウィルスが蔓延したともいえるのですが。)また、今回のフランス買付けの目的の一つでもあったアンティークフェアに行ってびっくり!私がこんなにも勇気を振り絞って買付けに来たというのに、日本人ディーラー大集結!という感じだったので。それでも、思わぬ出会いもあり、私的には満足な仕入れでした。

 そして、帰国当日最後のドッキリが!今回、万全を期してANAにしたものの、現在パリ便は週に2便しかなく、ルフトハンザでパリからフランクフルトへ飛び、そこからANAで帰国するという経由便になってしまいました。長年ヨーロッパを往復していますが、フランクフルト経由は初めて。しかも、ヨーロッパで会う日本人ディーラー皆に、「あそこの乗り継ぎはとても大変!」「乗り継ぎに時間がかかる!」「空港内を走らないと間に合わない!」と言われ、疑心暗鬼に。早めに空港行こうと、前日にホテルのレセプションから翌朝7時のタクシーを予約して貰い万全の体制に。というのに、その翌朝、さっさとチェックアウトを済ませるも、待てど暮らせどタクシーが来ない…。レセプションのムッシュウが何度も催促の電話をしてくれ、やっと来たのは7時20分過ぎ。(いつもは10分前に来るので、約30分の遅刻です。)レセプションのムッシュウが、ドライバーを「彼女は日本人だけど、これがアメリカ人だったら、訴訟もんだぞ!」と私の代わりに怒ってくれ(こんな時だけフランス語がよく分ったりします。)、私にはにこやかに“Bon voyage!”とお別れ。日曜日の早朝だったこともあり、普段は約1時間かかるシャルル・ド・ゴールまで30分で到着してしまい、何の問題なくルフトハンザにチェックイン。定刻通りでした。そして、皆に脅されたフランクフルトの乗り換えも、確かに長い長い動く歩道を歩きましたが、コロナ禍で空港が空いていることもあり、搭乗の30分前にゲートに到着しました。今回ほどANA機の日の丸を嬉しく感じたことはありません。その後は行きと同じく3シートキープで帰ってきました。

 今回は羽田空港のPCR検査が必須。システマチックでしたが、1時間半ほどかかったでしょうか、無事陰性で帰国しました。こんなに帰国出来てほっとしたのは初めてかもしれません。

■新入荷フェア
10月16日(金)~25日(日)
※10月20日火曜日はアポイントメントオンリー、21日水曜日は定休日です。
11:00AM~7:00PM
エンジェルコレクション
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル208号
tel 03-6228-6230
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★お店は平常通り営業しています。(エンジェルコレクションは小さなお店です。混雑を避けるべく入店をお待ちいただくことがございます。あらかじめご了承下さいませ。)

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