これでは終われない! そんな気持ちで「あけぼの」を追う。追うと言っても「何を今さら・・」って気持ちもどこかにあって、安全第一な行動は言うまでもない。ただ、同行している友人が、今回、パーイチあけぼのは、初めて撮影するということもあり、先ほどのカットだけでは愛知には返せないという思いが先にあった。案の定、北に行けば行くほど、雲が切れ明るくなり、時に日も指すようになってきて期待が持てる。何とか「あけぼの」より先行できることが確実になった時、さてどこで有終の美を飾ろうか悩むことになる。ハンドルを握りながら、色々なシーンを想像するが、晴れることを信じて富根の直線でやることに決定した。
実はこの富根の直線。昨年秋、これまた30年来の畏友が撮影した素晴らしい写真を拝見させて頂いた時の印象が、未だ心に強烈に残っている場所。それは、黄金に輝く絨毯の中を颯爽に青森を目指す「あけぼの」の姿であった。これ以上考えられない条件下でのその写真は、アントンKの考えるところの実り多き東北のブルトレ「あけぼの」の全てがそこにあった。またもう一つ、彼は自分の芸風ではないと謙遜していたが、得意とする超望遠写真ではなく、この丘に立つことを選択し、勝負し完璧なまでに勝利していることにただただ感服してしまったのだ。もっとも、ここでは深く語らないが、鉄道写真の分野で、超望遠写真を撮らせれば、今や彼の右に出る者はいない。それは断言できるのだが、その彼が撮影したというところに大きく衝撃を受けた訳だ。
さてそんな想いも過る中、真っ白になった田畑を見下ろす丘に立ち「あけぼの」を待つ。太陽が顔を出し、空が青くなってきて、まさに有終の美を飾るに相応しいロケーションに変わってきた時、遠くの山影から、パーイチのビームが見えゆっくりと迫ってくるのが見えた。
写真の挙がりを見て、理想的とは言えない結果に終わってしまったが、通過していく「あけぼの」を見て、心底カッコいいなぁと思えたことに感謝。同行した友人も満足した様子で一安心であった。その後、二人で大館を目指したが、先ほど撮影したばかりの「あけぼの」が、我々の車と並走してくるのが見え、車越しながら、雪原に車体の影を落とし威風堂々走る姿にまたまた熱くなってしまった。まるで名残惜しむようにジョイント音を鳴らし、目の前を走り去っていく姿を僕等はずっと忘れないだろう。
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2014(H26)-03-02 2021レ EF81138 JR東日本/奥羽本線:富根-鶴形